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ACT3-(3)

放課後になり、深愛と涼子は澪と共に下校することになった。
「あ、病院に行ってもいい?
処方されている薬が、そろそろ切れそうなんだ。」
「病院?」
「そうそう。M計画は凍結したけど、研究のノウハウだけは引き継いでいるからさ。
母さんの弟子が責任者になっているんだ。」
「へぇ…………。」
「ちなみにどんな薬を処方されているの?」
「カロリー抑制剤。1食分のカロリーを薬に詰め込んだものなんだ。
怪獣に変身するだけでも、結構なカロリーを消費するからさ。」
「…………じゃあ、長く戦えば戦うほど、カロリーもとんでもなく消費するってこと?」
「食費が馬鹿にできないわね…………。」
「バイキングとかビュッフェとか、出禁になるかもしれないから行けないし………。」

「え、嘘、出禁になる可能性があるの!?」
「勘弁してくださいって泣きつかれた…………いや、うん。1番いいのは
バイキングとかビュッフェに行って好きなだけ食べることなんだけど…………。
やっぱり他の人の分もさ、残しといて欲しいって言うのもあるし………。」
「今の日本、食材ロスが多かったりするからね…………。」
「その分をM計画で生み出された命に回せばいいのに…………。」
「…………もったいない精神をうまく有効活用することはできないのかねぇ………。」
「………………ね、深愛。今日、焼き肉いかない?
美味しい店知っているんだ。
澪もどう?」
「いいわよ、今日はオフだから。友達と一緒に料理を食べに行くなんて、滅多にないから。」
「じゃあ、決まりだね。深愛の通院終わったら行こうよ。」



続く。

ACT10-(7)

脅迫状こそ届いたものの、ファッションショーは中止することなく開催を決行した。
桜庭市営文化ホールにはたくさんの人が集まり、
マスメディアもごぞって、生中継の準備をしていた。


「…………はぁ、緊張するなぁ………。」
「舞台の時と同じように、挑めば大丈夫だよ、満月ちゃん。」
「そうですよ、あまり緊張しすぎるとお腹が痛くなりますから。」
芳樹と綾人に諭されて、満月はよし、と呟いた。
「じゃあ、私、トイレに行ってきますね。」
「あ、僕がついていきます。」

物吉を連れて、満月は女子トイレに向かった。

「………まぁ、トイレぐらい別に1人で行けれるのに………。」
「ダメですよ、脅迫状が届いているんですから。
冗談だとしても、ショーが終わるまでは警戒した方が良いです。」
「……………皆、過保護だなぁ………。」
「過保護で当然ですよ、お嬢様が心配なんですから。」

女子トイレでお花を摘み、満月は鏡面台でメイクの最終チェックをした。
「………物吉、化粧大丈夫だよね?」
「はい、大丈夫ですよ。ばっちり清光になっています。」

女子トイレから出ると、1人の男とすれ違った。

「…………み、満月ちゃん………?」
「………お嬢様、ちょっとお下がりください。」
「ああ、やっぱり、満月ちゃんだ!ショーはあれほど中止しろって言ったのに………!」
「………って、この人が脅迫状を送ったの!?」

「……………満月ちゃん、満月ちゃん!!!」
男は満月の名前を呼ぶと、懐から包丁を取り出した。

「………お嬢様、すぐに仕留めますのでお待ちください。」

物吉は脇差を懐から出すと鞘で包丁を受け止めた。

そしてトン、と手刀で包丁を叩き落とすと、腕を掴み1本背負いをした。

「いたたた、いだだだあ!痛い、痛い!」
「お嬢様、警察に連絡を。」
「あ、はいはい。」
満月はスマホを取り出すと、綾人に連絡を取った。

「……あ、お兄様?実は…………。」


それから数分が経ち、男は銃刀法違反と脅迫状を送った罪で警察に現行犯逮捕された。

「あいつだって銃刀法違反だろ!?何で俺だけ逮捕されなくちゃならないんだ!?」
「模造刀です。銃刀法違反ではありません。」
「まったく、やることがしょうもなさ過ぎる馬鹿ですか…………。」
「理由については署の方でお聞きしますので。」

「俺は満月ちゃんをあの男から解放させたかっただけなんだぁぁぁぁああ!」

「………………何、それ。つまり独占したかったの?」
「みたいですねぇ…………。」
「私は芳樹さん一筋だから、ああいうタイプは無理だわ。」
「……………若旦那様の刷り込みって怖いですね。」
「………刷り込み最強なんだろうねぇ、多分………。」
「まぁ、何にせよ…………これでファッションショーを脅迫してきた方は逮捕できましたし、
ショーを楽しみましょう、お嬢様。」
「………うん。」



続く。

ACT10-(6)

「…………脅迫状かぁ…………。」
「これはまた随分と熱烈なファンがいるもんだねぇ、満月ちゃん。」
「そんなこと言わないでくださいよ。
熱烈なファンだったら、日用品を絶えず送ってくるじゃないですか。」
「それもそうだね。」

綾人から脅迫状を見せて貰った満月はやれやれ、とため息をついた。
「でもだからと言って中止するわけにはいきませんけどね。
せっかくの祭りごとですし、皆が楽しみにしているんですから。」

「そうだね。」

満月のブランド「ルーナ・ピエナ」は世界有数のブランドとして
注目を浴びている。

「……………何にせよ、当日になって仕掛けてくるのが目に見えてますね。」

「警察の方でも、持ち物検査とかそういうのをしてくれるけどさぁ……。
催眠術とかそういったものを使ってこられたら、洒落にならないよ。」

「…………そうですね。念のために催眠術に特化した班を編成しておきますか。」

「…………綾人お兄様、幾ら何でも大袈裟すぎでは………?」
「大事な妹の一大イベントです。これぐらいやっても罰は当たりません。」
「…………あ、はい。」

「………ホント、凄いシスコンだなぁ。」
「……やかましいわ、このロリコンが。」

「智仁様がみていたら、わははと笑いそうですね。」

「………うん、居なくてよかった。」



続く。

ACT10-(5)

一方、その頃。同時刻。

「……………これはまた、奇怪な文章ですね。」
綾人の言葉に智久はだろう?と言った。

彼が手にしていたのは1枚の紙。
そこには満月のブランドが主催するファッションショーの中止を求める文章が書き記されていた。

「………ご丁寧に新聞紙の切り抜きを使っていますね。
満月に何の恨みがあるのでしょうか。」
「言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれればいいのに
根暗な奴なんだろうさ。
警察にも連絡はしているんだろう?」
「ええ、無論です。しかしだからと言って中止をするわけにはいきません。
今回のファッションショーは刀ミュとのコラボですからね。」
「…………そうなんだよなぁ。11振りの衣裳も出るんだっけね。」
「犯人は満月の才能を妬んでいるのかな?」
「そうだとしたら最悪だよ。」
「むむぅ、お兄ちゃんとしては満月の近辺を警護した方が良いと思う。」

「ええ、物吉をはじめ新選組の面子に任せることにしましょう。
もしかしたら、粟田口にも協力を要請してもらうことになるかもです。」
「…………まあ、何にせよ。大事なお姫さんに何かあったら困るからな。
芳樹も黙っていないだろう。」
「そうですね。…………将来満月を預ける身ですから。」

「お兄ちゃんは大変だなぁ………。」
「シスコンと言われても仕方がありません。
爆弾に備えて、爆破物処理班にも待機してもらいます。」
「………大袈裟だな。」
「大袈裟で結構ですよ。何せたった1人の妹ですから。」



続く。

ACT10-(4)

満月達と共にウィンドウショッピングをした咲耶は、
心が落ち着いていくのを感じた。

「…………大丈夫ですか?何処か具合でも?」
「あ、いえ………大丈夫です。なんていうか、心が落ち着いていっているみたいで。」

「それは良かったですね。」
物吉の言葉に咲耶ははい、と頷いた。

そしてあっという間に、時間は過ぎて行った。
咲耶は母親に電話をして、迎えに来てもらった。

「まあ、うちの娘がお世話になりまして…………。
色々面倒を見て貰ってありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。」

ペコリと頭を下げる咲耶の母親に満月達は手を振った。

「拓哉君も心配していたんだから、後で連絡しなさいね。」
「はぁい。」
「そっか幼馴染は拓哉君って言うのか。」

「…………はい。本当に面倒見のいい人なんです。」
「幼馴染は貴重で大事だから、大切にしてね。」

「………はい。今日はありがとうございました!」


咲耶達と別れて芳樹はさて、と呟いた。
「じゃあ、俺達はウィンドウショッピングの続きでもしようか。」
「そうですね。」





続く。
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