「………何でそんなことを聞くの?」

流司の問いに、あさぎは逆に聞き返した。

「………うちのおばあちゃんは確かに長生きしていたけど。単にそれだけよ?」

「…………正直に答えてくれよ。」

「…………だから、何でそんなことを聞くの?」

あさぎはマジョプリムから、正体を見破られた魔女は魔女ガエルになってしまうという呪いが
かつてあったことを聞いていた。

だが、まだ魔女が受け入れられるまでには時間がかかる。
そのため、人間界にやってきた魔女はひっそりと暮らしている……という現状も知っていた。

「…………………俺、魔法って言うのを信じているんだ。」


「………へぇ、意外。芸能界って時に重たい現実突き刺さる時があるから、リアリストが多いのかと思ってた。
ロマンチストなのね。」
「そうだよ、俺はロマンチストなんだ。
…………うちの曾ばあちゃんの話なんだけど。」

「うん。」

「………友達だと思っていた子が、魔女で。魔女ガエルになってしまったんだよ。
曾ばあちゃんがうっかり正体を知っちゃってさ。
でも、魔女になることを嫌がったんだ。………それっきり、その友達がどうなったのかはわからない。
曾ばあちゃんは最期の最期まで後悔してた。
友達を魔女ガエルにしてしまったまま、別れてしまったことを。」

「…………………魔女見習いになることを拒否したのね。まあ、当然と言えば当然か。
そうそうホイホイと魔女見習いから魔女になるのは難しいもの。」


「………あ、やっぱりその口ぶりからするとお前のばあちゃん、魔女だったんだ。」
「………はぁ。仕方がないわね………。そうよ、私のおばあちゃんは魔女だったの。」


「……魔女ガエルにはならないのか?」
「ならないわよ。魔女界で、
大規模なマジカルステージを行って魔女ガエルの呪いを解いたって聞いているから。」

「………マジカルステージ?」

「そ。大がかりな術式のことね。それを魔女界全体でやったの。
だから、魔女ガエルにはならない。安心して良いわ。」

「もしお前が魔女ガエルになったら、俺魔法使い見習いにならなきゃいけなかったってことか。」

「……嫌よ、芸能界と魔法使い界を背負って立つ魔法使い見習いなんて。
うっかり魔女界のこととかを喋るんじゃないかって心配するわ。」


「そりゃ、そうだ。」

あさぎの話に流司はあはは、と笑った。

「……でも私が魔女だってことは内緒にしておいて。」

「ああ、それは約束する。………曾ばあちゃんの償いは俺の償いでもあるからな。」

「それは曾おばあ様の償い。貴方の償いじゃないわ。」

「でも、背負う権利はあるだろう?外見だけで判断するのは良くないって散々言われているから。」
「………あ、そう。ところで。」



「……何?」

「ここに来たのなら、花の1つや2つ、買っていきなさい。
まさか、タダで帰れると思ってんの?」


「……現金な奴。」


続く。