桜蘂降る

○桜蘂降る一冊の帰り道
○桜蘂降るコーヒーにあしたかな
○桜蘂降る本屋帰りのお気に入り
○桜蘂降る本屋帰りや坂の上
○桜蘂降るきのうのあった嫌なこと
○行く人や探し物あり桜蘂降る
○疲れた日に探し物かな桜蘂降る
○PCに捜し物あり桜蘂降る
○コーヒーに頬杖ついて桜蘂降る
○プレゼンに気になる人や桜蘂降る
○先生と呼び止められて桜蘂降る
○東京の身近な場所に桜蘂降る
○ペアリング犬の散歩や桜蘂降る
○思い出の猫の写真や桜蘂降る
○桜蘂降る風大空の下で
○桜蘂降るや風大空の下
○桜蘂降るどら焼きの帰り道
○桜蘂降る花屋のまえを通りけり
○桜蘂降るブルーネイルやおすそわけ
○桜蘂降る古いアパートきみの部屋
○トロフィーに桜蘂降る教師かな
○桜蘂降るなじみのあんパン屋のまえ
○桜蘂降るなじみの店やあんパン屋
○桜蘂降る包まれながら谷中かな
○桜蘂降る西新井大師の人と結婚したと聞く
○桜蘂降る西新井大師の人と結婚したと聞く日かな
○近しき人や何もわからづ桜蘂降る

残花

○残桜に教師のとめる廊下かな
○長廊下とめる教師や残る花
○残桜にひとり教師や体育館
○図書館に我の忘れし残る花
○図書館にたれ残したる桜かな
○残桜に部室の鍵や科学室
○スポーツの仲間や胸に残る花
○彼とまだ親しくなれづ名残の花
○残桜に主の消えた顕微鏡
○水槽に先輩とあり残る花
○自転車に化石や入れて残る花
○標本に並べて出たる残る花
○自転車に後輩とゆき残る花
○先輩やそのままと書き残る花
○靴箱に押し花ありし残る花
○近し人何もわからず残る花

花疲れ

○よろこびのブレーキかけづ花疲れ
○夕電車外に風あり花疲れ
○東京の土産となりし花疲れ



○願はくはその年となれ花の雨
○一月の桜のこころ君を追ふ
○三門の余白となりし桜かな
○都落つ桜の花の烏帽子かな
○武士のみくじに花を呑むべきや
○みくじ箱潮の香りに桜かな
○天神の梅や桜も牛の屋根
○けふの月けふの桜や伊勢語
○小坊主やあとに桜を川柳
○都々逸の歌を枕に桜かな
○葛飾と名乗りあの世の桜かな
○アイルランド過ぎて日本の桜かな
○父と見る桜瞳に二国かな
○父の国アイルランドや桜咲く



◯踏むたびに都は花の盛かな



◯行く人や桜をこぼすばかりけり
○フレームにのせてあなたと桜かな


○艶やかに桜の下を通りけり
○山桜先帝の声聞こえたり
○山桜消えたる花の古木かな
○山桜精霊消えて音もなく
○花の宴袖あでやかにながれたり
○花人の着物の袖もながれけり
○花茶屋に見知りの人や帰りけり
○呼び止めて昔の人や山桜
○さびさびと憂いの中を桜人
○清き空水のながれに桜かな
○清き空に命をかざす桜かな
○音もなく妖しくかざす桜かな
○なにかしらいわれやあるか山桜
○約束の駅に待ちたる遅桜
○約束の駅にもたるる遅桜
○枝垂れたる桜の前に女学生
○いま行こう電車にゆれる桜かな
○忘れられない島々生きる桜かな
○通り抜け都会の中に桜かな
○乳液を下げて近くに桜かな
○空海に君のとけあう桜かな
○海空に君のとけあう桜かな
○海と君のとけあう空に桜かな
○君を待つ空にとけあう桜かな
○ひとり宿に抱かれるように桜かな
○ただ波をしづかに目指す桜かな
○ただ波をしづかに君を桜かな
○坂道をたのしむ君と桜かな
○坂道と手を振る君に桜かな
○たつぷりのあんこをのせて桜かな
○東京も昔ながらの桜かな
○20時の東京もまた桜かな
○大石もまたやつてきて桜かな
○とりあえずみくじを引いて桜かな
○田園にひときは目立つ桜かな
○田園にてつぺん白き桜かな
○見なれたる猫の尻にも桜かな
○さよならと桜の花を目指したり
○寄り添いて暮らしてをるは桜かな

散る桜

○世の絶えて映るはけふの散る桜


◯坂道を下り上るや糸桜
◯不二山にこの花咲くや桜かな
◯不二山にこの花咲くは桜かな



○けふばかりひとり暮らしの桜かな
○菰に野に花は桜の遊行かな
○物申す夢や熊野の山桜
○四方より風になりける桜かな
○夜のふけてわづらふ果の桜かな
○野の露の消えて姉妹の桜かな
○義仲の理をしる山桜
○玉の床われて泪の桜かな
○かたなくも讃岐の院の桜かな
○一本の暮れて桜や崇徳院
○吹く風に枯れたる桜立ちにけり
○山桜もとにこころを寄せにけり
○怨みつつ桜やわれを愛すなり
○短歌よむ堀に桜や人も無く
○其の下に現れたるや山桜
○水晶の瞳の中の桜かな
○制服の涙ぐみさえ桜かな
○田の神のひとえに咲ける山桜
○少年や走れメロスと桜咲く
○君としてみればとめける桜かな
○いつとなくいのちの中の桜かな
○撮影のフィルムに残る桜かな
○紅色や濃くくれないの山桜
○しづかさのそぞろ手を繋ぐ桜かな



○総門の招く雌猫の桜かな
○山犬や夜桜に酔ふ人の群
○かぐや姫さくらも知らぬ月の舟
○弔いの髪に桜の地蔵かな
○古拙なる微笑の膝に桜かな
○極楽の堂に降りつむ山桜
◯開きたる弥陀の膝にも桜かな
◯笠あげて懐かし人に桜かな
◯手あげて懐かし人や花盛り
◯介助犬鼻に桜のお八つかな
◯蝦夷百里なんとゆかしき花の雲
◯夜桜や尾張名古屋の城のこと

花見

○日ごろより道のわづかに花見かな
○開くらるる門にしだるる花見かな
◯開くらるる門に人見る花見かな

花見

○すぐにある日常のほら花の宴
○東北の歌も聞こえて花見かな
○静かなるやかんの声や花の宿
○ゆるやかに香る街角さくら狩




○顔青く桜おもへるカツオドリ

落花

○吹く風や花も散るなり鰹鳥
○ついばみて緑はじめの残る花



○東北の桜のよさやあはれなり
○みちのくの桜の良さやあはれなり
○みちのくの雪や桜をたづねけり
○松島や夢も桜に染まりけり
○単線のパンタグラフや薙ぐ桜
○山間のかげや桜の無人駅
○鉄橋にうつす桜のラブレター
○自販機に君とうつろふ桜かな
○菜畑に桜や君のラブレター
○濃色の目の前せまる桜かな
○学生服にじむレールや散る桜
○徒歩でゆく桜の声や聞きにけり
○田舎着に桜の枝や遥かまで
○東北の友の桜や雪の山
○生まれたる君の桜や散る桜
○君の手の涙のあとや散る桜
○秋田には枝垂桜や似合いけり
○青森の桜の女性よきれいなり
○泣く女性や桜は明日につづきけり
○傷つけて光の渦の桜かな
○貞任の燃やす命や糸桜
○胸を張る江戸のおんなの桜かな
○千年の君はひとりの桜哉
○うつくしく花や声染む江戸の女性
○一本の桜の花や下死なん
○雪山に桜や風の競い合う
○なによりも雪に桜やかなふまひ
○友も無く桜やけふも池に立
○静脈のごとき桜や雪の山
○西行の立去るたれか桜かな
○並々ときのふの私桜かな
○そのままの見晴らしの良き桜かな
○名も知らぬ桜涙に吹かれけり
○大振の桜の中やかけてをる
○明滅の空に鋼の桜散る
○花よ見よいのちや空に盛り上る

icecreammoonmoon.seesaa.net



○幾年の桜並木となりにけり
○いつの日の消しゴムの裏桜かな
○甘酸ぱい桜の下や北千住
○部室より鉄の格子の桜かな
○原発の空につづきし桜かな
○敷石の上に逃げだす桜かな
○宝石の街をボタンの桜かな
○下町に慣れ親しんで桜かな
○三角の時を超えたる桜かな
○野良猫のしろに出合える桜かな

仙台のラジオは★大石の記事をみて話して満寿代ー^^

11:35

アハハハハハハハハハ愛菜な困ってるだらうなーアハハハハハハハハハ15:29 ほあラブ〓★いいから( 笑)、愛菜なラブ〓←ごめんねこw 【期間限定、春】

春服

○母の手を放れていくや春の服

春愁

○教室の波紋しずかや春愁
○春愁や目には聞こえぬ水の音
○春愁三日月同士やカフェの隅
○春愁や大正ロマンの色硝子
○春愁や合点のいくも髪切らず
○春愁や騙しのテクの中毒性
○春愁や必勝法もあらぬけり
○春愁やカラフルになり街のいろ

春意

○春意とや学生服の市民なり
○春意なり植物園の亜熱帯
○春意とや女子学生の指の腹
○イベントの図書室しばし春心
○人生や緑化に尽くし春心
○温室を知り声かくる春意かな
○春意知る助教の朝の遅きなり
○飲食の持込み自由春心

春愁

○春愁にしだれて深き蕾かな
○春愁に流れは糸の故郷かな

麗か

○うららかにほどよき波の戻りをり
○うららかやほどよき波の待ちてをり
○麗かや風にめくれてプリント地
○麗かやオール電化の行儀良き
○麗かに電気自動車しづかなり
○麗かや壁一面のスニーカー
○麗かや匙の向こうは海の理由
○麗かに壁一面の靴や園
○麗かに雨長靴やレモンいろ
○麗かや森にもたれて文庫本
○麗かや花柄好きな女の子
○麗かや装飾品は花のむかし

暖か

○暖や瞼の奥の小窓開く
○暖や五穀豊穣いのりけり
○暖や皿に盛られてオムライス

春の夜

◯颯爽とアポロの月や春の夜
◯蒼茫とアポロの月や春の夜

春の朝

○春暁やサラリーマンをゆらし行く
◯われどこへ通勤せまき春の朝
◯しづかさにサラリーマンよ春の朝
○この星にむすめを送り春の朝

春浅し

○やさしさの切り絵の飛んで春浅し
○ちぎり絵の雲や太くて春浅し
○日常に詩や持ち歩く春浅し

早春

○早春や息を潜めて目を見張る
○早春や痛みの機智を置き去りに

春の朝

○春の朝日あればこぼるる笑顔かな

春の夜

○春の夜や灯りに陰をこぼしけり
○春の夜や映る水面に誰ぞ来る
○春の夜やうたた寝したり君の声
○鉛筆を静かに削る春の夜
○鉛筆のそろえて残す夜半の春
○うたた寝の机の肘や春の夜
○指先や月のかかりて夜半の春
○シャープペン残りわづかや春の夜

春の夜

○春の夜や活けたる花をこぼしけり
○春の夜や夕べの窓に髪長し

遅日

○遅き日やにぎりて波の裏おもて
○行く人のひさしに遠き遅日かな

三月

○三月に裸足のわれや生まれたる

麗か

○麗かや小さな虫の通り道
○うららかにパフェのグラスや二つ立つ
○うらうらや女子大学に待ちけり
○うらうらやこだわりのあるユニフォーム
○大学や日うらうらにしてバイト行く
○うらうらに洗濯物や男子寮
○麗かに文字盤を見つ腕時計
○うらうらに並べられたり丼鉢
○うららかにもりをたぐるやお品書
○女子大の路地に待ちたり麗かに
○女子大とお出かけしたり麗かに
○店内のメニューや未知のうららかに
○島ひとつ持たれて流るうららかに
○乗せられた上生菓子やうららかに
○練り切りに家族の事やうららかに
○日帰りの浴槽ゆかしうららかに
○うららなる歴史を刻み新橋駅
○うららなるビーフカレーやいつもの味
○うららなる東京のみち半世紀
○うららかに気になる人や彼女持ち
○うららなる無名の画家の話声
○うららかや気取らぬ瓶に活けてをり
○うららかに色とりどりのお重かな

春愁

○春愁や背中合わせの椅子四脚
○春愁やレモンの裏に浮かびをる
○春愁や頬に冷たき男の手
○春怨や背中合わせに染まりけり
○春怨やいまさら聞けぬ好きな理由
○春愁や幼きの身のわらひ声
○春愁や一見したり人の人
○春愁やくたびれたまま帰りけり
○春愁や束ねた髪の結びごろ
○春愁にこしらえさびし眼鏡かな
○春愁や目薬倒す指の先
○コンタクト春の恨みやシャワー浴ぶ

春の燈

○春の灯のLEDや夜の雨

春眠

○春眠や風の子供に借らるる

春眠

○春眠や千年の夢まだ醒めぬ

春眠

○春眠や少しこのままひとり旅
○もののふの机の肘や春眠し
○唐文のさめてゆうべや春眠し
○春睡や煩わしさも店めぐり
○春睡や脳に思春期作用せぬ
○春睡や滴の明けてまだ覚めぬ
○春睡や寝相に恋のありどころ
○寝姿や白磁の夢よ春眠し
○白磁器の濡らす寝姿春眠し
○大原のさめてや奥の春の夢
○大原や五色の糸に春の夢
○大原や女房たちも春の夢
○大原や露の袂も春の夢
○大はらの水にしづくや春の夢
○一門や落ちてゆくなり春の夢
○庵室やしづかこぼれて春の夢
○庵室に花のこぼれて春の夢
○摘む花や濡れておもたき春の夢
○有様の露も山路や春の夢
○御馬の綱ひき絞り春の夢
○御馬や木曾に賜り春の夢
○御馬につづく味方や春の夢
○再会の道案内や春の夢

春の星

○春星のながれてゆくや水鏡

春の雨

○ビニールの透けて男女や春の雨
○綺麗事ほんのならべて春の雨

春の虹

○束の間を一歩またぎて春の虹

春の夕焼

○地上には春の夕焼毛越寺

春の雷

○春雷にうつ船の背や伊勢の海
○春雷に数珠もたしかに今宵かな

春の雨

○春雨や硝子の玉のやはらかし

春の雨

○平壌の傘落としけり春の雨
○代行にソウルまきこみ春の雨

春の雨

○すつぽんの語らぬものや春の雨

春一番

○春一番鬼のはじめや恋わずらい
○春一番首短めの背のまろみ

春塵

○春塵や都に帰る間柄
○春塵や生まれながらに暗き陰
○春塵や丸壺のただひとつのみ
○春塵に里の神社の余韻かな
○春塵や下の名前の書信あり

春の雨

○春雨やのぞまぬ人にのぞむ人
○春雨や名をのこすことなかりけり
○春雨に互いを偲ぶ茶会かな

春一番

○定番の女子高生や春一番
○待人のあらわれなくて春一番
○社会女子の尻に貼り付く春一番

春の月

○やましさの敲く門なり春の月



○つちふるや塔たかきなり肺の奥

春の風

○春風に糸のかかりしたゆみかな



○齢五十俗にはなれておぼろかな

春の雨

○しばらくは帰らぬ人を春の雨

春眠

○春眠や対等な恋さがしけり
○春眠や快楽の園あふれけり

朝寝

○回数を増やしてみがく朝寝哉
○何かしら構図のごとき朝寝かな
春燈

○春燈やなつかしき玉はじきけり

春の夢

○胸板や挟まれてをり春の夢

あとまえの金色は世の中にはいろいろあるので^^4:42 説明はしませんが、大きくとらえてくだされば★大石の月並みが狭く広くそして深く感じれると思います、

ワラピー

【期間限定、春】○金色をとどめてふるや春の雨

春雨

○才能や暇なれどまた春の雨

春眠

○楼門や安土もいまだ春眠り
○春眠やたわむれている雀かな

風光る

○消え失せて湖面の上や風光る



○いつも逢う肘の高さや春を待つ

○江戸前を包んで春の握りかな
○手仕事の離れて江戸や春握り

春の夜

○手仕事や離れ江戸前春の夜

春の風

○春風や播磨の空に揚羽紋
○春風や見下ろし上げる姫路城
○弁当のふたや電車に春の風

春日

○春の日や江戸前海苔も輝けり

春の夕焼

○未来図や春夕焼けの加速力

春雷

○春雷や電池モーター加速せり

春雪

◯春雪や駅にもたれて受験生
◯春雪の真ん中を行く受験生
○春雪や古びた宿を化粧する
○春雪や老舗の宿を化粧する
○春雪やみつめて枠に乱れたる
○俳人の青きころもや春の雪

春の日

○春の日や洋上をゆけアホウドリ
○春の日や浪なき上をアホウドリ
○洋上に春の翼ありアホウドリ
○春の日や世界の色をアホウドリ
○春の日や青き化粧のカツオドリ
○春の日に頭上も高くカツオドリ

春の空

○虫けらや指先やさし春の空

春風

○文字合いを味わい尽くす春の風
○鉛筆や削る合間の春の風
○春風や芯の黒さの削りかす
○春風や匂ひの固きペンケース
○春風や三角定規の隙間より
○春風や錆びぬ定規に泣いてゆく
○春風や三角定規に逢わぬ恋

春の日

◯仰ぐれば少年のよな春日かな

風光る

◯風光る島にショパンの調べかな

春雷

○春雷や手鏡髷の紅の妙
○春雷や手鏡紅のむこう側
○春雷や手鏡眉の二つまつ
○春雷に地鉄を愛でる女かな
○春雷や広場のまえの貴族たち
○春雷に広場かつての女王かな
○春雷や整然として王妃あり

春の風

○春風や萬葉の間の吹くここち
○春風や塔もはるかに見えにけり
○春風やいま西行と共にあり
○東京に出て春風や友とカフェ
○東京や春風に添い友とカフェ
○東京を紹介したり春の風

春雨

○春雨や浮世の筆を置きにけり
○春雨や宇宙を知った利休めは
○春雨に茶器を知りたる利休めは
○春雨に只立ちつくせ一ノ太刀
○春雨やけふ大原の花となれ
○春雨やわが名をあげよ一ノ太刀
○春雨や一夜の夢を一眠り
○春雨や古井の縁に長き夢
○春雨や宿の下にて重なれり
○春雨や烏帽子の枝を誰か世に

春の月

○春月を盗まんとする女かな
○君ふれず盗むがごとし春の月
○君や出て触れず盗まん春の月
○誰しれずこころや盗め春の月
○足音やたたづに盗め春の月
○幸若の夢まぼろしや春の月

朧月夜

○おぼろ夜や鼠の声も聞こえたり
○おぼろ夜やすがた盗まん足の影
○朧夜や雲の姿もなかりけり

春の闇

○新しくいのちのこぼれ春の闇
○触角のしづかに伸びて春の闇

春雨

◯春雨や雫のそろひ恋の色
◯春雨や積み重なりて恋の色



◯更級に霞める山の蕎麦湯かな
◯更級に霞過ぎ行く東京都

春の月

◯鍵盤のながるる蜜や春の月
◯春の月四弦五弦や蜜の指

春の風

○一室の手招きするや春の風

春の風

○なんとなく置いた小物や春の風
○春風にラグジュアリーなレースかな

春の雪

○春雪や遠く二人を降っていた
○しばらくや落ちてゆくなり春の雪
○牡丹雪やしきりに弾む胸の上
○春雪の消えてさびしくなりにけり

春光

○春光や濡れて乳房の真珠色
○春光やふれてひみつの三美神
○カンヴァスに浮かぶ光や春の色
春陰

○春陰や甘いにほひにしたいだけ
○春陰にエレキベースを弾く子かな
○春陰にレンズを向ける女かな

春雷

◯春雷に恋した頃の想いかな
○春雷や制服の胸こえてゆく
○春雷や制服の空雲の胸
○女子高生それぞれ立つや春の雷

桜まじ

○カツオドリ水中に問ふ桜まじ
○アホウドリ腕を長きに桜まじ
○終日に長き翼や桜まじ
○終日や影の長きに桜まじ

春塵

○春塵に僧一門の帰りけり
○春塵やわらんべの又帰りけり
○春塵や机に刻むアニメージュ
○春塵やフォーカスさるるその一枚
○春塵やややこしき人承知得る
○春塵やコギャル文化もなかりけり
○春塵や世界に銃のあふれをり
○春塵や渡日の僧を思ひけり
○春塵や手のひら前に励ますぬ
○春塵や遥かに奈良のほとけさま

春星

○春星や何気にあすはワンピース
○春星や昼をひるとて純喫茶
○春星にある日のそれを重ねたり
○春星に綴るや空の歌ばかり
○春星や盃こぼれ自惚れたり
○春星や女のごとく放たれぬ
○春星や幼き妻の焔なる

春の日

○春日やボウルのBを混ぜにけり
○春日や必要なもの忘れけり
○春の日やなにやら舌が肥えにけり
○春の日や上書きしたり軒づたひ
○春の日に上書きしたる子供かな
○春の日を上書きしたる札所かな
○春の日に上書きしたる衣かな
○春日のあればこぼるる笑顔かな


○つちふりて刀弓につむ帰るかな
○つちふりて刻まれてゆく時間かな
○つちふるや御目やさしく閉じへたり
○つちふるや送り迎えの保育園
○つちふりて花屋の君の憂いかな

春の雲

○幾千の時を掃きたる春の雲
○いつも逢ふ窓にあるまし春の雲
○進化するパンもあるまし春の雲
○静けきの窓や掃きたる春の雲
○文学や啼けとごとくに春の雲
○いくたびも音の軽さや春の雲
○五つ手や街をつなげて春の雲
○逆さまに眼鏡のメモや春の雲
○自意識を小高き丘に春の雲
○手のひらをうすやはらかに春の雲
○春雲や日々幸せとマドレーヌ
○春雲や胸は胴着を学びの場
○春雲や胴着に胸のふくらみぬ
○春雲や胴着も紐も低からず
○春雲に胸ふくらみぬ作法かな
○春雲や埠頭の空も低からず

春一番

○春一や家に帰りし恋の行く
○春一や蕾に恋の待たれたる

春光

○春光やとけて幼き気配あり
○春光やとけて十四の気配あり
○春光や放ちとけたる十四才



○朧夜にまんまるとして目覚めたる

春の星

○大熊や少年の日の春の星

佐保姫

○佐保姫やまるくて眉を流したり
○佐保姫やまるくて眉を染めかくる
○佐保姫やまるくて眉をおもはるる

春の闇

○春の闇心の空や出るまで

花曇

○手の中のぬくし卵や花曇

春雷

○春雷や鼓膜も我を覚えけり
○春雷に親しき人の帰りかな
○春雷やカップの穴の内に消ゆ

鳥曇

○頬杖の見えぬ星なり鳥曇
○頬杖の佐渡にかかりし鳥曇

春の虹

○頬紅のごとくに消ゆる春の虹
○見つめ合う春の虹なり如くなり
○初虹や市井に人も多くなり
○春の虹枯木に花を咲かせませう
○春の虹田舎にとけて呼び覚ます

春光

○春カーテン光や集め想いけり
○春カーテン光や集め想いけり

雪の果

○雪の果遠くに犬の散歩かな
○朝に待つ君の知らせや名残雪
○雪の別れふるさとの駅また踏まぬ
○雪の終放たれてゆく心かな
○雪の別れ恋した人や都会より
○雪の別れ恋した人やビルをゆく
○雪の別れ中学校歌見づに君
○雪の果学舎に立つ二人かな

風光る

○予知したるあの子の恋や風光る
○スカートの中や大きく風光る

朧夜

○朧夜や命の鐘ののみならず
○朧夜や命の音ののみならず

蜃気楼

○大陸の仏や乗せて蜃気楼
○あれが遥か倭の国か蜃気楼
○勾玉の横顔有りし蜃気楼

春雨

○春雨に髪とかさんとけふの雨
○春雨に髪とかさんとけふの顔

鰊曇

○この大地鰊曇の暮らしかな
○この大地見なれて鰊曇かな

春夕焼

○春茜あそび疲れて花の影
○春夕焼しつとり染まる花の影
○春の夕焼書店をあとに三両目
○春茜中吊りを背によい感

春の月

○中将の笏も過ぎたり春の月
○訳されて世界の夢や春の月
○うたかたや濤々として春の月
○うたかたや蕩蕩として春の月

春雨

○金色をとどめてふるや春の雨
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