パーマあてたんだけど前髪が花輪君みたいだって職場の皆から不評
人の髪をつべこべ言うんじゃない
友人達と遊んだとき
前髪の件に誰一人ツッコミいれないから
この前髪やっぱり花輪君じゃないんだと思って
「ご覧の通りパーマあてたんだけど職場の皆に花輪君って言われちゃってさ」
そんなことないよね、って続けようとしたら
友人達は爆笑しながら
「たしかに!!」
「ヘ〜〜イ!ベイビ〜〜〜!!セニョ〜ル!」
とか言いだした
誰がセニョールだ
花輪君ごめんね私のせいで変な前髪みたいに
花輪君はその前髪似合ってるよ
奈良の友人が福岡に引っ越すことになったから、みんなでサプライズいってらっしゃいパーティしようよってことになった
夜ご飯イタリアンの店とケーキ予約して準備してたら
内緒にし過ぎた結果その子夕方に帰った
用事があったんだって
とりあえずプレゼントは渡せたしよかったけど腹よじれるくらい笑ったわ
逆サプライズだね
こういうとき花輪君なら失敗せず素敵なサプライズしてくれるはず
お洒落なホテルの最上階で煌めく夜景をバックに
ギターをしんみり弾きながら歌を歌ってくれる
作詞作曲・花輪和彦
丸尾君が感動して泣いてしまったら花輪君は演奏をやめて丸尾君の傍に寄り添い顔を覗きこみ眼鏡をはずしてくれて涙を優しく指でぬぐうわけやん
そして泣かないでベイビー愛してると囁いて丸尾君にキスするってわけよ
社会人になった丸尾君と花輪君の妄想が止まるとこを知らん
丸尾君は普通の会社員で花輪君は大手のなんらかの社長やん
ある日取引先のお偉いさんとお食事に行くことになった際に偶然出会うって寸法やん
花輪君が丸尾君の質素な一人暮らしの部屋にあがりこんで幸せな生活をおくってほしい
丸尾君がうちは窮屈でしょう?って聞いたら
末男がこんなに近いなんて嬉しいよベイビーなどと言いながら優しく抱き締めるわけやん
丸尾君は驚いて「ヒェ〜」とか叫びながら眼鏡ずり落とすよね
そんな丸尾君と反応がおもしろくて花輪君はクスクス笑って丸尾君のピカソの様に芸術的な目を見つめながらキスするやん??
二人がもしちょっとしたすれ違いで喧嘩してしまい丸尾君が家から飛び出してしまったら
騒ぎを聞き付けたヒデじぃが
家の者総出で探させましょうと提案するんだけど花輪君は
「いいんだ、ヒデじぃ
彼は僕の、僕だけの力で探したい。」
って断るわけ
ヒデじぃは(立派になられましたな…坊っちゃん…)と感動を覚える
土砂降りの雨の中花輪君は丸尾君を探し回り
公園の土管的遊具内で座り込み膝を抱えて雨宿りしている丸尾君を見つけるわけ
花輪君は優しく微笑んで風邪をひいてしまう、帰ろうって丸尾君を抱き締める
丸尾君は泣きそうになりながら
「ズバリ、花輪君…びしょ濡れでしょう」って震える声で言うやん
花輪は「このくらい平気さ!さぁ帰ろう」
あっけらかんと笑い丸尾の手を握りしめた
いつもなら丸尾が照れてしまい手を繋いでもすぐに放してしまうのだが
二人の冷たい体を繋ぐこの暖かい手のひらを放してしまうなんてなんだかできなくて
丸尾は初めてその手を強く握り返した
「ズバリ、帰ったらお風呂にはいりましょう」
提案する丸尾に花輪は
「末男が一緒にはいってくれるならね」
そう言っていたずらっぽく笑う
いつもなら末男が即答で「ズバリありえないでしょう」という筈だが
丸尾はうつむき、何やら考えこんでいる
花輪がどうしたのか心配になり顔をのぞきこむと
丸尾は蚊の鳴くように小さな声で
「いいでしょう」
そう言った
先ほどの自分の発言を花輪は瞬時に思い出し
「本当かい!ベイビー!?」
と満面の笑みだ
「私はベイビーなどという年ではありません」
丸尾は呆れながらも
その頬は赤く、どうやら照れ隠しのようである
「そうとなれば善は急げさ、ベイビー!」
花輪は、丸尾の手をもう一度強く握りしめ駆け出した
丸尾ももう一度「自分はベイビーなどという年では無い」と主張しようとしたが花輪があまりにも強く手を握り締めるから、とうとう言葉にならなかった
二人が立ち去った公園にはただ
雨の音だけが優しく残った
〜完〜