「…………これはこれは。」
姫宮邸で綾人は食堂で新聞を広げていた。
「お父さん、どうしたの?」
「芳樹と満月のコンサートが記事になっているんだ。」
「わあ、そうなの?凄いねぇ。」
「…………はい、貴方。」
目の前に朝食が置かれ、綾人は美穂にありがとう、と言って新聞をたたんだ。
「さて、それじゃあ食べるとしましょうか。」
「はーい。」
いただきます、と声をそろえて綾人達は朝食を口にする。
「今日は非番だったな、小狐丸。」
「はい、仕事も入っておりません故。のんびりと過ごすことができます。」
「いいわね、だったら今日は私の買い物に付き合って貰おうかしら。」
「そうだな。たまには悪くはないだろう。」
ニコニコと笑い合う両親を見て美花達はにっこりと微笑んだ。
美花、美風、美鳥、美月の4人を小学校と幼稚園に送った後、
美穂はルンルン気分で洋服を選んでいた。
「万年新婚夫婦と言ったところですな、旦那様と奥様は。」
「何とでも言ってくれ。満月の参考になりたいんだ。」
「………とんだシスコン野郎ですね。」
「何とでも言ってくれ。」
「………旦那様、お嬢様から電話。」
鳴狐の連絡に綾人はぱぁぁと喜びの表情を見せた。
「どうした、満月。こんな朝早くから電話をかけてきて。………ん?
今日の予定は空いているかって?もちろんだとも。
ああ、美穂にも聞いてみるから。」
「あら、貴方。満月ちゃんから電話?」
「今日の予定は空いているかと聞いてきたんだ。」
「もちろん空いているわよ、何?Wデート?」
「………ああ、そうらしい。」
「なら、一緒に出掛けましょうよ。」
「決まりだな。」
続く。
演奏が終わり、コンサートは無事に終了した。
観客から拍手を送られ、芳樹と満月は一礼をした。
控室に戻った芳樹と満月はやれやれとした表情で衣裳から私服に着替えた。
「はぁ………緊張したぁ………。」
鏡面台に向かい、メイクを落とす満月に芳樹はそうだね、と呟いた。
「でもこれで後は真剣乱舞祭まで落ち着くだろうから、のんびりとできるね。」
「そうですねぇ。」
「芳樹にーに、満月ねーね、お疲れ様!」
「2人ともお疲れ様!」
「幸仁に幸子、また来てくれたのか。ありがとう。」
「にひひ………どうせ2人のことだから、イチャイチャしているんだろうなぁって
お父様が言っていたよ。」
「イチャつくのは家に帰ってからだよ。」
「…………まったく智仁様は………。」
「で、その肝心の智仁は?」
「お母様と一緒に散歩しているよ!」
「鬼丸と白山がついている!」
「………ならいいんだけど。」
「………この近辺を護衛2人だけ連れて歩くなんて良い度胸しているというか………。」
「でも2人とも強いよ?」
「うん、強い!」
「………大丈夫ですよ、守り刀にケンカを売ろうとする方はいらっしゃいませんから。」
「相当物好きな方だと思いますけどね。」
前田と平野の言葉に2人はそれもそうか、と頷いた。
「……………あ、お嬢様、若旦那様!」
「乱、一期。外の警備お疲れ様!」
「2人とも、幸仁様と幸子様が来るまでイチャイチャしていたの?」
「こら乱、そんなことを言わない。」
「うーん、イチャイチャしていたかって言われるとイチャイチャしていないんだなぁ、これが。」
「はっはっは。まあ家に帰ったら、好きなだけイチャつくさ。」
続く。