「こんばんは〜」
場違いな場所に間の抜けた声が響く...。ここはゴッサムの地下下水道。普通の人間ならば先ず踏みいらない所だ。
理由は2つ。
1つ 当然ながら一般人が立ち入る事が出来ない。市の管理下に有るからだ。それに臭いが強烈過ぎて職員でもマスクが無ければ10分と立っていられない。
2つ ここがゴッサムだから。人の目の届かない場所は何が居るか分からない。好事家が飽きた大型爬虫類ならまだしも、ここはゴッサムなのだ。居るに決まっている...ヴィランが!
「すいませーん、ペンギンさーん」
再び...下水道、からは少し進んだ所。開けた場所だ。
ペタペタ、ペタペタ、ペタペタ...。そこにはいるはずの無い生き物がいた。ペンギンだ..ヨチヨチ、ペタペタ歩いている。
「ホントにペンギンがいるんだなぁ...」
間抜けな声の主は妙な状況にも関わらずのんびりとした感想を口にする。
「ペンギンさーん、オズワルドさーん」
「喧しい!何処のバカだ!?」
怒鳴り声を上げながら降りてきた男は黒のシルクハットに燕尾服を着た小男。手には傘を持ち特徴的な長い鼻...まるでペンギンの嘴の様に尖った鼻を持った男だ。
「ああ、やっと会えましたね〜」
「何だお前は!ワシのアジトに侵入したからには生きて帰れるとは...」
「オズワルドさん、俺を雇いません?」
藪から棒に切り出した男...佐野はそう言って笑顔を浮かべた
「はぁ!?」
「だから、俺を雇いません?」
何を言っているのだ、この若造は?ペングィンは思考が一瞬固まる。
「貴様...何を言っている?雇う?素性も分からん奴を誰が雇うと言うのだ!?」
尤もだ、と言わんばかりに頷いた佐野はポケットからケースの様な物を取り出す。
「これ知ってます?」
「あぁん?...待て!貴様それは!」
ケースにはレイヨウがデザイン化された模様が描かれていた。
「ご存知でしたかー。こっちに来たときに何にも無くてこれだけが有ったんで...」
「お前の与太話などどうでもいい!貴様、カメンライダーか!!」
「いい仕事しますよー?」
ペングィンは佐野を注視しながら思考する
(カメンライダー...最近ゴッサムで頻繁に現れている邪魔者か...何故そんな奴がワシの元に来た?しかも雇え?このバカが本当にカメンライダーなら使い様は有るが...)
「オズワルドさん、どうです?俺を雇って貰えません?」
「何故ワシの元に来た?」
「他の人じゃあ雇って貰えそうに無いんですよね〜。オズワルドさんなら話が通じそうって情報を耳にして」
バカだ。確信した。そして使える!
「良いだろう、雇ってやる。」
「良かった〜…因みに月おいくら貰えます?福利厚生は?有給とかは?」
バカだ...間違いない、バカだ...
「貴様、何処に、誰に雇われたのか分かっているのか?裏稼業でそんな物が有るとでも!?」
「じゃあ表でも雇って下さいよ?ドライバーでも何でもやりますよ?」
こいつは...
「はぁ...仕方ない、調理場にでも入れてやる...皿洗いでもしてろ!」
「調理もできますよ〜」
こうして佐野はペングィンの元で働く様になる。性格はどうあれ、佐野...インペラーが戦力になると分かるのはもう少し後の話だ...