愛されて育たなかったこどもたちは
大きくなってからも
人を愛することができないらしい
それから自分を愛することも
できないらしい
ノートを用意して
毎日かかさず
今日がんばったこと
自分がえらかったことを
書き並べていくことが
その改善策になりえると
だれかが言った
こんなブログを見に来てくれるひとがいて
たしか10年以上もまえに
そのなかのひとりのひとが
わたしにそう言ったのを覚えている
それからわたしは
周りの
愛することが上手なお母さんたちを
慕うようになった
慕っていると
我が子のようにとはいかないけれど
すこし、特別なかんじで
わたしのことを愛したり
手をかけてくれたりするようなきがした
そのたびにわたしは満たされた
優しい言葉や行動や
合わせてくれる目にもなみだが出た
このひとが自分の
お母さんだったらよかったのになと思った
それとともに
その子供にあたる友達に
すごく嫉妬したのをおぼえている
嫉妬というか
ずるいなって
愛されて育ててもらってよかったねって
思ったよ
もう愛してもらえないわたしは
パートナーにそれをもとめるしかなくて
頭を撫でてもらったり
すごいねってほめてもらったり
なにかをしてもらうことが
心を治してくれるきがした
こどもがだいすきだけど
いつかは産んで育てたいけど
わたしにそんなことが出来るのかなって
ずっと不安しかない
ゆらがない
浮かれない
ほだされない
そう、こころにきめてる
会えたらこんなに
うれしいけれど
芯まで溶けてはいけない
いろんな人に会うけれど
すきと言われたりもするけれど
体だけもとめられたりもするけれど
どうしてわたしは
君しか見えないし
君しか大事に思えないんだろう
君しか
わたしのこころを動かせない
不思議だよね
21年前に君は
同じ街に生まれてきた
同じ病院で
会いたいって言われて
会いました
久しぶりってわけでもなくて
たったの8日ぶりなのに
すごく久しぶりに感じたことは
内緒にした
きみは会えない時間が
とてもさみしかったみたいで
久しぶりにかんじるって
素直に言ってたのが可愛く思えた
さみしかった?って
ふわふわの髪の毛をさわったら
いつもはすごく嫌がるのに
猫とか犬みたいに
わたしの手に頭をこすりつけてきて
嫌じゃないの?髪の毛触られるの、
って聞いたら
うん、、ってまだすりすりしてた
慣れたの?
って聞いたら
いまはいいのって言うから
可愛い、って言った
きみから手を握ってきた
そんなこと、あんまりしないのにね
会ってない間、だれかと会ったりしてた?
って聞いたら
だれとも会ってないよって言うのが
まじだったから
このこは割と一途なんだなっておもった
そのあとで
わたしが誰とも触れ合ってないかを
こっそり確認してたのも
可愛かった
心配になったりするんだね
余裕がなかったりもするんだね
きみがほんとは人間らしくて
ちゃんとよわいところもあって
よかったなって
おなじなんだなって
思ってしまった
それからぎゅってした
会いたかったよって聞こえた
あの日とつぜん
会うのは最後って言ったこと
たくさん後悔してくれ
それからわたしのこともっと
もっと
愛おしくて苦しくてしかたなくなって
写真を見ても
ぜんぶ嘘みたい
わたしは
ほんとうにきれいに
記憶を飛ばす力がある
ただ、君に言われた
最後っていうそのことばだけが
のこってしまった
それまできみとはなしたこと
おしえてもらったこと
ほとんど記憶がない
どういう意味で最後って言ったのか
説明してくれたらしいけど
ほんとに覚えていない
会いたくないんだろう
わたしと会うメリットがないんだろう
もう飽きたんだろう
最後って言葉には
そんなふうな意味合いがあるとおもった
それから君は
何もなかったみたいに
不意に連絡してきた
意味がわからなかったけど
とりあえず
1日寝かせてへんじをした
それも
なんて話したのか
ちゃんと覚えてないけど
会いたくないんじゃないの?
って聞いたら
会いたくないわけじゃないって言われた
なんか腑に落ちなくて
最後って言われたらわたしはもう会えないよ、
って言った
今後もし
会いたいって君が言うなら
自己責任で会ってもいいかなとおもうけど
わたしからは
会いたいなんて言わないし
会う約束なんてしない
最後って言った言葉に
その重みに
責任をもってください
日本列島の一部で
梅雨が明けたらしい
去年より17日もはやいことだと言うけど
土砂がくずれるまえに
明けて欲しかった、です
生きていたら
だれしもいつどうなるかわからない
何に巻き込まれるかわからない
突然消えたくなるようなできごとが
起こるかもしれない
きみが言ってた
未来のことって
それを考えることって
とてもいいことだとおもう
だけどわたしは
未来よりも今を大事にして
その積み重ねで未来をよくしたいよ
今を大事に生きることは
あしたのしあわせに繋がるよ
君が明日わらってくれるように
君のことを大事にしたいって
毎日、いつでも
そう思っていたんだよ
日帰り旅行は
ほんとに楽しかった
行きたかったところ
全部連れて行ってくれた
帰ったらお互い用事をすませて
2時間後くらいにまた集合した
最後だって言った行きしなの話は
それから何もしなかった
最後って君が言ってから
はじめてわたしたちの空気が
どこか噛み合わなくなったこと
わかりやすくて
おかしかった
君が言ったのに
君まで苦しくなるのも
おかしかった
同じ空間で一緒にいるけど
君が大事な用で
電話をしなくちゃいけなくて
わたしはずっとそばにいたら
小声で
ちょっと出て行ってもらってもいい?
って
申し訳なさそうに君が言った
内容は知っていたから
あ、そうだよなって
きづいてあげられなかったなって
こっちが申し訳なくなって
だけどこの家はせまくて
部屋はひとつしかないから
部屋を、じゃなくて
家から出たほうがいいよなって
寝巻きのままわたし
すぐに靴を履いて
外へ飛び出した
30分したら終わるって言ってたから
散歩でもしとこう
ちょうど外の空気が吸いたかった
そう思って飛び出した夜道なのに
君と離れてから
吸い込んだ夜の空気は
やさしくて
ここちよくて
君と離れたほうが落ち着くことが
とてもかなしく思えた
さっき出て行ってと言われたことは
ほんとうにどうでもよかった
最後って言葉がやっぱり
いちばん痛いところにつき刺さって
抜けなかった
なみだがぽろぽろこぼれた
お別れがさみしいんじゃなくて
最後って言われたことが
その言葉が
とてもさみしくて
かなしかった
朝、最後と言われたとき
いま言うつもりなかったけどって
補足してたけど
言いたくなったから
言ったんだね
最後にしたかったから
そう言ったんだよね
わたしもね
最後にしたい
君の言う最後を
もう受け入れたから
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