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ACT2-(8)

海岸沿いに向かっていたインファント島の先住民が、慌てた様子で神殿に戻ってきた。
「何があったの?」
「…………エビラが現れたようです。」
「え、エビラ!?」
「………って何それ…………。」
「放射性廃棄物の影響によって生まれた怪獣です。」
「……………また放射性廃棄物………?」
「インファント島で取れる実から作られる黄色い汁が苦手なのですが………。
ここしばらく見ないと思ったらまた現れたのですね。」
「…………じゃあ、わかった。とりあえず追い払う。」
そういうと深愛は海岸沿いに向かうべく、走りだそうとした。
「待ってください。モスラが行く、と言っています。」
「いやいやいや、ダメだって。産後間もない体に鞭打ってどうするの。」
「そうだよ。激しい運動は駄目だって。
それに、寿命が残り僅かなんでしょ?
子供誕生の瞬間に立ち会わなきゃ。
ここは深愛に任せた方が良いと思う。」
「しかし……………。」
「しかしもへったくれもないよ。涼子の言う通りだよ。」
「でも、深愛さんには普通の人間として………。」
「受精卵に遺伝子を組み込まれた時点で、普通の人間じゃないんだよ?
深愛はそれもわかっている。
それに、親モスラさんに水中戦は無理。わかっているんでしょう?」
「それは……………。」
「……………とにかく、ここは深愛に任せた方が良いと思う。
私達にできるとしたら、黄色い汁を作ることじゃないの?」
涼子の言葉に先住民達は顔を見合わせる。
「それに『しののめ』もいるんだし。深愛は1人じゃないよ。」
「…………わかりました。でも、もしもの時は。」
「アミ!?」
「…………うん。もしもの時は出動してもらう。だから今は我慢して。」
そういうと深愛は目を閉じた。光の粒子に包まれて、深愛はモスラに変身する。
「じゃあ、私は『しののめ』に連絡するから、黄色い汁よろしくね!」
「………わかりました。お気をつけて。」



続く。

ACT2-(7)

深愛と涼子を乗せたイージス艦『しののめ』は、1日かけて日本から
インファント島に到着した。
「ここから先は大型艦はいけません。」
「まぁ、そりゃそうだろうね………。」
「………何かいかにも原始的って感じだもんね………。」
海岸沿いに着艦した『しののめ』から、降りた深愛と涼子を
アミとティエは案内した。
「ところでこの子、可愛いね。名前なんていうの?」
「フェアリーです。モスラの御使いなんですよ。」
「………フェアリーってまた安直な名前だねぇ………。」
「深愛、そんなこと言ったらダメでしょ。可愛い名前なのに。」
「海堂一佐、薬師寺さん。お気をつけて。」
「ありがとうございます、藍堂さん。」
「んじゃ、留守は任せた。」
「はっ。」
アミとティエの案内で、深愛と涼子はインファント島内部に入って行った。

「…………うわぁ…………植物だらけだ………。」
「あ、涼子。足元の植物、吸血種だから気を付けて。」
「マジで、うわ踏むところだった。」
「後、頭上も注意して。」
「はーい。」
吸血植物をかわしながら、2人はモスラがいる神殿に向かった。


「……………。」
「………………。」
「………人がいるね。」
「うん、しかも先住民だよ………。」
深愛の姿を見るなり、先住民達は舞を披露し始めた。
「深愛さん、涼子さん。奥へ。」
「うん。」
「お、お邪魔します………。」
はらり、はらり、と。鱗粉が舞う中、2人は神殿の前まで歩くと足を止めた。
「……………。」
「……………。」
翼をゆっくりと上下に振る、モスラが巨大な卵の上に鎮座していた。
「…………モスラ。」
深愛がそう呟くと、モスラは鳴いた。
「死ぬ前に会うことができた、とモスラは言っています。」
「そんな悲劇的なこと言わないで………って言っても、無理はないのね。
ホントに寿命が残りわずかなの?」
「はい。タマゴを産んで、後は死を待つだけです。」
「…………………モスラはこの1匹だけ?」
「はい。大昔はたくさんいたのですが、時代の流れと共に数を減らしていきました。」
「………そっか。」
「どうして今になって深愛に会いたいって思ったの?」
「子供が生まれる瞬間を見届けて欲しいと願ったからです。」
「見届ける時間すらないの?」
「…………はい。」
「…………………。」
先住民の祭司長がアミとティエに何かを話した。
「ね、何て言ったの?」
「人の身で神の領域に到達しようとしていることは確かに許されざること。
でも私達は自分の命を惜しんだために神の遺伝子を提供してしまった。
断罪されるべきは私達の方だと。」
「そんな…………。」
「………でもこうして貴女と相まみえることができて本当に良かったと思う、と。
こうしてみると、本当に普通の人間と変わりない、と。」
「………まあ、ハエ男みたいな感じにならなくてよかったって思うけど。」
「…………そうだね。あ、こっちの話、こっちの話!」
「涼子さん、モスラが深愛さんのことをよろしく頼むと言っています。」
「……へ?何で?」
「怪獣を恐れず、人間を恐れる貴女はとても貴重な存在だと。」
「………そりゃ、怪獣よりも人間の方が恐ろしいもん。
憎しみや怒りで、人の受精卵に怪獣の遺伝子を組み込もうとしたんだもの。」
「…………涼子。」
「まあ、やってしまったものは仕方がないかもしれないけどさ。
………結局、どう扱うかは私達人間次第だもんね。」
「…………うん。」

その時、先住民達がざわざわとざわつき始めた。

「………え、何?」
「何があったの?」



続く。

ACT2-(6)

涼子の話を聞いた健三はうむ、と頷いた。
「涼子がそんなに熱心に言うのなら、行ってきなさい。
若いうちに色々経験しておくのは悪くないことだ。」
「やった、ありがとう、パパ!」
そういうと涼子は健三に抱き着いた。
「深愛ちゃんについていくのはいいけど、怪我や病気には気をつけなさいね。」
「はーい、わかっていますって。」
「医療行為は時に危険な場所で行う時もあるからね。
のほほんとしたところばかりで行うのは医療従事者としては甘いよ。」
「うん!」
「そうと決まれば、後は海堂さんのお父さんを説得するだけだね。
自信はあるのかい?」
「もちろん!!」
「じゃあ、しっかりおやり。」
「はーい!」

…………それから2日後。深愛と涼子は防衛海軍基地に来ていた。
「………何でここから?」
「インファント島までの直行便はないからねぇ。
………というわけで、私の船を使って行くんだ。」
「………え?船って………護衛艦?」
「うん。一応、自分の船を持ってはいるんだけど、ほら。色々とやかましいからさ。
艦長代理を任せているんだよ。普段は。」
「…………深愛、ホントに大変だねぇ。色々やっかみがあるっていうのは。」
「ホントに………。」
「てなわけで私の船、イージス艦『しののめ』にようこそ、涼子。」
「ぶ、ふぅ!?い、い、イージス艦!?」
イージス艦『しののめ』を見た涼子はぽかん、となった。
「海堂一佐、お疲れ様であります!」
「お迎えご苦労、藍堂二佐。
………あ、この子が言っていた薬師寺涼子。」
「初めまして、艦長代理を務めている藍堂氷雨二等海佐であります。」
「は、はい、初めまして、薬師寺涼子と言います!」
敬礼をして挨拶をした氷雨に涼子は会釈をした。
「普段は学園都市にいるからさ、ここにはなかなか乗れないんだけど……。」
「何を仰いますか、非戦闘時は学生として日常生活を満喫せよという御父上のお考えです故。」
「…………藍堂さん、本音は?」
「まあ、正直に言うと戻ってこいって感じなんですがね。
ただ、色々とやっかみが五月蠅いんですよ。
私としてはだからなんじゃい、って話なんですが。」
「藍堂さん、強いんですね!」
目を輝かせる涼子に氷雨はうふふ、と笑った。
「それでは参りましょうか、インファント島に。」
「あの、本当に大丈夫ですか?涼子さん。」
「大丈夫よ、のほほんとしたところで医療行為しているようじゃ、
医療従事者としてはやっていけないってパパが言っていたもの。」
「………いえ、あの、吸血植物があるので気を付けてくださいね。」
「………………………え。」
「それを先に言わないで、どうするの!?」

平和に行けると思ったインファント島であったが、そうでもなかったようである。

続く。

ACT2-(5)

2人が周囲を見回すと、ひらりと何かが飛んできた。
「え、何々?」
「……………………。」
深愛と涼子の前に現れたのは、小さい蛾の怪獣に乗った小人サイズの少女2人であった。
「うわ、小さい!…………って深愛?どうしたの?」
「ひょっとして………インファント島から来たの?」
「………はい、そうです。」
「私達は貴女を探していました。海堂深愛さん。」
「…………え、探してたって………もしかして深愛がさっき言っていた先住民?」
「そうです。私はアミ。こちらは妹のティエです。」
ペコリと会釈する2人に涼子もつられて会釈した。
「……………何をしに来たの?」
「1度、インファント島に来ていただきたいのです。」
「待った待った。話が見えない。順番を追って説明してちょうだい。」
「………うん、涼子の言う通りだ。いきなりこういう場所でそんなことを言われても、困る。
それに私達が降りないと、不審に思われる。ここは場所を変えよう。」
「わかりました。」
「ええっと、そうしたら何処に行くの?ここからなら、私ん家が近いけど。」
「………いいの?」
「いいのいいの、気にしないで。」


薬師寺家。

夜遅くにも関わらず急にやってきた深愛を瑞枝と健三は暖かく受け入れてくれた。
「夜分遅くに失礼して本当に申し訳ありません。」
「いいのよ、気にしないで。お友達を連れてきてくれて嬉しいわ。」
「何もないけど、ゆっくりしていきなさい。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、私の部屋に行こうか。」
涼子の一声で深愛は彼女の部屋に向かった。


「……………で、本題に入っちゃうけど…………インファント島で何があったの?」
「16年前、日本から海堂詩織さん率いる防衛軍の特別研究チームが来た際、私達先住民は
最先端の医療物資と引き換えにモスラの遺伝子を提供しました。」
「まさか、ゴジラを倒すためだけに人間の受精卵に怪獣の遺伝子を組み込むためだったとは思ってもいなくて……。」
「………よく、遺伝子提供したよね?」
「言語が通じていなかったって言うのもあるけど、
先住民の方も最先端の医療物資を使わざるを得ない状況になっていたんだね?」
「はい。日本では廃れた流行り病が先住民の間で流行り、最先端の医療物資を使わなければ
全員が死んでいた……とそう聞いています。」
「………で、何で今になってモスラは深愛のところに貴女達を遣わせたの?」
「………実はモスラの寿命が尽きかけているのです。」
「ええ!?」
「……そっか。代替わり………。」

「そうです。モスラの代替わりが行われようとしているのですが、死ぬ前に
貴女に会いたいと。」
「会って、どうしたいの?話でもしたいの?」
「はい、そうです。」
「………………そっか。普通に考えてみればそうだよね、自分の遺伝子が人間に使われたんだもの。
そりゃ、話したくもなるって。
深愛、私は行くべきだと思う。防衛海軍に話をしてさ。」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、私、日本を守るための要なんだ。
そう簡単に離れるわけには………。」
「1日ぐらいなら問題ないって。ゴジラが上陸したらわかるようになっているんでしょう?」
「…………そりゃまあ、ね。」
「別に深愛の存在を否定しているわけじゃないんだからさ。ここはほら、里帰りって言うのも変だけど
会った方が絶対良いって。
お父さんの説得は私もするから。
というか、私もインファント島に行く!それなら問題ないでしょう?」

「………え、えぇ?でも、急にそんなこと言われたらお父さんとお母さんの許可いるんじゃ……。」
「ちょっと相談してみる!」
言うが早いか、涼子は部屋を飛び出すと両親の元に向かった。



続く。

ACT2-(4)

その後も難なく肝試しをクリアした深愛と涼子は屋上に向かった。
「うわぁ、絶景かなぁ。こういうところってなかなか来れないよね。」
「確かに。………えぇっと、スタンプはっと………あ、あったあった。」
用紙にスタンプを押した深愛と涼子は、屋上から見える学園都市の夜景を眺めた。
「………そういえば、何だっけ。ここの怪談。」
「確か夜中に来ると、何かがやってきて何処かにさらわれるとかどうとか……。」
「極端な話、夜中に来ると足元が危ないから気をつけろって話だよね。」
「まあ、怪談って大体、
いつまでも学校に残っている生徒を帰らせるための嘘だとか何とかっていう話も
聞くし。」
「そうだね。大体そんなもんだね。」
「…………でもここってさ、案外良くないものもあったりしない?」
「例えば?」
「悪気のない邪気とかそういうの。」
「…………ああ、それエンジェル様とかコックリさんとかそういうのね。」
「深愛的にはどう思う?」
「ど素人が手を出したらまずいけど、その手のプロがやると違ってくるからね。」
「………え?やっぱり、プロいたりするの?」
「海外の先住民となると、怪獣を神様扱いするからね………。」
「………ああ、確かに何か先住民って信心深いというか信仰深いというか…………。」
「私に組み込まれた遺伝子元の怪獣はモスラって言うんだけどさ。」
「うん。………え?モスってことは………蛾の怪獣?」
「そうだよ。」
「…………………へぇ。」
「モスラは南洋諸島にいるとかなんとかっていうのを聞いたことはある。」
「…………そうなの?え?じゃあ、今もいるってこと?」
「みたい。モスラの遺伝子を最先端の医療物資と引き換えに入手したって聞いたよ。」
「……………ひょっとして、先住民とですか?」
「ひょっとしてなくてもそうです。」
「……………まあ、そりゃ開発途上国の先住民程最先端の医療物資は欲しいよね………。
でもそれにつけこんで入手するなんて、タチが悪いのね。」
「それだけ切羽詰まってたんだよ、当時の防衛軍は。」
「じゃあさ、今も先住民怒っているのかな?」
「どうなんだろうな…………わからないよ。行ったこともないし。
行こうとは思わないし。」
「………そりゃ、複雑だよね………。
自分の元になったオリジナルのところに行くと、先住民に何て言われるか。」
「それなんだよ………。」
「深愛も色々大変なんだね。
……………ところで、何で海軍なの?モスラ、空を飛べるなら空軍じゃない?」
「私、海中戦もできるから。水中モードになれるんだよ。」
「嘘ぉ!?マジで!?」
「マジで。さすがに陸は専門外だけど、
空と海両用できるってことで海軍の方が良いだろうって父さんが。」
「…………あー、なるほどね…………。」
その時、ふわりと風が舞った。
「……………そろそろ戻ろうか。」
「そうだね。」


「…………待ってください!」
「貴女達に聞きたいことがあります!」


「………え?」
「へ?」



続く。

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