大人の遊びを教えてやるよと連れてこられた何処かの怪しげな賭場で、連れてきた張本人が真っ白に燃え尽きてるんだが、私は一体どうすれば良いんだろうか。
「柄崎くん、これ、何」
「…バカラだよ」
「負けたの?」
「…勝ったように見えんのかー…」
見えないねぇ。苦笑いの周囲に、柄崎の八つ当たり気味な舌打ちが響く。有り金溶かしちまったと毒づく幼馴染みが一体いくら負けたのか想像もつかなかったが、元締めらしき男にお嬢さんも如何ですかと進められ変な声が出た。
「わ、私無理です!ルールわかんないですから!」
「簡単ですよ。勝つか負けるか、丁半博打はご存じですか?」
「丁半…時代劇の?」
「はい、それに引き分けが加わったものです」
時代劇で良く見る、サイコロを降る格好良いお姉さんの映像が頭に浮かぶ。ハイアンドローのようなものだろうか。プラス引き分けだとしても、三割ぐらいなら当てられるだろうか。
やってみます。怖いもの見たさで席に着くと、柄崎が引き分けには賭けるなよとアドバイスをくれた。
「…柄崎くんこれどうしよう」
「おま…運良すぎだろ…軽く引くわ」
結果はと言えば、元手が50倍になった、とだけ言っておく。楽しかったか、と柄崎が笑う。ちょっとだけね、と微笑んだ。
「あ、そうだ。みんなで焼き肉食べに行かない?」
「あ?いいのかよ、お前が勝った金だろ」
「今日ここに連れてきてくれたのは柄崎くんだし、どうせだからみんなとご飯に行きたいな」
「…まぁ良いけどよ。社長に電話するわ」
「じゃあ私戌亥くんに連絡するね」
【臨時収入ラプソディー】
「柄崎お前なんでソイツと一緒にいンの」
「え?!いや、偶然会いまして…」
「へぇ、偶然ねぇ…」
(なんかあっち不穏な空気が流れてる…)