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ACT1-(7)

「…………はぁ、言っちゃったよ………何しているんだ、私は…………。」

マンションに帰る途中、喫茶店に寄ったリオンは本日のケーキセットを頼みながら
物凄く後悔をしていた。

「(せっかく、シャチのDNAを打ち込んだ張本人達と出会えたっていうのに
ああいう態度を取るなんて最ッ低………。
でも今更、前言撤回しますなんて言えないし…………。)」

うむむむ………と悩むリオンに店員は、お待たせしましたー、と言ってケーキセットを置いた。

『それでは次のニュースです。
外国が哺乳類捕食型のシャチを絶滅危惧種に指定した件について…………。』

「…………………。」


店内に置かれているテレビの画面に映るアナウンサーが読み上げたニュースにリオンは
耳を傾けた。

「………ウソ、シャチ、絶滅危惧種に指定されたんだ…………。」

「………あのー、櫻井リオン選手ですよね?」

突然、声をかけられてリオンはえ、と顔をテレビからそらした。


「………あの、私、ファンなんです。サイン貰ってもいいですか?」

「………え、あ、どうも。私のサインでよければ。」


やった、と喜ぶ女子高生にリオンはあはは、と笑った。

色紙にサインを書き、それを渡すと女子高生はありがとうございます、と言って
自分の席に戻って行った。


「………………………まあ、深く考えても仕方がないよね。
私、シャチの生態について知っているようで知らないし。
……………長い付き合いになりそう。」




そう言うとリオンはぬるい紅茶を飲んだ。






続く。

ACT13-(6)

打ち上げが終わり、芳樹と満月は和泉守と堀川に回収された。
自動車の後部座席に乗った芳樹はふぅ、とため息をつく。

「………でも単騎出陣なんて、刀ミュもそれだけ認知度があがってきたってことだよね。」

「そうですねぇ。多人数でやってきたから緊張なんてしなかったんですけど、
単騎でやるとなると、緊張してきますね。」

「あはは、満月ちゃんなら大丈夫だよ。小さい頃から芸能界に入り浸っているんだし。」
「……………そうですか?」

「それを言うなら、若旦那様だって同じだろ。嫉妬や欲望渦巻く芸能界を生きてきたんだしな。」
「人間の負の感情ほど恐ろしいものはありませんからね。」


物吉の言葉に芳樹はうん、と頷いた。

「綾人お兄様、姫宮家の仕事を放って単騎出陣を見に来そうですね。」

「それはありえるかもね。智仁も姉さんも公務をすっぽかして、見に来そうだし。」
「いやぁ、さすがに毎日は無理ですよ。お2人は。周りが五月蠅いですから。」
「……………まぁ、確かに。
智仁も普通の家出身だったら、良かったのにね。」
「……皇室と言う家柄に生まれた以上、仕方のないことかと。」
「…………まあ、それは姉さんも承知の上だろうね。」
「……………ですね。」


しんみりとした空気が車内に漂う。

「…………しんみりとした空気になっているな、こりゃ。」
「………突っ込んだら負けだよ、兼さん。」

助手席に乗っている堀川の言葉に和泉守はそうだな、と呟いた。


「……………あ、そういえばお嬢様。之定が良い反物を入手したって言っていたぜ。」
「ホントに?」
「歌仙が良い反物っていうなら、相当いいだろうね。」
「ま、之定の目利きは確かだからな。」
「同じ兼定なのにえらい違いだもんね、兼さん。」
「国広、それは余計だ!」
「和泉守、ちゃんと前を見て運転してくれよ。」

「大丈夫、和泉守の運転は安全ですから。」


続く。
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