「………というわけで館長、この子を採用してもらえませんか?」
次の日になり、七海は姫桜水族館の艦長である東雲に波音を紹介した。
「七海ちゃんの紹介なら、OKだけど………結構飼育員の仕事は大変よ?大丈夫?」
「飼育員の仕事は大変だと聞いていますが、皆さんのご指導があればなんとかなると思います!
………多分。」

「………波音、多分はあかんでしょ、多分は………。」
「まぁ、大丈夫そうね。人柄もよさそうだし。」
「はい、ありがとうございます!」

「あ、この子。この辺に石が詰まっていますね。とりまーす。」

そういうと波音はシャチの口に手を突っ込み、石を取り除いた。

「凄いなぁ、この子新人泣かせなのに、吃驚したもんだ。」

「(前世がシャチだからって言えるわけないしなー………。)」

シャチを担当している小鳥遊は石を取り除いた波音に感嘆の声をあげた。

「そしたら次は体温測定ですかね。こっちで良いんですよね?」

「………あ、うん。そうそう。」

和気藹々とした様子で、順調に測定をしていく七海と波音を見て小鳥遊は次の作業に入った。


「………………どう、小鳥遊君。波音ちゃんの様子は。」
「いや、てきぱきとしているからおったまげたもんですよ。
まるで動物の気持ちがわかっているみたいで。」

東雲の話に小鳥遊はそう言って、波音を見つめる。


「……というか、七海ちゃんを助けたっていうシャチの波音と同じ名前なんですね。」
「……まさかとは思うけど、シャチの波音が人間に転生したってことはないわよね?」

「ははっ、まさかそんなおとぎストーリーがあるわけないじゃないですか。」

「そうよねぇ。」



「へっくしゅん!」

「…………ちょっと波音、大丈夫?」
「大丈夫ですー。誰か噂しているのかな?」

「さ、仕事しましょ。」


「そうっすね。」






続く。