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ACT1-(3)

「……悪いな、小鳥遊。急な話になってしまって。」
「謝らないでください、日番谷隊長。別に隊長が悪いわけじゃないんですから。」
十番隊の隊舎に戻り、荷造りをする咲良に日番谷は申し訳なさそうな顔をした。

「…………まぁ、京楽隊長の言いたいこともわかります。総隊長と一番隊の隊長の兼任は
仕事量が多いですから。
元柳斎先生がご健在なら、ありえないことですよ。」

「……………そうだな。」

十番隊の隊舎を後にし、咲良は荷物を持って一番隊の隊舎に向かった。

「………おい、見ろよ。新入りのくせに第三席だって?」

「…………よせよって、聞こえるだろ。」

「いいじゃないか、鬼道はからきしダメなのに斬魄刀が汎用性に優れているからって。」
「…………。」

死神達の陰口を無視しながら、咲良は隊舎の中に入る。

「…………あら、小鳥遊さん。いらっしゃい。待っていましたよ。」
一番隊の死神に出迎えられて、咲良はホッとした。

「京楽隊長から話は聞いていますよ。突然の異動で吃驚したでしょう?」
「ええ、まぁ。」

「……………それで、ついて早々申し訳ないんだけど貴女に任務があります。」

「………え?」

「空座町で虚が出現したというそうなの。他の死神に任せるべき案件なんだけど、
貴女じゃないとダメだって京楽隊長が。」


「………どういうことですか。」

「………その虚、貴女を轢き殺した犯人らしいわ。」

「……………!」



続く。

ACT1-(2)

「………………ふぅ。」

本日の仕事が終わり、咲良は十番隊の隊舎を歩いていた。

「……………あ、小鳥遊さん!」

同じ十番隊に所属している死神に声をかけられて、咲良は足を止めた。
「何?」
「京楽隊長がお呼びだそうです。大至急、一番隊まで来るようにと。」
「…………総隊長が?何で?」
「さぁ………………。」

「…………何かしらの仕事を頼むなら、日番谷隊長を通すはずなんだけどなぁ…………。」

そう言いながらも、咲良は一番隊に向かった。

一番隊の隊舎に向かい、咲良は扉を開けた。

「失礼します、小鳥遊咲良、入ります。」

部屋の扉を開けると、物凄い霊圧を感じて咲良は身震いした。

「(…………げ、護廷十三隊の隊長格全員揃ってんの…………?)」


護廷十三隊の隊長格が揃っている中、咲良は部屋の中に入る。
「やぁ、悪いね。仕事終わりに来てもらって。」

手をヒラヒラと振る京楽に、咲良はあ、いえ、と首を横に振った。


「…………あの、何の御用でしょうか?」
「平たく言うとね、十番隊から一番隊の第三席になってもらいたいんだ。」

「………え?」


「ゆくゆくは一番隊の隊長を任せようかと思っているんだ、どうかね?」
「…………ちょっと待ってください。
その言い方だと、総隊長と一番隊隊長を別々にしようかって聞こえるんですが。」

「ああ、理解が早くて助かるよ。実際そういうもんなんだ。
なんせ、仕事量が結構半端じゃない。
総隊長と一番隊の隊長を兼任から外そうと考えているんだけどね、なかなか適任者がいないんだよ。

でも君は仕事ぶりもいいし斬魄刀も悪くはない。悪い条件じゃないと思うんだけどね。」

「………はぁ…………ちなみに拒否権とかは?」
「ないよ。」
「………ですよね。」

「日番谷隊長にも話を通したんだけど、本人の意思を尊重したいということで納得してもらったよ。」
「………職権乱用とかしていないですよね?」
「ははは、まさか。」

「………………………。」

京楽の言葉に咲良はため息をつき、日番谷を見てから京楽を見た。

「………わかりました。異動の件については、了承致します。」
「ありがとう、悪いね。」

「……いえ、命令は大事ですから。
でも、隊長昇格試験についてはどうするんですか?」
「ああ、それについては時期が来たら、知らせるよ。まずは第三席の仕事をしてもらうのが先だし。」
「……………わかりました。」



続く。

ACT1-(1)

小鳥遊咲良は高校を卒業したばかりの、何処にでもいる少女だった。
だがある日、暴走する車から保育園児を庇い、命を落としてしまった。

死神の適正があることがわかり、尸魂界で死神としての修行を積むことになった。

「………………………はぁ、もう1度学校に行くなんてねぇ…………。」

真央霊術院を卒業した後、咲良は護廷十三隊のうちの十番隊に配属となった。
「………日番谷隊長、書類片付けておきました。」
「ああ、悪いな。………この間の書類、何処に行ったか知らないか?」
「あ、それでしたらファイリングしてますよ。すぐに出しますね。」

そういうと咲良はファイリングしている資料から、書類を取り出した。

「咲良ちゃん、気が利く〜!」
「………松本、お前も少しは小鳥遊を見習え。」
「………乱菊さん、きちんと仕事しないとダメですよ。」

「咲良ちゃん、隊長に似て真面目ねぇ。」
「……いや、貴女がサボり魔なだけでは?」
「う、それを言われるのはちょっと…………。」

「………松本。ところでお前、今日中に提出しなくちゃならない書類はどうした?」
「ええっと、それはですね………。」

「………隊長、代わりにやっておきました。目を通してくれませんか?」
「…………本当に気が利くな、小鳥遊は。いつも済まない。」
「いいえ、これぐらいしかできませんから。」

続く。

プロローグ

それは冷たい雨が降る日のことだった。

保育園児を庇い、暴走する車に衝突され、1人の少女の命が失われた。

少女が死ぬ間際に見たのは黒装束に身を包んだ者の姿だった。

それはあの世……尸魂界からの遣いだった。
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