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ACT1-(7)

「…………はぁ、言っちゃったよ………何しているんだ、私は…………。」

マンションに帰る途中、喫茶店に寄ったリオンは本日のケーキセットを頼みながら
物凄く後悔をしていた。

「(せっかく、シャチのDNAを打ち込んだ張本人達と出会えたっていうのに
ああいう態度を取るなんて最ッ低………。
でも今更、前言撤回しますなんて言えないし…………。)」

うむむむ………と悩むリオンに店員は、お待たせしましたー、と言ってケーキセットを置いた。

『それでは次のニュースです。
外国が哺乳類捕食型のシャチを絶滅危惧種に指定した件について…………。』

「…………………。」


店内に置かれているテレビの画面に映るアナウンサーが読み上げたニュースにリオンは
耳を傾けた。

「………ウソ、シャチ、絶滅危惧種に指定されたんだ…………。」

「………あのー、櫻井リオン選手ですよね?」

突然、声をかけられてリオンはえ、と顔をテレビからそらした。


「………あの、私、ファンなんです。サイン貰ってもいいですか?」

「………え、あ、どうも。私のサインでよければ。」


やった、と喜ぶ女子高生にリオンはあはは、と笑った。

色紙にサインを書き、それを渡すと女子高生はありがとうございます、と言って
自分の席に戻って行った。


「………………………まあ、深く考えても仕方がないよね。
私、シャチの生態について知っているようで知らないし。
……………長い付き合いになりそう。」




そう言うとリオンはぬるい紅茶を飲んだ。






続く。

ACT1-(6)

「………うっそ、臨時休業!?」

放課後になり、カフェミュウミュウへとやってきたリオンとクラスメイトは
店が臨時休業になっていることを知った。

「………ごめんね、櫻井さん。スイミングスクール欠席してもらってまで
来てもらったのに………。」

「いいよ、別に。店が臨時休業なら仕方がないよ。」
「じゃあ、また今度行こうよ。」
「うん。」

カフェミュウミュウでクラスメイトと別れたリオンはテクテクと公園を歩いた。

「………で、いつまでついてきてんの?」

「さすがに気付いたか。凄いな。」

「……初めまして、私は赤坂圭一郎と言います。」
「あ、どうも御叮嚀に。櫻井リオンです。」
「俺は白金稜だ。」
「で、2人とも私に何の用?シャチのDNAを打ち込んだ張本人さん?」


「お、勘が鋭いな。何処で気づいた?」
「気づくも何も、カフェミュウミュウって名前の時点で関係あると思っただけよ。」

「まあ、勘が鋭いなら回りくどいことはしないでいいな。………新手のエイリアンと出会っただろう?」


「…………ええ、出会ったわ。」
リオンはそう言うと稜と圭一郎にショコラとバニラのことを話した。




「…………なるほど、キッシュ達と同郷のエイリアンか。
ディーププルーの消滅を知って自分達が地球を支配しようとしているわけか。」

「らしいわね。6人のミュウミュウに倒されたって言っていたけど?」
「正確には5人のミュウミュウだけどな。6人目はちょっとワケありで、参加していない。」
「なるほどね。………で、私にどうしろと?」


「このまま、ショコラとバニラと言うエイリアンと戦え。」

「………要するにボランティア活動をしろってことね。」
「ボランティア活動が嫌なら、ウェイトレスをしてもいいんだぜ?」
「お断りよ。私が水泳選手だってことは知っているでしょ?
忙しいもの。だからボランティア活動になるって。」

「水泳なんて、いつでもできるだろう?」
「そういう考え方って嫌いなのよね。せっかく良い意味での力も貰ったんだし、有効活用しないと。
………今度はこっちからの質問。何でシャチのDNAを打ち込んだの?」

「適性が高かったのが、シャチだったんだ。」

「………あ、なる。
とにかく、ショコラとバニラについては私の方で片づけるわ。
取りこぼしがないかは他のミュウミュウに任せるとしてもね。」
「1人で戦う気か?」

「必要になったら、声をかけるわよ。またカフェミュウミュウに足を運ぶから。」

それだけ言うと、リオンはその場を後にした。



「……気が強いな………。」
「まったくですね。」





続く。

ACT1-(5)

…………ゆらゆらと海洋の中を泳いでいる。
「………………………あれ、何か気持ちいいかも…………。」
夢の中でリオンはシャチと共に海洋を泳いでいた。

「…………………………って、まさかの夢?」

高級マンションの一室で、リオンは目を覚ますとガクッと項垂れた。

朝食を作り、椅子に座ったリオンはご飯を口にした。

「………はぁ、それにしても昨日は災難だったな…………。
ミュウミュウってこの間、テレビで話題になっていたよね………。
猫耳生やした子とか、ウサギ耳?生やした子とか。
………そう言ったのと同じ、なんだよね。私も。
………っては、まさかミュウミュウって動物と合体した子が変身したとか!?」

思わずご飯を零しそうになったが、リオンは合点が言った。

「…………そうだよ、私の中にシャチが入っているってことはさ…………。
シャチの力を手に入れたってことになるんじゃ……………。
………いや、でもそれなら事故に遭った私がここまで回復できたのにも合点がいくというか…………。」

朝食を食べ終え、食器を片付け、歯磨きをしたリオンは鍵をかけると登校することにした。




「………………まぁ、何にしてもだ。今の状況をまとめると、
あのショコラとバニラはエイリアンの親玉に仕えていたけど、6人のミュウミュウに倒されたから
反旗を翻したんじゃないかな…………。
で、キッシュとタルトとパイの3人のエイリアンが人間にほだされたっていうから、
多分2人は彼ら?彼女ら?と和解していないってことになるんじゃないかなあ…………。
あ、頭が痛くなりそう……………。」


「あ、おはよう、櫻井さん!」
「…………あ、おはよう。」

クラスメイトに声をかけられて、リオンはビクッとなった。

「どうしたの?」
「あ、ううん。何でもない。今日も良い天気だなぁ、と。」
「そうだよねぇ。あ、ところで櫻井さん。カフェミュウミュウに行かない?」

「…………カフェミュウミュウ?」
「ケーキが美味しいの。店員さん達ももう可愛くってさぁ!」

「へー。」

「…………で?どうする?行く?」
「行こうかな。」

「やった、じゃあ放課後にね!!」

そう言うとクラスメイトはパタパタと駆けて行った。


「………………カフェミュウミュウかぁ…………。
もしかしたら、関係あるのかもねえ………。」



続く。

ACT1-(4)

リオンがミュウミュウに変身すると、ショコラとバニラは驚いた。
「まさか、こいつがミュウミュウ!?」
「ディープブルー様を倒したって言う連中は6人いたって言うけど………。」
「まぁいいや、どのみち1人ならどうってことないね。
……やっておしまい、キメラアニマ!!」

ネコ型のキメラアニマはリオンめがけて襲い掛かってきた。
「事故でシャチが体の中に入ってくるわ、妙なのに変身するわでわけわからないんだけど…………。
そうも言っていられないよね………!!」

キメラアニマの攻撃をかわしたリオンは、手を宙にかざした。

「リオタンバリン!!」

星型のタンバリンが手にすっぽりと収まり、リオンはそれを振った。

きらめく流星群のように、エネルギーの塊がキメラアニマにぶつかる。

エネルギーの塊を受けて、キメラアニマは後退する。

「よし、これで決めれば………!!」

そういうとリオンはタンバリンをパンパン、と叩いた。

「リボーンリオンスプラッシュ!!」


2種類のエネルギーが螺旋を描きながら、キメラアニマに大ダメ―ジを与えた。

パラサイトアニマが切り離され、キメラアニマは元の猫に戻った。


「………っち、1人だと思って慢心していたらこのざまかい。」
「まあいいさ。6人じゃない分、こいつはいつでも倒せる!!」

それだけ言うとショコラとバニラはその場から逃走した。

「………キメラアニマ…………ショコラにバニラ………。
それに6人のミュウミュウっていったい…………?」

変身を解いたリオンの耳にファンファンとサイレンの鳴り響く音が聞こえた。

「げ、今の戦闘で誰かが通報したのかな!?
に、逃げなきゃ……!!」

倒れている女性の脈を確認し、気絶しているだけで命に別状はないと
判断したリオンは路地裏から逃げることにした。


「もう、ついていないなぁ……!私はただ水泳をしていたいだけなのにぃ〜〜!!」




続く。

ACT1-(3)

リオンが路地裏に向かうと、1人の女性がアスファルトの道路に倒れていた。
そして、民家の屋根には尖った耳を持つ2人の女性が立っていた。

「………誰!?」
「私はショコラ。」
「私はバニラ。」

「この地球を侵略するためにやってきたエイリアンさ。」
「エイリアン………?」
「ディーププルー様も大したことなかったね。結局は人間の愛とやらにほだされちゃって。」
「キッシュもタルトもパイも、大したことなかったよ。
忌々しい人間と和解して、何がエイリアンだ。」

「………どういうこと?」

「ああ、お前には関係のない話さ。」

「どうせここで死ぬんだから。」
「いやいや、勝手に殺さないでくれる?私にはやらなきゃならないことがあるんだから。
それをしないまま終わるなんて、天国にいる父さんと母さんに何て言われるか。」

リオンがそう言った時、掌にすっぽり収まるほどの金色のアイテムが現れた。
「…………え、何これ?」

初めて目にするアイテムにリオンが戸惑っていると、ショコラとバニラはキメラアニマを
生み出すパラサイトアニマを、近くにいた猫に憑依させた。


「………って、ええ!?」

凶暴な叫び声を出すキメラアニマに、リオンは目が点になった。


「…………ああ、もうこれって私がどうにかするしかないの!?」


手にした金色に輝くアイテムをリオンは空にかざした。


「ミュウミュウリオン、メタモルフォーゼ!!」




続く。


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