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ACT1-(1)

「あ、一期。おはよう。」
「おはようございます、お嬢様。今日は早く起きられたのですね。」
「うん。目覚ましより早く目が覚めちゃって。」
「それは喜ばしいことですな。
物吉殿も、大変喜ぶでしょう。」
「でも毎日起こして貰った方が楽で良いんだけどね。」

私立聖ミカエル女学院指定のブレザー服を着ている満月は、一期と話をしながら長い廊下を歩く。

「…………そういえば一期って守り刀の中でも最古参だよね。」
「そうですな。」
「……………小狐丸が言っていたよ、三日月と互角に戦えるのは一期ぐらいだって。」
「はは、三条派の皆様も最古参ですからな。」
「新選組はまだ日が浅いからねぇ。」
「まだまだ、と言ったところですか。
…………それでどうして急にそんな話を?」
「ん?ああ、何ていうか、私のこと生まれた時から守ってくれてるからさ。
嫌になったことはないかなあ、なんて。」
「まさか。そのようなことはございません。」
「そう?」
「はい。私はいついかなる時も、
貴女様をお守りするよう、若旦那様から言いつけられていますから。
常に見守るだけが愛とは限りません。
遠くから見守るだけの愛もあります故。」

「…………そっか。何かちょっと難しいね。」

「そうでしょうか?私は貴女様が幸せになってくれれば、それでよいと思っていますので。」
「一期も彼氏の1人ぐらいは作ればいいのに。」
「何を仰いますか。我々は貴女様と若旦那様の幸せを第一に願っております。」

「……………………そっか。皆の愛って結構重たいんだね。」
「そうですなぁ。愛が重たいと言えば重たいですな。」

他愛もない世間話をしているうちに2人は食堂に到着した。
「では私はこれで。」
「うん。ありがと、一期。」


続く。

プロローグ

「………一期一振。粟田口吉光の手により打たれた唯一の太刀。
お前はその名を襲名することになる。」
「…………はっ。襲名致します。」

生まれて間もない満月を抱える12歳の少年……綿貫芳樹は、真剣な眼差しで
彼女を見つめた。


「俺は生涯この子しか愛さない。
粟田口吉光、生涯唯一の太刀とされるお前をこの子に贈る。
だからこの子の守り刀になって、いついかなる時も守り通せ。」
「…………この身に代えても、お守り致します。」

「……頼むぞ、一期。」






ACT2-(9)

芳樹の運転する自動車に2人が乗り込むと、彼はエンジンをかけた。
「どうだった?あの2人は。」
「両想いになるまでに時間がかかりそうですね。」
「はい。役重様が鈍感だと言うのがよくわかりました。」

「まあ、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてしまえって言う言葉が何処かにあるぐらいだからね。」
「あはは。」
「………そういえば、ラヴクラフトの元カノなんだけどね。」
「どうかしたんですか?」
「彼氏と別れたそうだよ。」
「あらま。」
「そうなんですか?」
「まあ今回の1件で、お互いの本性がわかったのかどうなのかは知らないけれど。」
「ラヴクラフト氏、フラれて正解だったんじゃないですか?」
「まあ、新しい彼女を見つけたそうだよ。
病院の看護師だって。何でも看護師の方が一目惚れしたんだって。」
「それは嬉しい進展なんでしょうか……………。」
「いいんじゃないのかな。支えてくれる人がいるって言うのは。」
「そうですね。しっかり罪滅ぼしをしてくれれば、それで良いんじゃないでしょうか。」
「うん、そうだね。」





終わり。

ACT2-(8)

その後、芳樹達が修正プログラムのデータを送信したことで、
ログアウトができなくなっていたプレイヤー達は、現実世界に戻ることができた。
ラヴクラフトはその後、意識回復を待って、警察に逮捕されたらしい。

そして、PMWは大規模のアップデートをした上で運営を再開することになった。
「…………何ていうか、凄まじかったな…………。」
「ホントに…………。でも心配したんだからね、ログアウトできなくなるなんて。」
「…………それはその、悪かったと思っているよ。」
「…………………。」
「…………………。」

律の部屋で、PMWのアップデートをした2人は互いに沈黙と化す。
「………あ、あのさ、律。」
「何?」
「もしよかったら今度、2人で遊びに……………。」

「………律ー、お客さんよー。」

律の母親が1階から、声をかけた。

「え、お客さん?誰?」
何処かに遊びに行こう、と最後まで言えなかった幸太は
タイミングの悪さを呪った。

「………姫宮さんよ。」
「え、姫宮さん!?」

意外な来客に驚いた律はパタパタと階段を降りた。

「あ、役重さん。」
「どうしたの、姫宮さん。」
「これ、今回のお礼。2人のおかげで事件解決したから、小野君と2人で食べて。」

「………うわ、これって高級ブランドの紅茶と菓子!?
いいの!?」
「いいのいいの、2人には色々と手伝って貰ったから。」
「はい。PMWの皆を代表して、ということです。」

「まあ、今回の騒動で私達が動いたのは非公式だから表彰状は当たらないけど。」
「ううんこういったものの方が嬉しいよ、ありがとう!」

にっこりと笑った律に満月と物吉は微笑んだ。
「…………………ちなみに役重さん。」
「何?」
「小野君、大事にしてあげて。」
「そうですね。幼馴染と言うのは貴重ですからね、大事にしてください。」
「幸太は大事な幼馴染だけど………何で?」


律の問いかけに2人はプッと笑った。

「これは大変ですねぇ。」
「そうだね。鈍感じゃ、大変だ。」
「え、え、どういう意味!?」
「じゃあ、お邪魔虫はこれにて退散するから。」
「もし結婚式を行うことになったらその時は姫宮グループのブライダルショップをご利用ください。」

「え、え、何で話がそうなっちゃうの!?」



続く。

ACT2-(7)

外壁を壊し、一行は城内に進んだ。
「……………何ていうか、薄気味悪いところだな…………。」
「………人工の太陽があるから、まだ良いけど、これは確かに怖いね。」

「………そういやラヴクラフトってクトゥルフ神話を作ったラヴクラフトと血縁関係あるのか?」
「いや、ないぜ。ただ単に同姓の別人だ。」
「そうか。まぁ、クトゥルフ神話は現存している神話の中でも作者が判明しているしな。」
「へ、へぇ……………。」
「ちなみにどうでもいい話だが、クトゥルフ神話は
『なんだかよくわからないがとりあえず怖いモノ』として認識した方がいい。
精神的にじわじわ来る奴だな。」
「…………精神疾患持っている人にはきついんじゃないですか?」
「かえって無効化されるか、弱体化されると思うんだけどなぁ………。
まぁ、精神疾患と言っても色んな種類やパターンがあるからな、一概に言えない。」
幸太の話にそう返答した智久の言葉に、律はそうですか………と呟いた。


「……リア充がよくぞ来たな。
お前達のことは調べているぞ。」



城の中に入ると、黒いマントを背につけた成人男性が待ち構えていた。

「おうおう、随分と言ってくれるじゃねぇか。」
「そうですね。まぁ、肉体関係はあるかもしれませんが。」
「さらっと凄いこと言いませんでした、鶴丸さん!?」
「そりゃ、男だぜ?自慰とかそういうのしたくなるし、鬱憤だって晴らしたい時があるし。」

あはは、と言ってのける智久に満月と律は顔を真っ赤にした。

「……………智久さんってあれなの?性にオープンなの?
それともただの馬鹿?」
「………………まぁ、智久さんも男だし、獣だし。それに付き合う鶴丸も凄いし………。」

「さて、と。こいつの性事情はどうでもいいとして、お前をとっ捕まえて
正常にログアウトできるようにしないといけないからな。覚悟しとけよ。」
「……………ふん。お前らごときに倒される私ではないわ。」
「………こういうの、何だっけ。フラグって言うんだっけ。」
「…………うん。フラグだね。死亡フラグ。」

「…………そこの女子2人!何を言うか!?私は弱くないぞ!?」
「………………え、ホントに?」
「試してみるか?」
「やってみましょうか。」

「…………ひょっとして、私、地雷踏んだ?」


武器を構える一同に、ラヴクラフトは命の危険を感じた。



………それから数分もしないうちにラヴクラフトは床に倒れた。

「大した事なかったな、こいつ。」
「…………そもそも、1対7で勝てるわけがないだろ。」

「バランスの取れたパーティーに勝てるとお思いで?」
「ひ、ひでぶ……………。慈悲などないのか…………。」

「残念ながら私達の辞書に慈悲という言葉はありませんね。」
「敵は徹底的に潰すのが守り刀のルールなので。」
「まだ新選組が相手じゃない分、マシだと思いな。」
「あいつら、手加減っていうのマジ知らないからな…………。」

「さて、と。修正プログラムを引き出して……と。」
「…………そんなことできるんですか?」
「俺を甘く見てもらっちゃ困るぜ。
もしも俳優を失業することになったら、芳樹に秘書をするよう頼まれているからな。」
「……………すご。」
「…………智久さんだけは敵に回したくないね。」
「……………だな。」




続く。
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