「アーヘンはね、アルトリウスが治めていた国だったの。
復讐の魔女、モルガナがアーヘンを憎み、策略で国家を転覆させようと謀ったけど
モルガナの娘にしてアルトリウスの姪、モルドレッドが
モルガナ自身から「産みたくて産んだんじゃない」と言われながらも、
彼女の復讐を果たすためだけの道具として扱われる日々に
いつしか自分を人間として扱われたいと願うようになった。
騎士として成長し、モルガナによってアーヘンに送り込まれるも
自然豊かな土地と活気溢れた国民を見て心境に変化が置き、
アルトリウスに出逢って人柄に触れてみたいと思うようになった。
ふとしたことから彼女と街中で出会い、自分の素性を話した。
両親と死に別れただけでなく、
病気で子供を産む事ができないアルトリウスにとって、
半分だけとはいえ血の繋がっている家族が
現れたことはとても嬉しかったらしく、
自分の子供として認知し、受け入れられることになった。
しかし、モルガナの実子というだけで
不信な目で見る関係者を黙らせるため、アルトリウスは
常時監視をつけさせることをすまなさそうに提案したが
モルドレッドは自身を家族として認知してくれたことと
子供として受け入れてくれただけでも嬉しいと述べた上で
その提案を受け入れた。
後にモルガナが敵軍を率いて攻め込んできた際には
アルトリウスから自陣の防衛を任される。
余命僅かな病持ちの体にムチを打って戦場に出るアルトリウスに対して、
モルガナは実母は自分が討つ、と進言するが
…………貴女は私の大事な子供。
私はこの命よりも大事なアーヘンの防衛を貴女に任せます。
貴女が自然豊かな土地と活気溢れる国民を見て、感化したことは
私にとってとても喜ばしいことなの。
と諭されて、国の防衛に徹した。
実際には道具として扱われてきた彼女がモルガナから
心無い言葉を言われればショックを受けて、
戦えなくなるのではないかという危惧と
親殺しという罪を背負わせたくないという願いから
あえてアーヘンの防衛を任せたの。
アルトリウスが国に帰郷した後は瀕死の重傷を負った彼女を
懸命に看護した。
その後、自身の死期を悟ったアルトリウスより王位継承権を与えられ、
彼女の死後、新たなアーヘンの王となった。

そして、アーヘンは緩やかに衰退していった。」

「………………そんなことがあったんですね…………。」

「………古代ベルカの小国にしては珍しく、緩やかに衰退した国だったな。」

「でもどうして、クローンなんか………。」
「多分だけど、氷帝としての力を復活させようとしたんでしょうね。
当然、それを知った私は違法研究所に乗り込んでこの子を保護したの。
引き取り先についても長期的な安全が取れてからじゃないと、保護してもらうわけにはいかないし。
………でも、この子に懐かれちゃってね。」
「だって、私を助けてくれたんだもん。そりゃ懐くって。」


「で、旦那の芳樹さんと話をしてこの子の親になろうって話になったの。」
「良かったね、アリスちゃん。暖かい家族に迎えられて。」
「うん!」




続く。