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ACT12-(4)

テレビ局の控室で、芳樹達はプルプルと震えながら、テレビを観ていた。
「………綾人お兄ちゃん、笑いすぎだって。」
「ゆきだって、笑いすぎだろ。」
「………さすが、綾人達の妹だね。」
「……………ご愁傷様、という奴だな。」
「………………。」
「………芳樹、どうかしたのか?」
「……………ちょっと、出てく。」
そういうと、芳樹は控室から出て行った。


「……………それでは、姫宮さんに歌っていただきます。」

ステージ上の中央部に立ち、満月は曲を歌った。

黄色い歓声があがり、テンションが高くなっていくのを感じながら、
満月は歌を歌った。


「…………満月ちゃん!」

三日月の衣裳を着た芳樹が、ふわりと駆け寄り満月を抱きかかえた。
………次の瞬間。

照明の機材が、先ほどまで満月が立っていた場所に落ちてきた。


「…………え、芳樹……さん………!!」
「………お嬢様、大丈夫ですか!?」
物吉と一期、清光の3人がスタジオに昇り、満月の安否を確認する。
「だ、大丈夫………芳樹さんが庇ってくれたから………。
でも、どうして…………。」
「………いや、何となく?」
「お嬢様関連の危機感知能力はすさまじいですからね、若旦那様。」
「……でも、来て良かったんですか?」
「滅茶苦茶、黄色い悲鳴があがっているんだけど。……後、司会者が顔を真っ青にしているよ。」
「……………知らない。司会者の対応は任せた。」
「はーい。」
そう言うと清光は司会者に弁明をするため、彼女に近づいた。

「大丈夫だったかい?」
「芳樹さんのおかげで助かりました。ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
「綿貫さんがいるなんて聞いていないよー!」
「どうせ、team三条のメンバーは控室で待機していたんでしょ?」
「あー、それはあり得るかもねぇ。」
「こういうところでいちゃついてくれちゃって………いいぞ、もっとやっていいわよ。
この際だから、ファンサでもすればいいんじゃないかしら?」
「…ま、愛歌さん!?」


よしよし、と満月を抱きしめながら、芳樹ははっはっは、と笑った。



続く。

ACT1-(3)

「俺の試練はパズルを解くこと。
1問間違えるだけでも、俺とは対戦できないから気を付けてね。」

ヒロキの出したパズルに、挑戦者達は頭を抱えた。

「………頑張っているみたいだね、ヒロキ。」
「そうですねぇ、ラナキラマウンテンの地形を活かしたパズルが功を奏しているみたいですし。」

阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡るラナキラマウンテンを眺めながら、
2人はアフタヌーンティーを楽しんでいた。

「…………はぁ、疲れた!」

グレイシアを抱きかかえて、ヒロキがラナキラマウンテンから戻ってきた。

「お疲れ様、ヒロキ。」
「今日はどうだった?」
「今日の挑戦者、1人だけ正解者がいたけどコテンパンにしたよ。
もう1度リベンジしに来ますって捨て台詞を残して、帰って行った。」

「ヒロキのラプラスとユキメノコ、グレイシアはレベルが高いからね。
苦手なタイプであっても、技術の差でカバーしているし。」

「でも慢心はしていないよ、俺。驕ったりしたら、ズタボロになるの目に見えているし。」
「偉い偉い。さすがは私達の息子ね。」
「いつかはフリーザーも、試練に出せれたらいいんだけど。」


「それは当分無理な話ね。」
「フリーザーの人間嫌いを治さない限りはね。」
「………やっぱり?」


「色違いだからっていう理由だけで、色んな人間に狙われ続けたもの。
ヒロキが根気よく向き合ったから、ゲットできたのよ?」


「だって、ホントに綺麗だもん。色違いのフリーザー。皆が狙う理由はよくわかるよ。
………だけど、そのせいでたくさん傷ついたから。」
「………そうね。ヒロキ以外の人間には気性が激しいままだもの。」

「……………ま、長い目で見ていくしかないさ。」
「うん。そうだね。」


続く。

ACT1-(2)

メレメレ島で、しまキングであるハラにキャプテンを任命する儀式を行ってもらい、
ヨシキ、ミツキ、ヒロキの3人はウラウラ島に向かった。

「ここがカプの村かぁ。凄い見晴らしがいいなー。」

「…………かつて、カプの怒りを買い、破壊されたと言われる荒地ですか。」

「うん。でも俺の場合はポケモンリーグに最も近い場所だからここを選んだだけなんだけどね。」


「ラナキラマウンテンも、修行にはもってこいだから日々鍛錬を怠らないようにするよ、
父さん、母さん。」
「そうね。」
「それは当たり前のことだからな、ヒロキ。」
「はぁい。」

「…………で、試練の内容をどうするか決めたのか?
いつ挑戦者が来るかわからないから、なるべく早く決めてくれってハラさんも言っていたし。」
「あー、うん。そうだね…………どうしようかなあ。」

頭をポリポリと掻くヒロキの服の裾をクイクイ、とグレイシアが引っ張る。

「え?何だって?パズルでもすればいいって?」

ヒロキの疑問にグレイシアは、パァと明るい表情を見せた。


「ああ、それはいいかもしれないな。」
「知識と技術をフル活用するにはもってこいだものね。」
「方向性も決まったことだし、後は中身を固めるだけだね。グレイシア、ありがと。」


ヒロキに頭を撫でられて、グレイシアは頬ずりをした。


続く。

ACT1-(1)

「………やぁ、長旅お疲れ様!!」

メレメレ島にやってきた3人を、ククイ博士が出迎えた。

「お久しぶりです、ククイ博士。」
「お元気そうで何よりです。………相変わらず、ポケモン達の技を受けているようで。」

「あはは、それが僕の研究テーマだからね!」

「…………………。」

「ああ、博士。紹介します。私達の息子のヒロキです。
ヒロキ、自己紹介なさい。」

ミツキに背中を押されて、ヒロキは被っていた帽子を取った。

「は、初めまして、ヒロキです!ククイ博士の話はいつも両親から聞いています。
………何でもロイヤルマスクとか何とか言っているとか言っていないとか………。」

「はっはっは、ロイヤルマスクは僕のことじゃないからね!
2人とも、悪い冗談を吹き込まないでくれるかな?」

「………………で、博士。私達をウラウラ島じゃなく、メレメレ島に呼び出した理由というのは?」
「うん、実はね。……ヒロキにキャプテンになってもらいたくて。」

「………キャプテン?」

「ジムリーダーみたいなものさ。…」
「そう!ここのところ、挑戦者がすごく多くてね。
ポケモンリーグを前に、最後の試練としてヒロキに壁になってもらいたいんだ。」

「それは畏れ多い話なんですけど………俺なんかより、父さんと母さんにしてもらった方が………。

一応、元チャンピオンと元四天王だし。」


「…………いやぁ、年齢制限っていうものがあるんだ。」

「………あ、なるほど。」

ククイの説明にヒロキは納得した。

「元とはいえ、チャンピオンと四天王の子供なら実力も折り紙付きだし、何より大丈夫!
ヨシキとミツキから、君がこおりタイプの使い手であることは聞いているから、
引き受けてくれるかな?」

「…………まぁ、俺でよければ喜んで。」

「ありがとう、ヒロキ!君ならベストな返事をしてくれると思ったぜ!!」



続く。

プロローグ

4つの島からなる地方、アローラ。
カントーから遠く離れたこの地には引っ越しをする者が多々いた。

「ククイ博士からの頼まれごとってなんだろうね、ミツキちゃん。」

「そうですねぇ。まぁ、元々アローラに移住する予定だから良かったんですけど…………。」

「………ヒロキ、あまり遊び過ぎてデッキから落ちるなよ?」
「わかっているって。………わぁ、ユキメノコ。わかったから、<かみくだく>を使わない!」


ヨシキとミツキはアローラ行きの船のデッキで、ユキメノコと遊ぶヒロキに声をかけた。



続く。
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