「うむ、この抹茶ラテマキアートは美味いな。
主、もう1杯頼んでもいいか?」
「あ、うん。いいよ。買ってくるからちょっと待ってて。」
そう言うと満月は席を離れた。

「………で、実際のところはどうなの?貴方、顕現する前の記憶とかはないの?」
「それがまったくわからん。気が付いたら俺は道路にいた。
それに主が気づき、俺の名を呼んだ。ただそれだけの話だ。
顕現する前の記憶はないな……いや、持っていないというべきか。」

「…………これは初耳だな、主。」
「ええ。でも資材もなしに鍛刀したわけではないから、ドロップという形になるでしょうけど…………。
貴方、厚樫山とかそこらに徘徊しているのが普通なのよ?」
「そうなのか?」
「ええ。でも話を聞く限りだと不慮の事故で落ちていたってわけでもないし…………。
ますますわからないわね。現時点では。
あの子、審神者の適正があるのは確かだけど。」
「本丸とやらを持たないのは正解なのか?」
「原因がわかるまでは持たないようにしたのは正しいと言えば正しいわね。
きっとあの子、自分で理由を追い求めるタイプなのね。」
「ほう、観察力が鋭いのだな。」
「うちのところの三日月にもよく言われるわ。
………ともかく、満月ちゃんは正式な審神者になっていない以上、時間遡行軍が狙ってくるかもしれないわ。
今のあの子の状態じゃ、増援を呼ぶのは難しいわ。」

「お待たせ、三日月。………何の話をしていたの?」

「何、今の俺達では増援が呼べないからな。しばらく1人で主を守らねばならん。」

「………まあ、そりゃそうだろうね…………。」

「じゃあ、私の本丸で鍛刀をするっていうのはどうかしら?
どのみち、本丸を手に入れることになるだろうし、鍛刀も慣れておけばいいんじゃないかしら?」
「あ、はい。ありがとうございます。咲良さん。」


続く。