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ACT15-(8)

「……………うっそ、マジでこういう演出だったの?」
加州清光の単騎出陣が終わり、春花は観客席でそう呟いた。
「…………………………。」
「…………あの、芳樹さん。生きていますか?芳樹さーん、もしもーし。」
春花の隣で芳樹は呆然としていた。
「………ああ、もう、ほら、控室行きますよ。」
「…………え、あ、うん、そだね……………。」
「成人男性をズルズル引きずるのは嫌ですからしゃっきりしてください。」


「……………いやでもまさか、ドン引きするなんて思ってもいなかったです。」
控室で加州清光の衣裳から私服に着替えた満月は芳樹にそう言った。
「でも束縛プレイがあるなんて、聞いてないよ?」
「そりゃ、言っていないもの。当然だよ。
芳樹さんに言えば演出変えろって言うだろうから。」
「そりゃ言うさ。でも、ここまでウケるとは思ってもいなかったけど………。」
「……………まあ、ですよね。」
「でも公演中、ずっとあの束縛プレイするんだぁ………。
綾人さん達もきっと、ペンライト落とすだろうねぇ。」
「あー、それはありえそう。」

ニコニコと笑う満月と春花をよそに芳樹はため息をついた。
そんな彼の背中を物吉はポンポン、と叩いた。

「まぁ、何ていうか仕方がないですよ。これもお嬢様の仕事ですから。」
「………………俺、清光と三日月の双騎出陣の脚本を書いてもらうようお願いしようかな………。」

「欲望丸出しの脚本でしたらお断りしますよ、芳樹さん。」
「満月ちゃん、辛辣ぅ。」
「舞台上でイチャイチャするのは嫌だけどプライベートでなら、好きなだけイチャイチャしたいもん。」
「あー、このリア充爆発しちゃえ。」

満月の言葉に春花はにこやかにそう言った。




続く。

ACT15-(7)

そして、迎えた加州清光単騎出陣の日。

「……………あー、緊張してきた。」
控室で満月は清光の衣裳に身を包み、ドキドキする心臓を抑えていた。

「満月ちゃんなら大丈夫だよ、心配しなくてもいいって。」
「そうだよ、心配し過ぎたら逆に倒れちゃうって。」

芳樹と春花にそう言われ、満月はそうかなぁ………と呟いた。

「じゃあ、元気が出るお呪い。」

そういうと芳樹は満月にちゅ、とキスをした。

「きゃ、芳樹さんってば大胆!」
「………よーしきさん!」

「ほら、緊張はしなくなっただろ?」

「……………………あ、ホントだ。」

「満月ちゃんは良い子だよ、大丈夫。自信をもってやればいいさ。」
「あ、ありがとうございます…………?」
「芳樹さん、そろそろ客席に行かないと。」

「そうだね。じゃあ、満月ちゃん頑張って。」
「………はい!ありがとうございます、芳樹さん!!」


芳樹と春花が控室を出た後、物吉が満月に声をかけた。

「お嬢様、そろそろ出番です。」
「………うん、わかった。
………でもさぁ、ホントにやるんだね、あれ。」

「………若旦那様が見たら、卒倒しそうですよね…………。」
「………演出の都合上、とはいえ。
ペンライト落とす皆が想像できるわ…………。」

「なるようにしかなりませんよ、お嬢様。」

「………そだね。」

「………まぁ、何とかなりますって。」
「そんな鯰尾みたいな言い方…………まぁ、何とかするしかないかぁ……………。」



続く。

ACT1-(3)

入学式を終え、ヒビキとヒカルはマンションに帰ってきた。
それと同時にヒビキのPDIに通信が入る。
「俺だ、どうした?」
『怪獣らしき反応が出たので、GUTSに出動要請が入りました。』

「…………わかった、すぐに行く。」


PDIで通信をするヒビキをよそにヒカルはてきぱきと彼の制服を準備した。
「………すまんな、ヒカル。今日は非番なのにゆっくりできん。」
「いいよ、父さん。入学式の途中で抜け出されるよりはマシだから。
夕飯、腕によりをかけて作っておくね。」

「ああ、期待してる。」

GUTSの制服に身を包んだヒビキはそう言うと、玄関を後にした。


「……………………………そっかぁ。もう12年も経つのかぁ。」

棚に飾ってある写真立てを見たヒカルは悲しそうな顔をした。

12年前、怪獣災害によってヒカルは実の両親を、ヒビキは妻を失った。
ヒカルは両親によって庇われたため、軽い怪我を負った程度で済んだが、
失ったものはかえってこない。

「…………………………おじいちゃんもおばあちゃんも早くに死んじゃったしねぇ。
曾おじいちゃんと曾おばあちゃんについても、私が生まれる前に亡くなったって言うし。」

ヒカルは写真立てから視線を逸らすと、掌に光を集めた。

今は亡き曽祖父は超古代文明の遺伝子を受け継いでいた。
それもあってか、ヒカルは曽祖父譲りの遺伝子を強く受け継ぎ、
この力を人のために役立ちたいと思い、TPCに入ることを志願していた。

だが、ヒビキは人造ウルトラマン計画があったことを理由にTPCに入ることを断固として反対した。
表面上は凍結したが、裏ではまだ進行している可能性を否定することができないため
長期的な安全を確保することができなければTPCに入らせることはできないとヒビキは言っていた。
強い力を求めるのは人類の悪いところだ、というところも。

怪獣災害で生き残ったからと言って自己犠牲をする必要はない、とヒビキはヒカルにそう言った。


「………父さんも心配症だなぁ。でも私までいなくなったら、確かに怖いかも。」

続く。

ACT1-(2)

メトロポリスにある私立高等学校に、ヒカルとヒビキの姿があった。
「……………ねぇ、あれってGUTSのイルマ隊長じゃない?」
「ホントだ、娘さんいたんだ。」
「てっきり娘さん、TPCの隊員養成学校行くかと思っていたけど…………。」
「さすがに自分の娘を隊員にしたくはないんじゃない?
だってほらさ、奥さん、12年前の事件で亡くしているし………………。」
「ちょっと、こういう日にそう言う話は止めなってば。
本人に聞こえたらどうするの?」

正門玄関でクラスの発表がされ、ヒカルは1年A組であった。
「………A組か。」
「まぁ、何処でもいいんじゃないかなー?あんまこだわらないし。」
「じゃあ、俺は保護者受付のところに行ってくるから。」
「うん。じゃあ、また後で。」

ヒカルとヒビキはいったん別れ、ヒカルは教室に向かうことにした。
教師が教室に入り、入学式について説明した後、ヒカル達は体育館に向かった。

入学式は何事もなく進行し、無事に終了した。

教室に戻った途端に新入生達は互いに自己紹介をし、グループを作る生徒達もいた。

「…ええっと、マドカ・ヒカルさん?」

「うん、そうだけど。」
「マドカ・ダイゴさんの曾孫なのよね?火星で花を栽培してた。」
「あ、うん。」
「凄いよね、マドカさんもそういう方面の進路って考えているの?」
「うーん、まだ考えてはいないかも。
曾おじいちゃんの研究もやってはみたいけど、自分のやりたいことってまだ決まっていないから。
高校生活で進路が決まればいいんだけど。」
「そっか。」

「でもさ、てっきりTPCの隊員養成学校行くかと思っていたけど。」
「父さんが反対しているんだよ。俺の跡なんて継がなくていいとか言っちゃってさ。
自分の娘が部下になるのは嫌なんだって。」
「あー、わかるわぁ。戦場に出て欲しくないもんね。」
「そうそう。無難な人生を送ってほしいって。」

「なるほどねー。」

和気藹々と話をしてくる同級生にヒカルはクスクスと笑った。


続く。

ACT15-(6)

その後も甘味処巡りをし、気が付けばすっかり日が暮れていた。

「あー、楽しかった。」
「そうですねぇ…………。」
「何かお邪魔しちゃってごめんね、芳樹さん、満月ちゃん。」
「いやいや、大丈夫だよ。満月ちゃん、単騎出陣前の良いモチベーションアップになったし。」
「あははは……………。」
「…………単騎出陣、見に行くからね。私。」
「俺、毎日行こうかな。」
「いやいやいや、初日と千秋楽だけで良いですってば。」
「若旦那様、お嬢様のことを溺愛していますからね。」
「芳樹さん、仕事も真面目にしてくださいよぉ!」

もぅ、とぷりぷりとした顔をする満月に芳樹はあはは、と笑うとポンポンと頭を撫でた。

「満月ちゃんのことが大好きだからねぇ。」
「………いいなぁ、私も恋愛したーい。
芳樹さんみたいな人、いないかなー?なーんて。」
「………芳樹さんは渡さないからね。」
「わかっているよ、満月ちゃん。
芳樹さんは満月ちゃんのもの、満月ちゃんは芳樹さんのものだもんねー?」
にんまりと笑う春花に満月はむぅ、となった。

「もう、春花ちゃんは……………。」


続く。
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