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受け継がれるもの

「…………………え、嘘………………?」
綿貫拡樹は1枚の紙を見て驚いていた。

その紙には「加州清光役 綿貫拡樹」と書かれている。

「………よっしゃぁああ!!!」
その文字を見た瞬間、拡樹はガッツポーズを決めた。
「母さんがやってた役を俺がやることになるなんて…………!!」
「おめでとう、ひろ兄ぃ!ママがやってた役やるんでしょう?」
「ありがと、桃子。いや、感動するわ…………。」
「うふふ、私がやっていた役を拡樹がやるなんてねぇ………。
体型の関係でもうやれなくなってきているから、拡樹がやってくれると助かるわ。
貴方は貴方の加州清光を演じればいいんだから。」
「………うん。」
「しかし幕末天狼傳の再演でまさか、拡樹が抜擢されるとはなぁ。
責任重大だぞ、拡樹。」
「父さん、そんなこと言わないでよ!俺、ちゃんとやれるから!」
「お、言ったな?なら最後まで頑張れよ。」
「うん…………!」


「……………こんにちはー、綿貫拡樹です!今日はよろしくお願いします!」


稽古場に入るなり、拡樹は元気よく挨拶をした。

「お、拡樹君か。噂はかねがね聞いているよ、お母さんがやっていた役を引き継いだんだって?」

舞台監督の不知火に声をかけられて、拡樹はへにゃり、と笑った。


「まぁ、コネとかそういうのなんのそのって言われたらうぐぅ、ですけど。
でも、受け継いだ以上はしっかり見せつけてやらないといけないですよね。」

「お、その意気だ。そうだ、見せつけてやればいいさ。お前さんの実力をな。」

「………はい!」


終わり。

ACT1-(8)

その後、綾小路公孝は麻薬取締法違反によって警察に逮捕された。

「…………何もしなくても、どのみち警察に連行される運命だったって奴か。」
「ツメが甘かったんだね、兼さん。」
「ま、これで喧嘩売る奴も少しは減るだろ。」
「加州さんと大和守さんも暴れたかったって言っていたよ?」

「……あの2人は凶戦士だからなぁ、特に大和守は。」


「ご苦労様でした。和泉守殿、堀川殿。」

一期一振に労いの言葉をかけられて、和泉守は応、と頷いた。

「…………で犯行の動機はやっぱり、借金か?」
「そのようですな。お嬢様と結婚して軍資金を手に入れようとしていたようです。
まあ、最もそのような輩にはお嬢様を渡しませんが。」
「だろうな。私達の使命は綿貫と姫宮の血縁者を守り通すことだからな。」

「はい。誘拐未遂も立派な犯罪ですから。」

「一期、1つ聞いてもいいか?」
「何でしょう。」

「…………お前、ホントにお嬢様お抱えの守り刀でよかったのか?」
「当然です。十数年前、お嬢様がお生まれになった際、若旦那様から託されましたからな。
生涯この人しか愛さないという意味を込められた、というのもありますが。」
「……………お前、良い性格しているんだな。」
「褒め言葉として受け取っておきましょう。」

「ま、愚問だったな。忘れてくれや。
私達もお嬢様のことは気に入っているからな。」
「うん、そうだね、兼さん。」

「一期ー、ちょっといいー?」
「はい、ただいま。では私はこれで。」

「おう。」

満月の元に向かう一期を見て和泉守と堀川はクスリ、と笑い合った。



終わり。

ACT1-(7)

「…………へぇ、なるほどね。綾小路公孝か。」
「はい。どうやら、お嬢様を狙っての犯行だそうで。」
「満月ちゃん、モテモテだね。」
「嫌ですよ、誘拐犯とくっつくなんて。
私、芳樹さんの婚約者ですから。」
「そりゃそうだね。よしよし、酷い目に遭っただろう。」

芳樹に頭を撫でられて、満月は気分が高揚した。

「毛利と包丁がボコボコにしてくれたんですよ。」

「そりゃ、僕達はー…………。」
「お嬢様と若旦那様がくっつくことを楽しみにしているんですからね!」
「小さい子がたくさんできると嬉しいものですねぇ。」
「あはは、満月ちゃんの体力が持つかな?」
「もう芳樹さん!」

「………で、いかがなさいますか。若旦那様。」
「売られた喧嘩は買わないと、ね。痛い目に遭わせないと、わからないようだ。」
「では、土方組に任せると致しましょうか。」
「そうだね。しばらくご無沙汰だし、憂さを晴らすにはもってこいなんじゃないかな。」


その頃、綾小路宅では。

「………何ぃ?誘拐に失敗しただと!?」

「は、はい………守り刀2人にやられたらしく………。」
「っち、守り刀か………忌々しい…………!」

「き、公孝様、大変です!」

部下を叱責していた公孝の元に別の部下が慌てた様子で駆けつけてきた。

「どうした!?」
「で、電気系統に異常が…………!!」
「……何ぃ!?」

ガシャン、とガラスの割れる音が室内に響く。公孝はびくり、となった。

「…………よぅ、綾小路公孝。」

「………どうも、お邪魔します。」

「な、何だお前らは!?外にボディーガードがいたはずだ!!」
「ああ、皆さんならおねんねしていますよ。最近働かせすぎじゃないですか?」

「そんなバカな………50人はいたはずだぞ…………!」

「悪いな、これでも主命なんでな。姫宮と綿貫に喧嘩を売ったこと、後悔させてやる。」
「ま、まさか…………守り刀か!?」
「ピンポーン。大正解!てなわけで暴れさせてもらうぜ!」
「兼さん、ほどほどにねー。」
「闇討ち暗殺だけはすんなよ、お前!」

そう言うと和泉守と堀川は刀を鞘から抜いた。




続く。
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