「第3ウェーブ前だが、ゲームフィールドに出るのは自由なんだろ?」
鼎は運営の2人に聞いてきた。ナツメは即答。
「自由ですが」
「鼎、どこに行く気だよ!」
御堂は休憩所を出ようとする鼎を追おうとする。
「あの『無の存在』に直接会いに行く」
「鼎さん、俺も一緒に行っていい?」
「晴斗か…いいぞ」
2人は休憩所を出た。ゲーム前のゲームフィールドは初めて出る。フィールドは既に第3ウェーブに向けて拡大されていた。
「フィールド、一回り大きくなってないか?それ以上か?」
「壁の位置、かなり変わってるね。街全体フィールドになってるよ…」
2人はスマホでフィールドを見る。
ゲーム前なせいか、フィールド内は静か。怪人がいないゲームフィールドはこんな感じなんだ。
「今は街全体がゲームフィールドだから住人がいないんだね」
「ゴーストタウンみたいだな…」
「鼎さん本気で探すの?あの無の存在さん」
「フィールド内をうろついてるのはわかっているんだ。マップにも無の存在は印がついてるな。この緑の点が無の存在3体だろう。
…それにナツメが見せてくれた映像のおかげで、だいたいの場所はわかった」
運営が提供する昭和レトロな休憩所。御堂は鼎が気になっていた。
「鼎のやつ、心当たりでもあんのか?無の存在、どれも同じに見えたけどよ」
「たいちょー、無の存在3体よく見ると同じじゃないっすよ。ほら」
いちかはナツメが見せた映像を示した。
「ほら、この個体…仮面慣れしてなくてふらふらしてるでしょ?ナツメさんが言ってた比較的新しい無の存在がこれみたいっすね」
確かにめちゃめちゃふらふらしてる。ゲーム前だとこんな感じなのか?
御堂は他2体の無の存在を見た。
「よく見たら背も違うんだな…。鼎が探してる個体はこいつみたいだけど」
一方ゲームフィールド内。
鼎はそれらしき個体を発見。
「いたっ!」
「鼎さん早いよ!」
鼎は小走りでその無の存在と接触。
ゲーム前なせいか、無の存在はどこか戸惑いを見せたように見えた。
「こ…怖がらないで。俺たち何もしないから…ね?」
晴斗は恐る恐る声を掛ける。鼎も慎重だ。
「私はお前の正体が気になって来たんだ。記憶がないのか?」
件の無の存在はうなずく。
「記憶がないのか…?そうか」
鼎の声はしゅんとしている。鼎も仮面姿だがどこか寂しそう。
無の存在はおろおろしているが、鼎のことが気になっているようにも見える。
「鼎さん、なんかこの人…気になっているみたいだよ」
「何か言いたげだな…」
鼎は話し掛ける。
「お前達『無の存在』は喋れないのか?」
件の無の存在、うなずく。
「自分が何者なのかわからないのか…」
さらにうなずく。無の存在はとにかく素直。
晴斗は思い切って鼎に切り出した。
「鼎さん、仮面外して素顔見せてみたら…どうかな…ダメ?」
「フィールド内で素顔になれと?…抵抗あるよ、こっちだって…」
晴斗は鼎と件の無の存在を連れて塀の中へ。
「ここならゲームが始まっても大丈夫なはず。鼎さん、その無の存在さんに顔…見せてあげて。何かしら思い出すかも」
鼎は意を決して仮面を外すことにした。晴斗がいなければこんな手段はとれない。
彼女は慎重に仮面を外し、素顔になる。顔の大火傷の跡はひどいが…。
件の無の存在は鼎に一瞬反応したように見えた。
晴斗は小声で鼎に伝える。
「鼎さん、無の存在さん反応してたよ」
鼎は仮面をそそくさと着けている。
「こいつの顔がわかればいいのだが…」
無の存在はやっぱり何か言いたげ。
「私の素顔に反応していたな…。お前は私に心当たりがあるのか?」
件の無の存在はうなずいた。心当たりあるんだ…。
晴斗はスマホを見る。第3ウェーブのルールに変更があったらしい。
「鼎さん、第3ウェーブのルール少し変わってる。ラスボスがなくなったよ。…どういうこと?」
「ゲームマスターは何を考えてる?急にルール変更だなんて」
「他にも微妙に変更されてるよ。ボーナスアイテム入手しやすくなってるし、種類が増えてるよ」
無の存在は首をかしげてる。
「ルール変更したこと、わかっているみたいだな」
「鼎さん、この無の存在…ルール変更わかっているの?」
「あの反応は理解していた」
そんな中、第3ウェーブがいきなり始まる。
「怪人が出てきてる…マズイよ!」
「大丈夫だ。こいつは味方にしたからな」
鼎さんいつの間に!?
第3ウェーブの制限時間は45分。怪人の数も倍増。難易度もかなり高い。
「鼎さんはそいつを守って!俺がカバーするから!!」
晴斗は銃を構えている。
第3ウェーブはフィールドが広いせいか、必然的に敵の数も多い。
微妙にルールが変更された最終・第3ウェーブ。これをクリアしなければ元の世界には戻れない。
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