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ACT1-(4)

「これはまた随分と熱烈なラブレターだな。」

芳樹宛に届いた脅迫状を見て、三日月宗近はふっと笑った。
「お嬢様を自分のものにしたいからと言って、若旦那様を殺すと言うのは筋違いだな。
守り刀という厳重なボディーガードがいるというのに、馬鹿な奴よ。」
「ごもっともでございます、三日月殿。」
「…………して、警察は物的証拠がなければ動かない無能だからな。
どうする?一期一振。」
「無論、我々粟田口が調べたうえで徹底的に潰します。
ミツバチが種を運ぶ前に、排除しなければ。悪影響を及ぼしますからな。」
「まいた種はすぐに排除する、か。お前達らしいな。」
「いえ、新選組に比べたらまだ生易しい方ですぞ。」
はっはっは、と互いに笑い合う三日月と一期に、そばについていた信濃藤四郎は
うげぇ、と言う顔をした。

三条の方でも調べてみる、と言うことで三日月と別れた一期は信濃と共に
長い廊下を歩いた。

「………いち姉ぇ、若旦那様には報告しなくていいの?」
「いちいちこの手の手紙を報告する必要はない。
正々堂々とした相手ならともかく、ね。」
「………………何やかんやで若旦那様に甘いよね、いち姉ぇ。」
「そうかな。何しろ、小さい頃から見ているからね。」
「……………そっか。」
「とりあえず物吉殿にも連絡をして、しばらく様子を見よう。
守り刀の数を増やして、徹底的にガードしなければ。」
「………いち姉ぇってお嬢様のことになると、目つきが変わるね。」
「当然さ。若旦那様から、あらゆる障害から守り通せと仰せつかっているから。」

「生まれた時から見守っているから娘のような感覚だもんね、お嬢様。」
「ああ、そうさ。結婚したり、子供を産んだことはないけれど。
娘のように大事に思っているからこそ、守らなければ。」






続く。

ACT1-(3)

ミーティングが終わり、一期一振は自室に戻るとアルバムを開いた。
満月の成長を綴ったアルバムで、1日に最低でも10枚ぐらいは写真を撮っていた。
「………すっかり成長しましたな、お嬢様も。」
満月は高等部に進学してからは姫宮の家を離れ、綿貫の別邸に住んで通学している。
母親であるジャンヌが命がけの出産をしたこともあり、満月は両親や兄達に溺愛されていた。

『いちごはどうしてわたしをまもってくれるの?』
『若旦那様より貴女様を守るよう、頼まれましたからな。』
『……そうなんだ。わたし、あいされているんだね。』
『はい。』

脳裏に幼少期の満月がふと口にした言葉が蘇る。

「…………生涯唯一の太刀として打たれた一期一振の名にかけて、
あらゆる障害からお守りするのが私の役割ですからな。」

生まれてきた時からずっと見守ってきたため、一期にとって満月は娘みたいなものだ。
だからこそ、あらゆる障害から守りとおさなければならない。

高等部を卒業したら、待っているのは芳樹との祝言だ。

「…………まずは、お嬢様に未だ言い寄る虫を排除せねばなりませんな。」
「いち姉ぇ、ちょっといいか?」

「どうしたんだ、薬研。」

粟田口の中でも大人びている薬研が、コンコンとノックをして一期の部屋に入ってきた。

「………いち姉ぇ宛に手紙が届いたんだ。」
「私に?」

「………どうもきな臭いんだがなぁ。」

薬研から手紙を受け取った一期は中身を開封した。

「………これはこれは。随分と熱烈な。」
「何て書いてあるんだ?」

「お嬢様を自分のものにしたいから、若旦那様を殺すと書いてあるよ。」

「…………これはまた、過激だな。」
「そうだね。…………三日月殿にも話しておこうか。」

「ああ、その方がいいな。こういった輩はなかなか減らないな。」

「……………それでも誘拐にならない分、まだマシかもしれないが。」

「インフルエンザにかかったお嬢様を連れて、守り刀もなしに飛び出した若旦那様を思い出すな。
あの時はいち姉ぇも本気で怒っていたな。
………まあ、智久様がいてくれたから良かったけど。」
「そうだな。」


続く。

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