話題:恋愛
意外と早く家に連れ込まれた神田です
彼女は新しい彼ができたと親に報告したようだ
それだと「一度連れてらっしゃい」となるわな
だから敵陣に突撃せざるを得なかった
手土産は出回り始めた種無し柿、処理に困っていた酢漬けラッキョウ
何ちゅう組合せだと自分でも思ったが、急だったから他に用意できなくてね
〜中略〜
玄関の扉の前にママが立っていた
まずは玄関に入って顔を見てから、「本日はお招きありがとうございます。お嬢さんと仲良くさせて頂いています神田です」と挨拶するつもりでいたんだよ
ところが「わっ、背高ーい。巨人だね!」とママの第一声でモゴモゴなっちまった
日本に住んでる方が長くなってんのに何故か「ハロ〜、ナイストゥ…」とか口から出ちゃった
〜中略〜
ごはんを御馳走になった
カレーライスだったが、肉が挽き肉だった
何故だろう、客と思われてないのか…と疑問が残ったが、和気あいあいの雰囲気の中で、そんなことはどうでもよくなった
〜中略〜
問題はここからなんだよな
食後、茶髪がピアノを弾くと言うので、ピアノがある部屋に通された
グランドピアノがそこにあった
床に楽譜が散らばっていたが見て見ぬフリをした
彼女の弟が丸椅子を並べてくれた
そこに彼と並んで座った
ピアノの前の椅子に茶髪は座り、ふう〜っと一発息を吐いた後、鍵盤に手をかざした
驚いた
俺とは住む世界が違うと思った
こんな綺麗な音を奏でるピアニストの胸を揉んだ自分を恥じた
俺と付き合うことで、この才能が枯渇してしまうんじゃないかと不安になった
ショパンの別れの曲
涙が出そうになった
その日からメールをちゃんと返せなくなった
電話が掛かってきても出られない
きっと不安な気持ちでいるだろうとは思ったが、俺と一緒にいたら彼女はダメになるという思いが強くて
天然であるが故の純粋な心の音が俺の心臓を突き刺したんだよ
悪魔払いに遭遇した悪魔になったような気持ち
もう逃げるしかない
だが、勿体無いとも思う
どうしたらいいかわからなくなった神田でした