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ACT1-(4)

「私は小鳥遊咲良と言います。こちらは私の初期刀にして近侍の蜂須賀虎徹です。」
「蜂須賀虎徹だ。俺を贋作と一緒にしないで欲しいな。」

「………ああ、蜂須賀虎徹。蜂須賀家に伝来した、真作の虎徹ですね。」
「あら、知っているのね。」
「それだけしか知りませんけど。」
「良かったじゃない、蜂須賀。」
咲良の言葉に蜂須賀はにこやかな笑みを浮かべた。


「……………審神者の方が私に何の用事ですか?」
「いえ、洋服姿の三日月が珍しかったから声をかけたの。
私のところにも三日月はいるけど、こういうところに来るなら内番姿かなって思って。」
「………内番?何、着物以外の服装持っていたの?」
「………俺は持たんが。」
「珍しいわね。貴女、本丸を持っていないの?」
「………あー、実は少々特殊な事情がありまして。」


咲良と蜂須賀が席に座ったのを確認し、満月は三日月に目配せをした。

「うむ、俺は話しても構わんぞ。事情を知っている者は1人でも多い方がいい。」
「………そっか、わかった。じゃあ、話すね。」

満月は抹茶ラテマキアートを一口飲むと事情を話した。

昨日、歩道を歩いていると三日月が落ちていたこと。そして彼の名を呼ぶと顕現したことを。



「………なるほどね。確かに珍しいし、ちょっとおかしいわね。
考えられる要因としては、審神者が顕現する前に本丸に何かあったのかしら。」

「………でもわからないんですよね、三日月もそこら辺の記憶がないから確認のしようがないし。」

「そうねぇ………今の状態で政府に連絡したら、研究対象になるから原因がわかるまでは
連絡しないのは賢いわね。」
「しかし、俺達みたいに正規の契約を結んでいないから、後々面倒事になるのは確かだ。」

「じゃあ、こうしましょう。私達の保護下に置くって言うのはどう?」
「保護下に?」
「ええ。審神者適性を持つ子が本丸外で刀剣男士を顕現させたことは報告するけど
何故本丸外に刀剣男士がいたのかは原因不明、それについては保護した本丸が調べるっていうのは。」

「私達にメリットはあるんですか?」
「デメリットは私達の管理下に置かれることだけど政府からの追求をかわし続けることはできるし、
色々と制約からも逃れられるし、悪い条件ではないと思うのだけれど。」
「…………そうだな、主は原因がわかるまでは本丸を持たんと言っているし
都合が良いかもしれぬ。」

「………まあ、三日月がそういうならそうかもね。」
「なら、決まりね。大丈夫、貴女達にとって都合の悪いことは政府に報告しないから、安心して。」



続く。

ACT1-(3)

歩道に落ちていた三日月を拾い、顕現させてから翌日になった。
満月は三日月を連れ、ショッピングモールに向かった。

「………ねぇ、あの人、カッコよくない?」
「隣にいる子、彼女かな?」

「…………ねぇ、三日月。」
「うん?」

「視線を逸らす術とか使えるの?」
「いや、使えんが。」
「ですよね。」

日用品や食料品の買い出しをするため、満月は三日月を連れてきたのだが
案の定目立っていた。

「………さっすが、天下五剣の中で最も美しいと称されるだけあって目立つねぇ、三日月。」
「褒めても何も出ないぞ?」
「………お、ここの珈琲屋さん、新作出ているんだ。三日月、飲んでいこう。」
「あいわかった。」

満月は珈琲屋を指差すと、三日月を店内に案内した。

「…………いらっしゃいませ。」
初老の男性が2人をテーブルに案内する。

「ご注文をどうぞ。」

「抹茶ラテマキアートを2つください。」
「かしこまりました。」

「ほう、抹茶ラテマキアートとは何だ?」
「見ればわかるし、飲めば美味しいよ。ここ、評判が良いから。
三日月のお眼鏡に敵うと良いんだけど。
…………あ、お菓子も食べる?」


「うむ、頂こう。」


初めて口にする抹茶ラテマキアートと、抹茶風味のお菓子に三日月は舌鼓を打った。



「………うむ、確かに主の言う通り、これは美味いな。」
「でしょう?」


満月と三日月がカフェタイムを楽しんでいると、1組の男女が近づいてきた。


「………失礼、少々よろしいかしら?」



続く。

ACT1-(2)

審神者とは眠っている物の思い、心を目覚めさせ、
自ら戦う力を与え、振るわせる技を持つ者。

その技によって生み出されたのが、
「刀剣男士」という付喪神、らしい。


「…………え、ってことは私、審神者としての才能があるってこと?」
「うむ。理解が早くて助かるぞ。つまりはそういうことだな。」


一戸建て住宅に帰ってきた満月は三日月宗近に茶を勧め、彼の話を聞いた。

「そっか。住むところはあるし、ご飯も作るのも得意だし、服についてはまぁ………買えばいいかな。
とにかく、これからよろしくね、三日月。」
「うむ、よろしく頼まれるぞ、主よ。」

「………でも時の政府に連絡するのは面倒だな。」
「何故だ?」

「だって、色々手続きとかすることになるじゃん。
審神者になるための。
それにフツー刀剣男士って本丸ってところで鍛刀するか出陣先で入手するかのどっちかじゃない。
何の変哲もない道路で、落ちていたのは何で?」

「………俺にもよくわからんのだ。」

「………え?わからない?」
「気づけば、あそこにいた。…………ただ、それだけだ。」
「…………………そうなんだ。じゃあ、仕方がないね。記憶を失っているわけでもなさそうだし…………。」
「すまんな、主よ。」
「……………うーん、三日月が別に悪いってわけじゃないんだけどなぁ…………。
まあ、いいや。理由が明らかになるまでは、政府に連絡しないということで。」
「あい分かった。」

「………というわけで、三日月。」
「何だ?」
「…………ちょっとスリーサイズ測るね。洋服、ネットで買うから。」
「はっはっは、良いぞ良いぞ、触ってよし。」


「………マイペースすぎじゃね?」

「11世紀の末に生まれた。要するにじじいさ。」
「………………ああ、そっか。おじいちゃんと孫になるよね…………ってそういう話じゃなくて!!」


続く。

ACT1-(1)

「…………………………凄い綺麗。」
東京・上野にある東京博物館にて、姫宮満月は鎮座されている刀を見た。
地方都市である桜庭市から東京観光にやってきた満月は、帰郷する前に国宝展を見に来た。
刃が剥き出しの1振りの刀。
その名は「三日月宗近」と言って天下五剣の中でも最も美しいとされる刀らしい。
「………あ、そろそろ新幹線に乗らないと……………。」
もう少し眺めていたかったが、新幹線に乗る時刻が迫ってきていたため、
満月は博物館を後にした。

スマートフォンを見ると両親からLINEが来ていた。
海外出張をしている両親は仕事の関係でなかなか日本に帰ってこれない。

「…………『あまり無理をしないで、三食きっちり食べてくださいね』っと。」
満月はLINEでそう送ると、スマートフォンを鞄の中に入れた。

予定よりも早く東京駅に着いた満月は新幹線に乗り、桜庭市に帰ってきた。

桜庭市は四方を桜の木に囲まれた様子がまるで庭のようだと称されたことから、
そう名付けられた都市だ。

桜庭駅を出た満月はすっかり暗くなった道を1人歩いた。

「…………………………………何か、寂しいなぁ。」

1人、ポツリと呟き満月はふと目の前を見た。

「………………!?」


歩道の真ん中にぽつん、と1振りの刀が落ちていた。

三日月の紋様が入った柄に収まった刀が1振り。


「…………べ…………。」

「………え?」

「…………………よ…………べ…………。」

何処からともなく声が聞こえる。
だが自分以外に人間はいない。

「………ひょっとして、この刀が………?」


「……………俺の名を呼べ。」

「…………名、前…………?」

スゥ、と鞘から刀が独りでに抜かれ、その刀身をマジマジと見た目を見開いた。



「………打ち除けが多い……………。まさか、三日月宗近………?」

満月が刀の名を口にした途端、桜吹雪が舞った。




「………三日月宗近。打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。よろしく頼む。」



続く。

プロローグ

西暦2205年。
歴史の改変を目論む「歴史修正主義者」によって過去への攻撃が始まった。
時の政府はそれを阻止するため、「審神者」なる者を各時代へと送りだす。
審神者なる者とは眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる、
技を持つ者。
その技によって生み出された付喪神「刀剣男士」と共に審神者なる者は過去へ飛ぶ………。


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