「……………うっそ、マジでこういう演出だったの?」
加州清光の単騎出陣が終わり、春花は観客席でそう呟いた。
「…………………………。」
「…………あの、芳樹さん。生きていますか?芳樹さーん、もしもーし。」
春花の隣で芳樹は呆然としていた。
「………ああ、もう、ほら、控室行きますよ。」
「…………え、あ、うん、そだね……………。」
「成人男性をズルズル引きずるのは嫌ですからしゃっきりしてください。」


「……………いやでもまさか、ドン引きするなんて思ってもいなかったです。」
控室で加州清光の衣裳から私服に着替えた満月は芳樹にそう言った。
「でも束縛プレイがあるなんて、聞いてないよ?」
「そりゃ、言っていないもの。当然だよ。
芳樹さんに言えば演出変えろって言うだろうから。」
「そりゃ言うさ。でも、ここまでウケるとは思ってもいなかったけど………。」
「……………まあ、ですよね。」
「でも公演中、ずっとあの束縛プレイするんだぁ………。
綾人さん達もきっと、ペンライト落とすだろうねぇ。」
「あー、それはありえそう。」

ニコニコと笑う満月と春花をよそに芳樹はため息をついた。
そんな彼の背中を物吉はポンポン、と叩いた。

「まぁ、何ていうか仕方がないですよ。これもお嬢様の仕事ですから。」
「………………俺、清光と三日月の双騎出陣の脚本を書いてもらうようお願いしようかな………。」

「欲望丸出しの脚本でしたらお断りしますよ、芳樹さん。」
「満月ちゃん、辛辣ぅ。」
「舞台上でイチャイチャするのは嫌だけどプライベートでなら、好きなだけイチャイチャしたいもん。」
「あー、このリア充爆発しちゃえ。」

満月の言葉に春花はにこやかにそう言った。




続く。