夢にあの子が出てきました。
まだ黒髪で、髪もおろしていましたが、たしかにあの娘でした。
T市の家にいました。
私と彼女はふたりきりで、何かから逃れて生活しているようでした。
洗面所にはそれぞれの歯ブラシがありました。
彼女は何故か洗面台に背を向け、小さく座って歯をみがいていました。
やがて追手がかかり、私たちは追い詰められました。
迷彩柄の服を着た目が異常な男と目があいました。
居間に逃げると、男か女かもよくわからない細い身が襲い掛かってきました。
私は手にした小さな拳銃で1発だけ撃ちました。
針のように細い弾丸が顔の真ん中に当たりました。
しかし奴は動きを止めず、あの娘に手を伸ばしました。
きっと、撃ってはいけなかったのでしょう。
目の前の敵を排除するより前に、私は彼女の手を取るべきだったのでしょう。
なんとなくそう思ったところで目が覚めました。
ただそれだけでした。
微かに香った彼女の匂いだけが、私の記憶に残り続けるのです。