橋の中央部に向かって歩いてきた満月に、2人の男女は気づくと視線を彼女に向けた。
「新参者はすっこんでな!」
「縄張り争いの第三勢力ですか?」
「……違う。色恋沙汰はよそでやってほしいだけ。」
「はぁ!?これの何処が色恋沙汰に見えるっての!?」
「そうですね。まったくもって心外です。」
「………………周りの人を巻き込んでまで、縄張り争いをする気?」
メラメラと燃える炎を感じながら、満月は2人に問いかけた。
「……………良いでしょう。」
「まずはアンタから、潰してやるよ!」
2人はそういうとそれぞれの巧断に、満月を攻撃するよう指示を出した。
水と炎が螺旋を描き、満月に襲い掛かる。
満月の巧断は炎を吐いて、螺旋状の水と炎を弾いた。
「…………!」
「へぇ、アンタの巧断も特級かい?ちっこいのによくやるもんだ!」
「少々見くびっていたようですね。」
男が炎の巧断に続いての攻撃を指示しようとした時、風が吹いた。
「………!?」
突如として発生した鎌鼬をかわした巧断は男と女の元に戻る。
「おおっと、今の攻撃をかわすとは手馴れているねぇ。」
「…………満月ちゃんだけに戦わせるわけにはいかないって言ったのは何処の誰だよ。」
風の鳥と、青い龍の巧断を連れた智久と芳樹が満月の前に立つ。
「………芳樹さん、智久さん。」
「満月ちゃん、1人で突っ走ったらダメだろ?」
芳樹は満月の柔らかい頬をむにゅー、とつまんだ。
「アンタ達………いったい何者だい!?」
「ここら辺では見かけない顔ですが…………。」
「何、通りすがりの者さ。ちょっと訳ありでこの街には来たばかりだけどな。」
はっはっは、と笑う智久に芳樹はため息をついた。
「頭!」
「リーダー!」
「「警察が!!」」
「……っち、いいところだってのに!」
「今日のところは貴方達に免じて、引き下がるとしましょうか。
皆の者、帰りますよ。」
「応!」
サイレンが鳴り響くなか、男女は各々の部下達を連れて引き下がって行った。
「俺達も下がろうぜ。事情聴取に拘束されるわけにもいかないからな。」
「そうだな。……出てきてくれてありがとう、助かったよ。」
芳樹と智久は巧断に労いの言葉をかけた。
続く。