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ACT1-(3)

「………というわけで館長、この子を採用してもらえませんか?」
次の日になり、七海は姫桜水族館の艦長である東雲に波音を紹介した。
「七海ちゃんの紹介なら、OKだけど………結構飼育員の仕事は大変よ?大丈夫?」
「飼育員の仕事は大変だと聞いていますが、皆さんのご指導があればなんとかなると思います!
………多分。」

「………波音、多分はあかんでしょ、多分は………。」
「まぁ、大丈夫そうね。人柄もよさそうだし。」
「はい、ありがとうございます!」

「あ、この子。この辺に石が詰まっていますね。とりまーす。」

そういうと波音はシャチの口に手を突っ込み、石を取り除いた。

「凄いなぁ、この子新人泣かせなのに、吃驚したもんだ。」

「(前世がシャチだからって言えるわけないしなー………。)」

シャチを担当している小鳥遊は石を取り除いた波音に感嘆の声をあげた。

「そしたら次は体温測定ですかね。こっちで良いんですよね?」

「………あ、うん。そうそう。」

和気藹々とした様子で、順調に測定をしていく七海と波音を見て小鳥遊は次の作業に入った。


「………………どう、小鳥遊君。波音ちゃんの様子は。」
「いや、てきぱきとしているからおったまげたもんですよ。
まるで動物の気持ちがわかっているみたいで。」

東雲の話に小鳥遊はそう言って、波音を見つめる。


「……というか、七海ちゃんを助けたっていうシャチの波音と同じ名前なんですね。」
「……まさかとは思うけど、シャチの波音が人間に転生したってことはないわよね?」

「ははっ、まさかそんなおとぎストーリーがあるわけないじゃないですか。」

「そうよねぇ。」



「へっくしゅん!」

「…………ちょっと波音、大丈夫?」
「大丈夫ですー。誰か噂しているのかな?」

「さ、仕事しましょ。」


「そうっすね。」






続く。


ACT1-(2)

電車を乗り継ぎ、七海は家賃3万円のアパートに帰宅した。
そろそろ一軒家を買うのもいいかもなぁ……と思いながら、自分の部屋の前に行くと。

「………あ、ご主人様だ!」

ワンピースを着た少女が座り込んでいた。


「……………………波音?」

ポロっと、つい仲の良かったシャチの名前が出る。
初対面のはずなのに、既視感があるのは何故だろう。

ずっと前から知っているようなこの感覚は一体?

「………わぁ、さすがご主人様!私のこと、わかったんですか!?」
「………えっと、ホントに波音?シャチの?」

「はい、シャチの波音です!ご主人様に恩を返すべく、やってきました!」

「………ちょい待て、急展開過ぎるでしょう。何でシャチが人間になっているの?」
「ええっと、話が長くなるので中に入ってから話しませんか?
私、ずーっと待っていたんです。」
「………それは悪いことしちゃったな…………。」

話が見えないため、七海はとりあえず波音と名乗る少女を部屋の中に入れることにした。





「……………えっと、つまり?めいどの世界からやってきて、恩返しをしないといけないの?」
「はい。
私、とっても心配していたんですよ。ご主人様が海、トラウマになっていないか。」
「………うーん、未だに海の中で動くこと自体ができないのがトラウマになっているんだけどな。
水族館はセーフなんだけど。」

「それはほら、室内にあるっていうのと何があっても人が
すぐ動いてくれるからっていう安心感があるからですよ。」

「………そっか。そうなるんだね。」
「はい。……でもよかった、さすがはご主人様。私のことをすぐに信じてくれて。」
「いや、これでも結構驚いているんだけど。恩返しって言われても、波音は私を助けてくれたじゃない。
そのおかげで死に別れたけど。」
「それは確かにそうなんですけどぉ…………でも私、早くご主人様に会いたかったんですよ。
だけど、修行やら手続きやらで色々とすぐに行けれなくて。」
「………はぁ。で、具体的にはどうするつもりなの?」
「そうですね、ご主人様のお手伝いをすればいいかなぁと。」
「………お手伝いか。じゃあ、獣医の手伝いをしてもらおうかな。
水族館で飼育員兼獣医としてやっているんだけど、助手が欲しいのよ。
でも、阿吽の呼吸があった人じゃないと嫌でさ。」
「それならお任せください!守護天使の名にかけて、お手伝いします!」
「………ありがと、波音。」



続く。

ACT1-(1)

姫桜水族館。

市内にある最大級の公共施設でリーズナブルな値段から、市民達から愛されている老舗の観光スポットである。


「……………よし、これで大丈夫。」
飼育員兼獣医として働いている七海はペンギンの定期健診をしていた。

「ノドに骨が刺さっていたみたい。でももう取れたから。」

「ありがと、七海。いやあ、助かるわ。獣医の資格を持っている子が飼育員として働いてくれるのは。」

「あはは…………過去のトラウマが残っていますからねぇ。」
「………そういえば、波音ちゃんだっけ。」
「………はい。」
「野生のシャチと仲良くなって、一緒に波に乗ったりしていたもんね。」

「……サメの集団に襲われた時はもうダメかと思いましたよ。
でも、波音が身を挺してくれなかったら私はこうして生還することができなかったし。」
「……………海の底に沈んだんだってね、波音ちゃん。」
「………ええ。私が救出されたのを確認してホッとしたんでしょうね。」
「サーファーとして活動できないのはまだ踏ん切りがつかない証?」

「…………そうですね。波音を失った悲しみがまだ残っているかもしれないです。」

「でもこうして水族館に勤務しているのはある程度、トラウマを克服したってことよね。」
「まあ、海に入れる分には問題ないんですけど。そっから先がまだ動けないですね。」

「無理は禁物よ。焦らずゆっくり行きましょう。」
「………はい。」



続く。

プロローグ

………大丈夫。生きていれば、また会えるから。

迫りくるサメの集団に、傷を負いながらも果敢に立ち向かった1匹のシャチがいた。
そのシャチは人間を守り、人間が仲間に救出されたのを確認すると、海の底深く沈んでいった。



守護天使。

それはめいどの世界にて、前世が動物だった存在のことである。

守護天使達は前世に受けた恩を返すため、主人に尽くそうとしていた。


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