「あ、貴女達は…………?」
「私、櫻井勇花って言います。こっちは二ノ宮智恵、篠場仁美。」
「よろしく。………えっとお名前、言える?」
「………滅茶苦茶警戒されていますね。」
「それは知らない人間が自分を介抱していたら警戒するのは無理ないって。
………でも安心して。」
「日本は治安がそれなりに良いから貴女を襲う人はいませんよ。………多分。」
3人の話にマグノリアは緊張が解けたのか、ホッとした様子を見せた。
「私はフォルトゥナ王国のマグノリアと申します。
介抱していただき、ありがとうございました。」
「いやいや、脈計っただけだし………。」
「気を失っていたけど大丈夫?」
「お腹とか空いていません?」
「お腹……ですか?」
仁美に聞かれたと同時にマグノリアのお腹の虫が鳴った。
「うちのお母さんが作ったサンドウィッチでよければ、どうぞ。」
「ありがとうございます。………頂きます!」
マグノリアは丁寧なお辞儀をするとサンドウィッチを口にした。
「美味しい………。」
食事が終わったのを見計らって、3人はマグノリアに気になることを聞きだした。
「ねぇ、マグノリアさん。」
「何でここに斃れていたの?」
「フォルトゥナ王国って聞いたことありませんが………。」
「フォルトゥナ王国は人間界の裏側にある異世界に存在する王国です。
私は継承の儀で女王になる予定でしたが、突如としてサタトスが現れて
王国を混乱に招いたのです。」
「………ファンタジー小説とかに出てくる、王国滅亡パターン?」
「じゃあ、マグノリアさんって王女様なんだ。」
「そのサタトスは悪い奴なのですか?」
「………ええ。そのあまりの凶暴さに昔、父が封印したと聞きましたが。」
「解けちゃったんだ。」
「めでたい時にとんでもないものが来ちゃったね。」
「………大変でしたね。」
「………はい。あの、お三方は私の話を信じてくれるのですか?
人間界で生きている者達はこういう話を信じないのかと思っていましたが。」
「いやだってさ。……真剣に話しているのに冗談ですって顔をしていないじゃん。」
「そうそう。ここで倒れていたのも事実だし。」
「相当ヤバかったのですね。」
「………お三方は優しいのですね。」
「………あ、でもさ。マグノリア王女がここにいるってことはフォルトゥナ王国、どうなっちゃったの?」
「騎士団の団長が人間界に通じるゲートを用意してくださったのです。
私は最後まで共に戦おうとしたのですが、皆さんが私だけでも人間界に逃げろと仰って………。」
「……では今どうなっているのかわからないのですね。」
「…………はい。」
続く。
…………そしてそれから数日後。地球、日本都内某所。
櫻井家。
「………勇花。いつまで寝ているの?もう朝よ!?」
母親である美月の声に勇花は一斉に目を覚ました。
「………え、嘘もうこんな時間!?」
「もうちょっと寝ていたい…………。」
「いい加減にしなさい。貴女、今日から中学2年生でしょ!?」
「お母さんのケチ!」
「ケチで結構。早く朝ご飯を食べてしまいなさい。」
「はーい。」
「今日から中学2年生って言う自覚がない…………。」
「そんなこと言わないの。来年は受験生でしょ?」
「げ、そうだった。」
朝食を食べた勇花は私立中学である仙道中学校へと向かった。
「………あ、智恵ちゃん、仁美ちゃん、おはよう!」
「おはよう、勇花!」
「おはようございます、勇花ちゃん。」
二ノ宮智恵と篠場仁美の2人と十字路で待ち合わせをして、勇花は一緒に歩いた。
「はぁ…………もう中学2年生か。早いね。」
「そのうち進路希望も出されると思うよ。」
「そうですね。………でもまだ将来の夢が決まっていませんし。」
「………そうだよねぇ。」
住宅街を通り抜け、公園に差し掛かった時、3人は園内に人が倒れているのを見つけた。
「………ねえ、智恵ちゃん、仁美ちゃん。」
「………何?………って人が倒れているよ!?」
「ちょっと行ってみましょう!」
「うん!」
公演に入った3人はマグノリア王女を視界に入れると、すぐに体を起こした。
「何か衣裳が古い時代の王様みたいな感じだね。」
「………うん、あ。心臓が動いている。死んでいるってわけじゃなさそう。」
「学校には連絡を入れておきますね。人助けをしますって。」
「お願い。」
仁美が学校に連絡をし、智恵は脈を計った。
「脈は安定しているみたい。」
「意識を失っているだけ?」
「そうみたい。でもこの様子だと…………すぐに目を覚ましそう。」
「う…………ううん………………。」
マグノリアが目を覚ますと、そこには3人の少女がいた。
続く。
地球の裏側にあるフォルトゥナ王国。
そこではマグノリア王女の即位が今まさに行われようとしていた。
「王女様、準備の方はよろしいでしょうか?」
「…………ええ、いよいよこの時が来たのですね。」
執事長の問いにマグノリアはため息をついた。
「王女様が即位なされば、フォルトゥナ王国はより一層平和になれるでしょう。」
「………そうだといいのですが。」
執事長と共にマグノリアは玉座の間に向かった。
「マグノリア王女様、万歳!」
玉座の間に向かう途中、バルコニーに顔を向けると国民達の声が聞こえてきた。
その声に励まされながら、マグノリアは玉座の間に移動する。
「……………ハハハハ…………ハハハハ!」
マグノリアが玉座の間に向かったのと同時に不気味な笑い声が城内に響き渡った。
「誰ですか!?」
「我が名はサタトス。かつてお前の父親である先代の王によって封印された闇の魔王だ。」
「………サタトス!?そんなバカな!?王の封印が不完全だったというのか!?」
「ああ、そうだ。完全なものなどこの世には存在しない!
故に我は完璧を求める!そのためにはまずこの国を破滅と混乱に追いやってやる!!」
「まさかこんなめでたい日にとんでもない存在の封印が解かれるとは…………。」
続く。
強盗団は無事、警察に逮捕され、パーティーは無事に解散となった。
事情聴取も行われたが、どちらかと言えば被害者の立場であったため、すんなりと終わった。
「……………満月ちゃん、レストランでも行こうか。」
「飲み直したい気分なんですか、芳樹さん。」
「そうだね。それに三日月達も頑張ってくれたし。」
「お褒めに預かり、光栄です。
ですが我々の役目は若旦那様とお嬢様をお守りすることですから。」
「一期は固いなぁ。まぁ、そこが君の良いところなんだけどね。」
「主さん、僕も頑張ったよ!」
「乱も頑張ったね。」
よしよし、と頭を撫でられて乱はご機嫌になった。
「………あ、厚からLINEだ。主さん、ご飯作ったからまっすぐ帰ってきてだって。」
「厚は気が利くな。」
「自慢の弟ですからな。」
「じゃあ、まっすぐ帰ろうか。こんな時間だし、智久にも声をかけるとするか。」
「では鶴丸には私から連絡しておこう。
智久様のことだ、二つ返事ですぐ駆けつけるだろうよ。」
「そうですね。厚の作る料理は絶品ですから。」
かくして、芳樹達は綿貫家の別邸にまっすぐ帰ることにした。
「やぁやぁ、お疲れ様、諸君!強盗団の撃退、ご苦労だったな!」
「………何で智仁がいるんだ?」
「厚から連絡があったのです。料理を作りすぎたので、食べに来ないかと。」
「………悪い、若旦那様。つい作りすぎちゃって…………。」
「でも賑やかなのは良いことだと思いますよ。綾子お義姉様と一緒にご飯を食べられるなんて。」
「はい。私も可愛い義妹とご飯を食べられるのは嬉しいことです。」
「うんうん、美しい姉妹愛だね。血は繋がっていないが。義弟よ、俺達も楽しまないとな。」
「……………どうせなら、姉さんだけこれば良かったのに…………。」
「芳樹にーに、嫉妬しているの?」
「お父様に嫉妬しているんだね、芳樹にーに。」
「別に嫉妬なんかしていない。」
「………芳樹さん、いじけたら駄目ですよ。」
「若旦那様も素直じゃないですから。」
続く。