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ACT11-(2)

「………………どうですか、芳樹さん?」
クルリ、と回った満月を見て芳樹はうん、と頷いた。

「良く似合っているよ、満月ちゃん。」
「ありがとうございます、芳樹さん。」

えへへ、と笑う満月の頭を芳樹はポンポン、と撫でた。

「芳樹、満月。お邪魔します。」
「ああ、姉さん。………智仁も来ていたのか。」
「招待状をよこしておいてその言い草はないだろう、義弟が。はっはっは。」
「満月ねーね、すっごい美人!」
「ドレス、似合っているよ!」

「ありがとう、幸仁様、幸子様。」

「コンサートが終わったら、顔馴染みの居酒屋で合流することになっているんだったな。」
「まぁ、皇室関係者が来ることを伝えているから、貸し切りにはしているんだけど。」
「お父様、お酒が入るとお母様に甘えるんだよねー。」
「ねー。」
「………国民にはとても見せられないわ…………。」
「あっはは、愛妻家と言ってくれ!」
「………愛妻家って言うより、母猫に甘える子猫みたいな感じなんですけど………。」

「………うん、それは俺もそう思った。」
「僕は猫か、うははは!」

「…………さて、そろそろ開場になりますので、お席に移動しましょう。」
白山の言葉に綾子はそうですね、と呟いた。

「では2人とも、また後程。」
「はーい。」
「じゃあね、芳樹にーに、満月ねーね。」

「はい、また後で。」



続く。

ACT3-(5)

「んじゃあ、お姫様。採血するんでプスッと刺しますね。」
「はぁい。」

「………採血?」
「お姫様には多少、G細胞が混ざっているんですよ。
モスラの力で安定しているとはいえ、いつ何処で暴走するかわかりませんからね。
リアタイで薬の処方を変えているんです。」

「G細胞?」
「ゴジラ細胞のことよ。遺伝子の宝庫とも呼ばれているわ。
正しく使えば、再生医療を飛躍的に上昇させることができるの。
………でもゴジラ以外、G細胞を完全にコントロールするのは難しいのよ。」
「………そんな物騒なものが深愛の中にあるの?」

「怪我を負っても、毎回病院に行くことのないようにってことで受精卵に組み込まれたのよね。
まあ、G細胞と言っても、ホントに微量だから。
私で成功するまでに何千回、何万回も繰り返し実験したそうよ。」

「うわぁ……………頭が痛くなりそう。」

蒼氷に採血され、深愛は涼子に話をした。澪はげんなりとした様子で彼女の話を聞いている。

「さて、と。G細胞が暴走したことはないんですよね?」
「まぁね。おかげ様で。」
「こればかりは定期的に診ておかないと、何がきっかけでスイッチが入るか
わかりませんからね。
くれぐれもバトラになることだけはやめてくださいよ。」
「バトラにはならないよ、何が何でも。」
「………バトラ?」


「バトルモスラの略だよ。
守護を目的としているモスラと対を成す黒いモスラで攻撃を目的としているの。
攻撃力が高いんだけど、耐久性がイマイチで防御力が低下しているからね。
おまけにコントロールがなかなか効かないし………。」
「そうなの?」
「うん。モスラは防御力とか高いし、技の種類も汎用性がある。
だから、戦う時はモスラを主流としているんだけど…………。」


「バトラは絶対ダメ、何があっても!」
「私も反対だわ。バトラにだけは変身しないで!」

「う、うん………もちろんだよ……………そんな切羽詰まった顔で言わなくても………。」

「言うわよ、そりゃ!」
「攻撃力高い割に防御力が低下しているんだったら、一撃で倒れるじゃない!
そりゃ、バトラに変身したらダメって言うのは当たり前よ!?」


「良かったですね、お姫様、なかなか愉快なお友達ができて。」



続く。

ACT11-(1)

桜庭市営文化ホール。
そこには芳樹と満月のコンサートを鑑賞しにきた観客達で賑わっていた。

「随分と多いですねぇ。」
「これは当日券もあっという間に完売するなぁ。」

2階の窓から有料駐車場を見ていた物吉貞宗は三日月宗近と話をしていた。
守り刀の中でも古株に当たる三日月宗近は三条派を束ねるリーダー格だった。

「さて、ホールの警備はどうなっている?」
「今のところ、不備はありませんよ。粟田口の包囲網は完璧ですから。」

「そうだなぁ。一期一振は満月お嬢様に贈られた守り刀だからな。
粟田口は満月お嬢様のためにあると言っても過言はないだろう。」
「そうですね。」

廊下を歩きながら、物吉は三日月と話をする。
とそこへ、智仁と綾子が鬼丸と白山に連れられてやってきた。
「やぁやぁ、三日月に物吉!ご機嫌いかがな?」
「智仁様、綾子様。ご機嫌麗しゅうございます。」
「物吉と三日月は相変わらずのようですね。」
「はい、おかげ様で。」

幸仁と幸子が、物吉と三日月を見て、あ、と呟いた。

「物吉、三日月、こんにちは。」
「こんにちはー。」

「うむ、こんにちは。良い挨拶だな。」
「挨拶は最初が肝心てお母様が言っているもん。」
「ねー。」

「2人とも、持ち場を離れて大丈夫なのかい?」
「大丈夫ですよ。和泉守さんと堀川さんがついていますから。」
「そうか、ならよかった。」
「満月を狙う男達はあいも変わらずいますからね。」
「………そうですねぇ。」
「この間のファッションショーでも、リップサービスをしたというのに
なかなか減らないそうじゃないか。
まったく、満月ちゃんもモテるな。
姫宮は男しか生まれないから、殿宮に改姓した方が良いとか言っておきながら
満月ちゃんが生まれた途端、掌返しをするのはどうかと思う。」
「それは確かにそうですねえ。」
「姫宮をあらゆるものから守る代わりに女児が生まれたら、綿貫に嫁がせる約束をしていたものだからなぁ。」
「はは、行き過ぎた約束だが当人達には関係ないがな。」

「さて、と。重たい話はここまでにして満月達に会いに行きましょう。」
「満月ねーねと芳樹にーに、カッコいい衣裳と可愛い衣裳を着ているの?

「ええ、それはもちろんですよ。見てからのお楽しみです。」


続く。

ACT3-(4)

深愛達が訪れたのは、姫百合総合病院であった。
「ああっと、お姫様。こんにちは。」
「……………だから、そのお姫様って言うの、やめてくれない?」
「いやはや、これは癖だってことわかってくださいよ。」
「…………あ、紹介するね。蒼氷智久。これでも腕の立つ医師で、
カロリー抑制剤を開発した研究者なの。」
「初めまして、薬師寺涼子です。」
「有栖川澪です。」
「…………ああ、あの有栖川さんの娘さん?こんなところでお会いできるなんて奇遇ですね。
いやはや、御父上に関しては残念でしたね。」
「………まあ、自業自得だから仕方がないけど。」


「………ねぇ、あれって有栖川澪じゃない?」
「何かすごいイケメン医師と話しているんだけど、知り合い?」


ヒソヒソと話をする通院者に智久は眉をひそめた。

「んじゃまあ、いつもの薬を処方するんでこちらに。」
「はーい。」


智久に案内されて、深愛達が到着したのは精神科だった。

「………精神科?」
「……まあ、何ていうかね。怪獣に変身すると自分が自分でいられなくなるとかそういった類の考えが
たまに出てくるからさ。」
「………それはそうでしょ。普通の人間が怪獣に変身できるなんてそりゃないんだから。」
「まあ、こういう隠れ蓑がないとやっていけないんでね。
カロリー抑制剤もM計画に参加していた薬剤師が調合していますから。」
「はぁ………。」
「ちなみにお姫様、今月の出撃はそんなにないんですね?」
「今のところはね。」
「じゃあ、今回は1ヶ月分だしておきますんで。」
「わかった。」
「…………1か月分で足りるの?」
「出撃した回数に比例して、処方されるからね。何処で変身するかわからないし。」

「………面倒ね。深愛に任せきりにしないで、少しは武力を向上させたらいいのに。」
「法律が色々と五月蠅いですからね、限度ってものがありますし?」
「…………その限度をどうにかしようとして、法スレスレの違法研究をしたのがM計画でしょ。
国からの命令とはいえ、私、許していないんだからね。深愛は被害者だわ、間違いなく。」


「………わぁお、澪さん結構怒っていらっしゃいますね。」
「当然よ。成功例である被検体を生み出すためにどれぐらいの受精卵が無駄になったと思って?」
「…………知りたくなかった、そんな事実。」

「……まあ、今はそのほとんどが凍結されて何処かに保管されているって言うけど。」
「澪さん、将来の夢とかでもあるんですか?」
「当然、怪獣の遺伝子を人間の受精卵から切り離すことを夢にしているの。
せめて生まれてくる子供達が、普通の人間として過ごせるようにね。」
「じゃあ、深愛の遺伝子ももしかして切り離せるの?」
「それは無理だわ。ここまで育っていると、切り離すのは………。」
「………あー、やっぱり?」

「気持ちだけでもありがたく受け取っておくよ、澪。」


続く。

ACT10-(8)

ファッションショーの開始時刻になり、BGMが流れた。
耳をつんざくような音量の曲が流れるなか、ランウェイをモデル達が歩く。
スポットライトを浴びながら、綾人達は慣れた様子でポーズを決める。

ペンライトの光が、ウェーブのように広がり、歓声があがる。

トリを務める芳樹と満月がステージに立つと、歓声がより一層あがった。

「芳樹さーん!」
「満月ちゃん!!」

歓声があがるなか、芳樹と満月はランウェイを歩き、ポーズを決めた。
すかさず芳樹が満月の額にキスを落とすと、黄色い歓声があがった。

「よ、芳樹さん!?」
「はっはっは、リップサービス、リップサービス!」

顔を真っ赤にする満月をよそに芳樹は彼女の手を握ると、踵を返した。

ぷんすかと怒った満月であったが、満更でもなかったらしい。

スペシャルゲストとして、欅坂愛歌が呼ばれ、ライブを行い、
名物アナウンサーによるMCは無事に進行し、ショーは無事に閉幕した。


「………いやあ、芳樹。やるなあ。」
「まあ、あれぐらいはしないとね。俺と満月ちゃんの仲だからいいけど。」
「まったくもう………予定にないことしないでくださいよね、芳樹さん。」
「はっはっは。」

「………………。」
「…………ああ、満月ちゃん。拗ねないで!」
「………芳樹さんなんて知りません。」

「これは参ったな、お姫様の御機嫌取りは難しいぞ。」


「……………罰としてサーティワンのアイスが食べたいです、芳樹さん。」
「OK、それでお姫様の機嫌が直るのなら。」
「満月、食べすぎはほどほどにしておきなさい。
お腹を冷やしたらくだしますよ。」
「大丈夫ですよー、だ。お腹を下しても、この土日は学校がないからゆっくり休めます!」




続く。
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