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妄想小噺(特に意味はない文)









なくなってしまった貴方にまた歌ってほしいと願う。


イヤフォンの奥から聴こえる歌声は変化することはない。沈みも浮かびもしない。無機質に思えて寂しい。
貴方がいない世界で、貴方の声ばかり世界を回る。



それがたまらなく切ない。寂しい。










なくなってしまった貴方に会いたいと望む。



かたく閉ざされた瞼。血の気の失せた頬。
煙になって上がる貴方を見たはずなのに。
壊れたみたいに泣きじゃくったのに。


まだ何も受け入れていない。




貴方はどこに隠れているの?











さっていった貴方を取り戻したいと叫ぶ。


茫然と眺めたメール。
直ぐに貴方のもとに走ればよかっただろうか。
馬鹿だと詰って、胸を叩いて行かないで縋ればよかっただろうか。



でも、最後には――





絶望的な気持ちで抱き締めて泣いただろう。







妄想小噺






誰とは敢えて言いません(笑)




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妄想小噺

ある昼下がりの何てことない日常。









*****







君の短く切り揃えられた黒髪を見ると、自然と笑顔が零れた。


「髪、切ったんだ」

「あ、うん。邪魔でさ」

前髪を一房掴み、自分の髪を見ながら「おかしいかなぁ…」と眉を下げる君により笑顔は深くなった。


「いや、似合ってるよ。とても」

「そ?…へへへ」


頬をちょっぴり染めて、ふんわりと咲くように君が笑う。まるで彼の周りだけ空気が柔らかくなったようだ。
そっと手を伸ばして、その艶やかな黒髪を撫でる。
脱色を繰り返してパサパサな俺のそれとは異なり、一度も染めたことのない君の髪は、指の間を簡単にすり抜けて行く。



「綺麗な黒髪」


「そっかなぁ…床屋のおっちゃんには剛毛だって言われたよ」

「そう?俺の髪なんかより、うんと綺麗だよ」

「えぇー。真千の髪の方が綺麗じゃん。金髪かっくいいー」

計算も何もなく、あっけらかんと笑って君が言う。


「…染めてパサパサだ」

「そうかー?サラサラじゃん」


君が今度は俺の髪を撫でる。


端から見れば、妙な光景だろう。
大の男が向かい合わせで互いの髪を撫でている。なんてシュール。
でも、周りの眼なんてどうでも良いじゃないか。




――本人達は幸せなんだから。






「ふはっ。真千、かお真っ赤」




そう笑った君の顔も俺に負けないくらい赤かった。




end


妄想小咄(ボツ寮母くん)

寮母くんと王道くんのボツネタ。












さてさて。初夏です。
定期試験もやっと終わり、そろそろ夏に向けて本気で稼ぐかと思っていた時だ。
季節外れも外れな転校生がやってきた。



「俺、八重樫彼方!よろしくな!」


「……」


「オッス!俺、孫●空!」並みのテンションで自己紹介をした転校生。それを呆然と見物するクラスメート。
孫●空のテンションに呆然としている訳ではない。その恰好に呆然としているのだ。
黒髪は今まで一度も梳いたことが無いんじゃないかってくらいにもじゃもじゃだ。鳥の巣もびっくりだ。

そして、流行りの取り入れたのか、それともただ単に無頓着なのか。黒縁の大きな眼鏡。それで顔の半分は隠れている。本人にとっても大きいらしく、ずり落ちるそれを何度も直している。

髪と眼鏡で顔の大半は隠れてしまって、口元でしか顔の動きが分からない。
ぴーちくぱーちくと囀ずる周りのクラスメートにキャンキャンと噛みついている。


「……」


じぃっと転校生を見たが、直ぐに興味は失せた。
俺はいそいそと電卓と、他人が見ても分からない文字の羅列を取り出す。


(さぁて、今日の売り上げはっと)


俺が今日の売り上げの計算に没頭している間に、転校生はうちのクラスの人気者達をことごとく手込めにしていたようだった。






まぁ、俺には一切関係ないけれど。






end

一切絡むスキが無かった…


リハビリ小咄









壁際に追い込む。


怯えと戸惑いが入り雑じった双眼が俺を映す。


分かってない。

分かっちゃあない。


彼の顔を挟み込むように乱暴に両手をつく。
びくり、と彼の身体が跳ねる。
少し涙に滲んだ瞳。
俺しか映っていない瞳。

それに満足する自分に呆れてしまう。なんて醜い独占欲。

困惑を口にしようと、薄く開いたその唇に被りついた。
堅く閉ざされた歯列をなぞって、ナカにある柔らかな舌を堪能する。
粗くなる吐息。
甘さを含む呼吸。
彼の全てが俺に向かう。

彼の立てられた頑なな膝を割り開き、自分の足を差し込む。

身体の境界線が分からなくなるくらい彼に密着する。
薄く、脆い彼の身体を取り込んでしまおうと貪欲な俺が言う。
誰もそれに反対する者はいなかった。
壁についていた両手で彼を絡め取る。
俺の腕の中で彼が徐々に咲き誇って行く。まるで、それは月下しか咲かない花のように儚い。けれど、人を惑わす。

つぅ、と彼の頬から首筋にかけて唾液が伝う。




ご く り




その肢体に飢えた獣のように喉を鳴らす。





――ああ、本当に分かっていない。



分かっちゃあ、ない。







俺は、自分の濡れた唇を舐めて、迷わず彼の首筋に噛みついた。






end



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