2週間ほどばかり、入院することになった芳樹と満月はリハビリを兼ねて
院内を歩くことにした。

「…………あ、綿貫さんに姫宮さんよ。」
「トラックが突っ込んできたのに、2週間の怪我で済んで良かったわね。」
「2人の愛に勝るものはないって感じね。」

看護師にちやほやされながら、2人は廊下を歩く。

小児科病棟の前まで行くと、1人の少女が満月にぶつかった。

「わっ。」
「きゃっ!」

「満月ちゃん、大丈夫?」

「私は大丈夫ですけど、この子が………。」

「綾音ちゃん、また逃げようとしたでしょ!ダメじゃない!」

「逃げようとしたんじゃないもん、お家に帰りたいだけだもん!」

「だから、ちゃんと治療をしないとお家に帰れないって先生も言っていたでしょ?」

「嘘つき!半年前からそればっかり言っているけど全然治らないじゃん!」

「綾音ちゃん!」



「…………言いたいことはわからんでもないけど、まずは満月ちゃんに謝ろうか。ぶつかったのはそっちなんだし。」


にこにこと笑いながらも、綾音という少女の頭に手を振れた芳樹の目は笑っていなかった。



「………あ、ご、ごめんなさい……………。」






続く。