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ACT16-(6)

「な、何が起きたんだ?」
アルゴ氏が驚いている間に、銃を持った武装集団がパーティー会場に侵入してきた。
三日月と一期は芳樹と満月を庇う形で前に出る。

「大人しくしろ、そうすれば命まではとりはしない!」
「………いや、大人しくしていても何人かは殺す気でいるでしょ。」

満月がボソリ、と呟く。

「……あいつら、何処かで見た事があると思ったら現在逃走中の強盗団じゃないか。」
「…………ああ、そう言えば被害総額10億円を超えるとか何とか。」
「………2人とも、随分と冷静ですね。」
「………まぁ、うちにも強盗に入られたことがありまして。」
「でも守り刀達の返り討ちにあって今も入院中なんですけどね。……多分。」
「………あの、どれだけ凶暴なんですか、守り刀と言うのは。」

「………いえ、あの、一部だけが凶暴でございまして。」
「はっはっは。新選組は凶暴な犬だからなぁ。まあ、主人には忠実だが。」
「……………お前ら、何を呑気に話しているんだ!?死にたいのか!?」

「………いかがなさいますか、若旦那様。」
「……………室内戦は苦手なんだがな。」
「良く言うよ。平気で殺る癖に。」
「主人をやられたら、やり返すのが流儀ですから。」
「………何にせよ、命と四肢さえ無事なら手加減する必要はない。やってしまえ。」
「………はっ。」
「うむ、承知した。」

芳樹の言葉に、2人は頷くと手を鳴らした。

「では、手加減するなと言われましたので………お覚悟はよろしいか?」
「我々に喧嘩を売ったこと、後悔するがいい。」

「…………あ、やっほー。いち姉ぇ、三日月さん!」


その時、ガシャンと窓ガラスが割れ、2振りの刀を手にした乱が室内に入ってきた。

「おぉ、乱か。怪我はないか?」
「全然、これぐらい平気だよ。はい、2人の刀。」
「………おい、待て。屋上には仲間がいたはずだぞ!?どうしたんだ!?」
「あー、お仲間さん達?今頃、お縄についているんじゃないかな?だって僕がヤッたんだし?」

「では給料分の仕事をするとしようか。」
「ええ、そのようですな。」
「………っち!こいつらを片付けてしまえ!」
「皆様方、伏せていてください!」






続く。

ACT16-(5)

「綿貫芳樹様と姫宮満月様ですね。いらっしゃいませ、ようこそ。」

タキシードとパーティードレスに身を包んだ芳樹と満月は受付の男性に招待状を渡した。

ウエイターの案内でパーティー会場を歩くと様々な視線が飛び交う。
「…………これは確かに戦場ですね。」
「そのようだな。」

護衛としてついてきた一期一振と三日月は周囲を警戒する。

「あら、綿貫様に姫宮様。お久しぶりですわ。」
「高倉さんでしたっけ。」
「お久しぶりです。」

「あら、覚えていてくれたのね。嬉しいわ。」

高倉家の御令嬢と話をした後、別れた2人はアルゴ社のオーナーを探した。

「…………あ、あちらにいましたよ。」

報道陣に囲まれている初老の男性を一期が見つけた。
その視線に気づいたのか、初老の男性は報道陣から離れると芳樹と満月の2人に向かって歩いた。
「やぁ、ミスター綿貫にミス姫宮!ようこそ、アルゴ社主催のパーティーへ!」
「………初めまして、綿貫芳樹と申します。」
「ごきげんよう、ミスターアルゴ。姫宮満月と言います。」
ドレスの裾をつまみ、会釈をする満月にアルゴ氏は拍手を贈ると芳樹と握手を交わした。

「今夜は招待してくださり、ありがとうございます。」
「いやなに、私のような年寄りの招待に応じてくれてこちらこそありがとう。

……後ろに控えているのが、守り刀かね?」
「はい。こちらが三日月宗近と一期一振でございます。」

会釈をする2人の守り刀にアルゴはうんうんと頷いた。

「天下五剣の中で最も美しいとされる三日月宗近と、宮内庁御物の一期一振の名を模した守り刀か。
いや、良い目をしている。さすがだね。」
「お褒め下さり、ありがとうございます。」

「……………………。」

素直に礼を言う一期と違い、三日月はにこにこと笑顔を浮かべているがその目は笑っていない。

「…………三日月?どうしたの?」
「いや何、ちと変な気配がしてな。」
「…………気配?」

満月がさらに聞こうとした瞬間、銃声が響いた。




続く。

ACT16-(4)

「………うん、まぁ、こんなところかねぇ。」
「ありがとう、次郎さん。それにしてもホント良い反物が入ったんだね。」
「まあね、常日頃のあたいの行いがいいからさね!」
「あはは、良く言うよ。暇さえあれば酒ばっかり飲んで。」
「この間なんかは日本号さんとサシで勝負したんでしょ?
どっちが勝ったの?」
「そりゃもちろん、あたいが勝ったさ。日本号にはまだまだ負けられないね。」
「………………次郎太刀に勝てる相手なんているのかなぁ…………。」

次郎太刀が反物を片付けていると、ノック音がした。

「………あ,蜻蛉切さんに村正さんじゃん。どうしたの?」
「これはこれは。お嬢様もおいででしたか。」
「これは好都合ですネ。」

「何が?」

「実はパーティーの招待状が届いたのです。差出人はアルゴ社からですが。」
「…………アルゴ社?最近右肩昇りで有名な、最新気鋭の大企業じゃないか。」
「綿貫家の次期頭首である若旦那様宛に贈られてきたのですヨ。
大方、綿貫の後光に縋りたいところなんですかネ。」
「招待状、中身何ともなかった?」
「はっ、今のところ脅迫めいたものは書かれていませんでした。
お嬢様も同伴しても良い、という内容が記されていましたが。」
「姫宮とも仲良くなりたいのかな?」
「どうでしょうな。綿貫は世界の、姫宮は日本のトップに立つ大企業ですから。」
「……………どうする?お嬢様?」
「そりゃ、一緒に行くに決まっているでしょう。芳樹さん1人だけにしたら、
若い女が群がってくるし。」
「それは言えてますネ。」


続く。

ACT1-(3)

「………というわけで館長、この子を採用してもらえませんか?」
次の日になり、七海は姫桜水族館の艦長である東雲に波音を紹介した。
「七海ちゃんの紹介なら、OKだけど………結構飼育員の仕事は大変よ?大丈夫?」
「飼育員の仕事は大変だと聞いていますが、皆さんのご指導があればなんとかなると思います!
………多分。」

「………波音、多分はあかんでしょ、多分は………。」
「まぁ、大丈夫そうね。人柄もよさそうだし。」
「はい、ありがとうございます!」

「あ、この子。この辺に石が詰まっていますね。とりまーす。」

そういうと波音はシャチの口に手を突っ込み、石を取り除いた。

「凄いなぁ、この子新人泣かせなのに、吃驚したもんだ。」

「(前世がシャチだからって言えるわけないしなー………。)」

シャチを担当している小鳥遊は石を取り除いた波音に感嘆の声をあげた。

「そしたら次は体温測定ですかね。こっちで良いんですよね?」

「………あ、うん。そうそう。」

和気藹々とした様子で、順調に測定をしていく七海と波音を見て小鳥遊は次の作業に入った。


「………………どう、小鳥遊君。波音ちゃんの様子は。」
「いや、てきぱきとしているからおったまげたもんですよ。
まるで動物の気持ちがわかっているみたいで。」

東雲の話に小鳥遊はそう言って、波音を見つめる。


「……というか、七海ちゃんを助けたっていうシャチの波音と同じ名前なんですね。」
「……まさかとは思うけど、シャチの波音が人間に転生したってことはないわよね?」

「ははっ、まさかそんなおとぎストーリーがあるわけないじゃないですか。」

「そうよねぇ。」



「へっくしゅん!」

「…………ちょっと波音、大丈夫?」
「大丈夫ですー。誰か噂しているのかな?」

「さ、仕事しましょ。」


「そうっすね。」






続く。


ACT1-(2)

電車を乗り継ぎ、七海は家賃3万円のアパートに帰宅した。
そろそろ一軒家を買うのもいいかもなぁ……と思いながら、自分の部屋の前に行くと。

「………あ、ご主人様だ!」

ワンピースを着た少女が座り込んでいた。


「……………………波音?」

ポロっと、つい仲の良かったシャチの名前が出る。
初対面のはずなのに、既視感があるのは何故だろう。

ずっと前から知っているようなこの感覚は一体?

「………わぁ、さすがご主人様!私のこと、わかったんですか!?」
「………えっと、ホントに波音?シャチの?」

「はい、シャチの波音です!ご主人様に恩を返すべく、やってきました!」

「………ちょい待て、急展開過ぎるでしょう。何でシャチが人間になっているの?」
「ええっと、話が長くなるので中に入ってから話しませんか?
私、ずーっと待っていたんです。」
「………それは悪いことしちゃったな…………。」

話が見えないため、七海はとりあえず波音と名乗る少女を部屋の中に入れることにした。





「……………えっと、つまり?めいどの世界からやってきて、恩返しをしないといけないの?」
「はい。
私、とっても心配していたんですよ。ご主人様が海、トラウマになっていないか。」
「………うーん、未だに海の中で動くこと自体ができないのがトラウマになっているんだけどな。
水族館はセーフなんだけど。」

「それはほら、室内にあるっていうのと何があっても人が
すぐ動いてくれるからっていう安心感があるからですよ。」

「………そっか。そうなるんだね。」
「はい。……でもよかった、さすがはご主人様。私のことをすぐに信じてくれて。」
「いや、これでも結構驚いているんだけど。恩返しって言われても、波音は私を助けてくれたじゃない。
そのおかげで死に別れたけど。」
「それは確かにそうなんですけどぉ…………でも私、早くご主人様に会いたかったんですよ。
だけど、修行やら手続きやらで色々とすぐに行けれなくて。」
「………はぁ。で、具体的にはどうするつもりなの?」
「そうですね、ご主人様のお手伝いをすればいいかなぁと。」
「………お手伝いか。じゃあ、獣医の手伝いをしてもらおうかな。
水族館で飼育員兼獣医としてやっているんだけど、助手が欲しいのよ。
でも、阿吽の呼吸があった人じゃないと嫌でさ。」
「それならお任せください!守護天使の名にかけて、お手伝いします!」
「………ありがと、波音。」



続く。
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