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ACT12-(3)

「皆さま、お待たせしました。Girls音楽祭の時間です。」

男性嫌いとして有名な司会者が口上を述べるとともにBGMが流れ、
満月達は拍手をした。

「今回は欅坂愛歌さん、CherryBlossomさん、ミュージカル刀剣乱舞より
加州清光役の姫宮満月さんにお越し頂いています。
………あの、素のままでも良かったんですよ?」

「男性の趣味丸出しの衣裳で来ても良かったんですか?」

キリッと答える満月に司会者はそ、あ、はい、すみません………と呟いた。

愛歌と美桜、咲良、櫻子の4人はヒュゥ、と揃って口笛を吹いた。

清光と物吉、一期の3人は口に手をあてて笑いをこらえた。

慌てて、副司会が話題を提供する。

「そういえば姫宮さんは、ミュージカル刀剣乱舞………まぁ、刀ミュって言いますけど
紅一点なんですよね。
男性と比べるとなんか色々言われたりしませんでしたか?」

「ああ、ありましたね。
私、小さい頃は病弱だったので割と体力がないんじゃないかって言われてて
お兄様達にも心配されていたんですよ。
特に綾人お兄様と幸人お兄様は同じ舞台で共演していますからね。
公演が終わる度に体調はどうかとか、倒れていないか、とか無理はしていないか、とか
過保護すぎるぐらいに。」

「でもその割には、作詞作曲編曲や衣裳のデザインなんかをほとんど1人で手掛けて
凄いと思いますけどね。」


「今着ているこの衣裳もトライアルと比べるとだいぶ進化したんですよ。
石切丸を演じている祐一さんは、敏感肌ですから素材を選ぶのに苦労しまして………。」

「なるほど………。」

「ところで真剣乱舞祭というものの稽古が行われているそうですが、どうですか?」

「そうですね、年末年始に行うビッグイベントなのでぜひ観に来て欲しいですね。」


にこりと笑う満月に司会者と副司会は、うゎぁぁあと叫びそうになった。




続く。

ACT12-(2)

スタジオに入ると、最新気鋭のアイドルグループや歌手が椅子に座っていた。

「姫宮満月さん、入りまーす!」

「………よろしくお願いしまーす。」

(模造)刀を片手に、満月はスタジオを歩く。

「あら、満月ちゃん。」
「愛歌さんもいたんですか?」
「ええ、私も招待されてね。……でも満月ちゃん、結構目立つわね。清光の格好。」
「……打診したんですよ、この格好じゃないと出演しないって。」
「さすが。策士ね。
それ以外の私服だったら、芳樹君達の趣味丸出し全開だもの。」
「あはは………ゴスロリとか、ヒラヒラしたフリル衣裳とか着せてきそうなので………。」

「あ、あの、こんにちは!桧物美桜って言います。」
「私、老月咲良です!」
「ずるいずるい、私、明海櫻子です!」
「………ああ、CherryBlossomの!3人さくらの名前が入っているって最近話題の。
team新選組が稽古中に音楽聴いているんですよ。」
「え、ホントに!?」
「私達、team新選組with蜂須賀虎徹が好きだから嬉しいな!」
「何だか嬉しいかも!」

「満月ちゃんも大変だよね、team三条にteam新選組の両方に引っ張りだこだもん。」
「そうそう。おかげで私達が通っている学校なんかじゃ、三条の姫って呼ばれているもの。」
「どっちかっていうと新選組の姫って感じがするのにねー。」

「…………ホンットに新選組が好きなんですね………。」
「そりゃあ、新選組って言ったら幕末の京都で活躍した治安組織だもん。」
「ねぇねぇ、後で連絡先交換しない?私達、仲良くなりたいの!」

「あー、別に良いですけど…………。」

「……そういえば満月ちゃん。」
「はい?」
「守り刀、来ているの?」

「ええ、清光と物吉と一期が。」
最前列を指差すと、3人が軽く会釈する。

「物吉ちゃんと一期ちゃんは満月ちゃんが生まれた時に贈られたのよね。」

「そうなんですよ、清光は私が中等部に進学した時に贈られました。」

「はぁ、綿貫さんも贈る守り刀多くないですか?」

「過保護っていうか、ホントに溺愛されているんですねぇ。」
「私のところはお兄様達が五月蠅いですからね。
私が欲しければ、5人と勝負して勝ってから、交換日記をするところから初めてもらうぞって。」
「………そういえば、全員が剣道の有段者だったものねぇ。」

「………全国大会出場経験ありのお兄様方と勝てる人間なんている?」
「ズタボロにされるのがオチだね。」
「うん。」

「…………シスコンよねぇ。」



続く。

ACT12-(1)

師走に入った桜庭市。

冬季限定で朝風呂に入る習慣をつけている満月は物吉からの報告を受けていた。

「Girls音楽祭に出演?」
「はい。お嬢様の活躍を目にした司会者がどうしても、と依頼してきまして。
………………まあ、お嬢様の活躍を雑誌とかで見たんだと思いますが………。
その歌声を音楽祭でぜひ、披露して欲しいと。」
「…………単独で出ろっての?」
「はい。」
「……………観覧席も、女性じゃないと安心できない徹底ぶりだもんね………。
じゃあ、刀剣男士としてならOKだけど。」
「………と言うと仰いまして先方にはそう伝えました。」
「そしたら?」
「舌打ちされましたよ。男装するのかって。」
「…………舌打ちするか、フツー。」
「でもそれなら仕方がないと最終的には納得してくれましたが。」
「そう。」
「ただ、team三条with加州清光かteam新選組with蜂須賀虎徹のメンバーは却下だそうです。」
「……………ホント男嫌いなんだね………………。」



………それから、数日後。

満月は桜庭市中央テレビ局の控室にいた。


「………僕も、観覧席で見たかったです。」
「文句は言うな。観覧席に男がいたら、スタジオが阿鼻叫喚の地獄になってしまう。」
「………ここで見られるだけ、ありがたいと思った方がいいよ。」
「ありがたいことはありがたいのですが………何で、控室という狭い空間で
応援しなくてはならないのか………。」
「周りを気にせず叫べるのは、良いことだと思うけどな。」

「……………………まぁ、何とかなりますって。」
「鯰尾と同じことを言うね。」
「…………こうでもしないと、やっていけれませんって。」
「だよね。」

「すみません、そろそろ出番です。」

「あ、はい。………じゃあ、行ってきますね、芳樹さん。」

「うん、行ってらっしゃい満月ちゃん。」

額にキスを落とされ、満月はえへへと笑うとディレクターに連れられてスタジオに向かった。


続く。
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