桜庭市某所にある、空き地。
そこには巨大なジャックオランタンが鎮座していた。
「…………あれ?」
魔女の仮装をしていた澪はぽかん、とした様子で周囲を見た。
「………私、何でこんなところに?桜庭市のハロウィン祭に参加していたんじゃ………。」
目をぱちくりとする澪をよそに十何人かの子供達は虚ろな表情でジャックオランタンの口に入る。
「…………あ、何か良い匂い…………。」
甘い匂いが漂い、その匂いを嗅いだ澪は顔をほっこりとさせる。
「あそこに行けば、お菓子をたっぷり貰えるかも………。」
ジャックオランタンのところへ行こうとした時、澪は肩をポンと叩かれた。
「澪ちゃん!!」
「…………はれ?真琴ちゃん?」
「しっかりして、正気に戻って!アンタ、迷子になってどうするの!?」
「………へ?迷子?」
「そうよ、電話しても繋がらないし、出ないし、心配して芳樹さん達にも協力して貰ったんだから!」
周囲を見回すと、守り刀達がジャックオランタンに向かおうとしている子供達を
必死に宥めていた。
「やだ、あそこに行くの!」
「ダメだダメだ、お母さん達が心配している。正気に戻りなさい!」
「…………え?」
長曽祢の言葉を聞いた澪はようやく正気に戻った。
「………そう言えば私、何でこんなところに?」
「やっと正気に戻った?ギランボに連れていかれるところだったんだよ?
他の都市でも行方不明になっている子がいるって。」
「………行方不明?ギランボ?何それ?」
「細かいことは後、皆、帰るよ!」
清光がそう言った時、ケラケラという笑い声がした。
「よくも邪魔してくれたね………子供達を連れて行こうかと思っていたのに………!」
ジャックオランタンの上に老婆の魔女が立った。
「子供の夢は美味くて最高の材料になる。大人は不味くて仕方がないんだ!」
「………ああ、そうかよ。そう言った理由で子供を誘拐していたのか。」
ヒュゥゥ、と言う音と共に、闇呪が和泉守達の前に現れる。
それを見た子供達は正気に返り、悲鳴をあげた。
「皆、逃げろ!」
長曽祢の叫びに子供達は我先にと逃げ出す。
清光と安定は抜刀すると、子供達に襲い掛かろうとした闇呪を斬り捨てる。
「………え、銃刀法違反になるんじゃ………。」
「今そんなことを気にしている場合!?どう考えても普通じゃないよ!?」
澪の言葉に真琴はそういって叫ぶ。
子供達が全員逃げたことを確認した長曽祢達も抜刀をした。
「……………澪ちゃん、真琴ちゃん。ここは危ないから下がっていて。」
「……芳樹さん、満月さん!?」
「後は私達に任せて。大丈夫、すぐに終わるから!」
続く。