そして、迎えた加州清光単騎出陣の日。

「……………あー、緊張してきた。」
控室で満月は清光の衣裳に身を包み、ドキドキする心臓を抑えていた。

「満月ちゃんなら大丈夫だよ、心配しなくてもいいって。」
「そうだよ、心配し過ぎたら逆に倒れちゃうって。」

芳樹と春花にそう言われ、満月はそうかなぁ………と呟いた。

「じゃあ、元気が出るお呪い。」

そういうと芳樹は満月にちゅ、とキスをした。

「きゃ、芳樹さんってば大胆!」
「………よーしきさん!」

「ほら、緊張はしなくなっただろ?」

「……………………あ、ホントだ。」

「満月ちゃんは良い子だよ、大丈夫。自信をもってやればいいさ。」
「あ、ありがとうございます…………?」
「芳樹さん、そろそろ客席に行かないと。」

「そうだね。じゃあ、満月ちゃん頑張って。」
「………はい!ありがとうございます、芳樹さん!!」


芳樹と春花が控室を出た後、物吉が満月に声をかけた。

「お嬢様、そろそろ出番です。」
「………うん、わかった。
………でもさぁ、ホントにやるんだね、あれ。」

「………若旦那様が見たら、卒倒しそうですよね…………。」
「………演出の都合上、とはいえ。
ペンライト落とす皆が想像できるわ…………。」

「なるようにしかなりませんよ、お嬢様。」

「………そだね。」

「………まぁ、何とかなりますって。」
「そんな鯰尾みたいな言い方…………まぁ、何とかするしかないかぁ……………。」



続く。