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無題

女が女を非難するとき、そこには往々にして妬みが隠れている。自分が攻撃されたわけでもないのに、そこにあるというだけで存在そのものにケチをつけたり、価値観を否定したりするのは、明らかに羨望からくるものである。訳もなくなにかを非難したくなったら、それはもしかすると自分の潜在意識が欲しているものなのかもしれない。

そう考えると、醜い自分の感情の起伏にも少しまともらしい理由がつけられて安心する。

他人を見下すその心根、そのものが一番下衆だ、と言ってやりたい。

くそあちー

空気が肌にまとわりつく。膜の中に包まれる。あつい、あつい。夕刻、蝉は泣き止んだ。音のない世界でからんと氷のとけるおと。何も見ないふりをしているのは幸福で、問題の先伸ばしにも別に嫌悪感を抱くわけではない。黒くした髪も似合っていて、私は今日も可愛いと安堵する。水の音が聞きたいのよ。流れる水の音を聞きながら眠りたい。川の水は生臭い悪臭。伸ばした髪の先は三年前のものだと美容師は言った。家の中、空気が淀んでいるわよ。誰もいないのに話し掛けるみたいに口を開く。外で犬がきゃんと吠えた。マンションの近くに立ち葵の花が咲いていて、今年も目にすることができたと喜んでいる。結婚、なんて面倒ね。血の交わるという儀式がいや。家系図なんておぞましい絵画。言葉がひとりでに溢れてくるんです。ただし生産しているわけではない。排泄行為である。お風呂に入りますね。わたし、今まで誰としゃべってたんだっけ?

青紫色の朝顔、蝉の声、アスファルトを照らす真っ白な日差し。夏がきた。夏がきた。空っぽの体いっぱいに夏が満ちる。何か楽しいことが起きるといいな。

あのとき、

父親に愛されていないということに気づいたとき、私はどう思ったのだろうか。ずっと気づかないふりをしていたのに、母の口からその事実が当たり前のように飛び出したとき、私はなんと答えたのだろうか。きっといつもみたいになに食わぬ顔をして平静を装って「へえ、そう、ふぅーん」なんて言ったに違いない。でも、あのとき、たしかに私は悲しかったのだ。顔も覚えていないとは言え、実の父親に愛されていなかったという事実を、こともあろうに母親から聞かされて、私は大変悲しかった。この人は何を考えて私にそんなことを言うのだろう。そう思って、思わずその場にしゃがみこんだのだった。そんな母親とも折り合いがつかない今、いったい手放しで私を愛してくれる人なんて存在するのだろうか。彼はどこまで私を許容してくれるのだろうか。どこまで私の味方でいてくれるのだろうか。みんなのほしい言葉を私は差し出してあげるのに、私のほしい言葉をくれる人はどこにもいない。
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歯医者の思い出

その虫歯の進行している一本は、まだ私が中学生だった頃に神経を引き抜いたところで、大きなディスプレイに映されたレントゲン写真には、そのときに埋め込んだ小さなボルトが白い影となって異様な存在感を放っていた。

それを見た瞬間に、あの頃の生きづらさをまざまざとこの身に思い出して耳の奥でごうっと風が鳴いた。

あの小さな町の記憶で思い出したいものなんて本当に一つもないのかもしれない。

そんな風にしか生きられなかった自分を恥じる。思い浮かぶのは母親への謝罪の言葉ばかりで、もっと柔らかで輝いていて暖かな、そんな思い出を作れなかった自分と、そんな思い出を心に浮かべられない自分を、どうしようもなく許せなかった。

私だけが幸せで、自分はそれを良しとしているのだろうか。
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プロフィール
kさんのプロフィール
性 別 女性
系 統 アキバ系
血液型 O型