2019.10.24 12:38 Thu
[文庫感想]
満願
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが…。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。
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殉死した部下が犯人を発砲した理由を知ることとなる「夜警」。
母のような美しさを受け継いだ姉妹が、父に恋し母を裏切る「石榴」。
元妻との復縁を望む男が、自殺する客を探し出すことになる「死人宿」。
日本に明かりを灯し続けるため、男が犯罪に手をかける「万灯」。
都市伝説のネタを得るために訪れた立ち寄り茶屋で、老婆から語られたある峠での事故の話「関守」。
元下宿先の妻が人を殺めた真意を知ることになる「満願」。
ストーリーの生々しさというか、息遣いが伝わるような短編集。
読めば読むほどのめり込む感じ。
関守は予想外な展開すぎて怖かった。
2019.10.12 21:41 Sat
[文庫感想]
砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない
その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。
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タイトルの可愛さを裏切るかのようなストーリーに、読んだ後のずんとのしかかる重さがあった。
嘘という砂糖でまぶした弾丸を放つ藻屑だったが、次第に彼女の境遇や言葉の裏側に潜んでいた真実をなぎさは知ることになる。
人は親を選んで生まれることはできない。
実弾を持たない子供たちが、砂糖菓子で包まれた弾丸で大人…社会に対抗していく姿が、今を生きる少女たちを映しているかのようで深く考えさせられた。
2019.10.12 13:06 Sat
[文庫感想]
きみのために青く光る
青藍病。それは心の不安に根ざして発症するとされる異能力だ。力が発動すると身体が青く光る共通点以外、能力はバラバラ。たとえば動物から攻撃される能力や、念じるだけで生き物を殺せる能力、はたまた人の死期を悟る能力など―。思わぬ力を手に入れた男女が選ぶ運命とは。もしも不思議な力を手に入れたなら、あなたは何のために使いますか?愛おしく切ない青春ファンタジック・ミステリ!
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犬に襲われる人だったり。
人を殺す能力のある少年少女だったり。
年収がわかる人が犯罪に巻き込まれそうになったり。
人の死期を予測できる少年だったり。
読んでくうちにストーリーに引き込まれていった。
2019.1.12 23:46 Sat
[文庫感想]
コンビニ人間
「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。
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アスペのような主人公と、どうしようもないクズ男・白羽との奇妙な同居生活。
白羽の言いつけどおり正社員への転職を果たすべくコンビニを辞めた恵子。
しかし、やはり自分にはコンビニしかないと決意し、再びコンビニ店員に戻っていくのでした。
最後のシーンは痛快というか、コンビニ店員として一生働いていくぐらいの清々しさがあってかっこよかった。
2019.1.12 23:44 Sat
[文庫感想]
秋期限定栗きんとん事件 下
ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど…ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ―。
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エスカレートしていく連続放火に、新聞部の活動も次第にエスカレートしていき…。
この時点で既に関連性がある、というのはネタバレなので秘密である←
互いに別々の道を歩んでいた小鳩君と小山内さんでしたが、次第に本性が出てきてしまうというか…結局は元の古巣に戻っていくのでした。
でもやっぱり2人の関係が元に戻って良かったなと思う。
瓜野くんはこれに懲りて少し大人になればいい。