「…………よし、これでどうだ!」
「はい、これで決めます!」
満月と物吉の後方支援を受け、芳樹と智久はモンスターを狩っていく。
「…………データを収集すれば、召喚できるんですよね?」
「あ、うん。100%以上になれば召喚できるから。」
「なるほどー。………あ、このモンスターは防御が固いんですね。
念のため、召喚データ用に取っておきますか。」
「…………………でも、ホントに初心者?」
「俺達のアドバイスがあるとは言ってもビギナーズラックが続くわけないし………。」
「ああ、物吉は徳川家に幸運をもたらした物吉貞宗の名を襲名しているからね。
彼女がいると実際、幸運が続いているから。特に満月ちゃん。」
「え、そうなの!?」
「物吉がいると、調子がすごぶる良いの。まぁ、芳樹さんのお爺様に、
私に幸運をもたらせってプレッシャーをかけられているからねぇ。」
「幸運を運ぶのが僕の役割ですからね。」
「呑気に言っているけど、プレッシャーかけられるのすごい怖くないか?」
「いえいえ、僕は守り刀ですから。
お嬢様をお守りするのが役目ですし。」
「………はぁ…………。」
「………でも、ホントにビギナーズラックいつまで続くのかな?」
「とりあえずビギナーズラックは大事にしよう。
ま、物吉がいる限り、負けることはないから大丈夫だろ。」
「ああ、そうだな。物吉は戦いの度にいつも勝利していたって言う逸話があるからな。」
「お役に立てて光栄です。」
「………………俺も幸運が欲しいなぁ。物欲センサーがいつも出るし。」
「………何ていうか、レアアイテムバンバンドロップしているし………。
ホント、物吉さんって凄いね。」
続く。
とてとて、とフローリングの床を私ことキティは歩いていた。
「あ、キティ。おはよう。」
ご主人様である満月さんに声をかけられて私はみゃぁ、と鳴いた。
私はノルウェージャンフォレストキャットという種類の猫で、
元々捨て猫として保護されていたところをちょうどペットが飼いたいと思っていた
芳樹さんと満月さんに貰われた。
綿貫家での生活はほんとにのんびりとしたもので、
ご飯は美味しいし、2人や守り刀の世話はとても丁重で心地良い。
満月さんの歩調に合わせて私は歩く。
幼少期は病弱だったという彼女は今でもたまに季節の変わり目になると寝込んでしまう。
そういう時、私は傍によるのだ。
ちょっと顔を見てみると、何だか調子が悪そう。大丈夫かしら?
「……なぁに、キティ。心配してくれてるの?」
満月さんの問いに私はみゃぁ、と鳴いて足に擦り寄った。
「キティは優しいのね。」
当然。私は芳樹さんと満月さんのことが好きなんだから。
2人に貰われなかったら、保護施設のところにいたままだったかもしれないもの。
「ああ、満月ちゃん。おはよう。それにキティも。」
ご主人様、おはようと私はみゃぁと鳴いた。
人間との意思疎通はできないけれど、人間の言葉は理解できる。
私はここにきて幸せだ。
「……………そろそろ、手入れをしないといけないかもなぁ。」
「そうですね。」
ご主人様の手入れはとても気持ちがいい。満月さんと2人で協力してやってくれるから、なおさら。
ごろごろと鳴く私の首を芳樹さんは撫でた。
「キティは良い子だね。これからもよろしく頼むよ。」
ええ、こちらこそ喜んで。
終わり。