「…………はぁ、言っちゃったよ………何しているんだ、私は…………。」

マンションに帰る途中、喫茶店に寄ったリオンは本日のケーキセットを頼みながら
物凄く後悔をしていた。

「(せっかく、シャチのDNAを打ち込んだ張本人達と出会えたっていうのに
ああいう態度を取るなんて最ッ低………。
でも今更、前言撤回しますなんて言えないし…………。)」

うむむむ………と悩むリオンに店員は、お待たせしましたー、と言ってケーキセットを置いた。

『それでは次のニュースです。
外国が哺乳類捕食型のシャチを絶滅危惧種に指定した件について…………。』

「…………………。」


店内に置かれているテレビの画面に映るアナウンサーが読み上げたニュースにリオンは
耳を傾けた。

「………ウソ、シャチ、絶滅危惧種に指定されたんだ…………。」

「………あのー、櫻井リオン選手ですよね?」

突然、声をかけられてリオンはえ、と顔をテレビからそらした。


「………あの、私、ファンなんです。サイン貰ってもいいですか?」

「………え、あ、どうも。私のサインでよければ。」


やった、と喜ぶ女子高生にリオンはあはは、と笑った。

色紙にサインを書き、それを渡すと女子高生はありがとうございます、と言って
自分の席に戻って行った。


「………………………まあ、深く考えても仕方がないよね。
私、シャチの生態について知っているようで知らないし。
……………長い付き合いになりそう。」




そう言うとリオンはぬるい紅茶を飲んだ。






続く。